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第9章―ダモクレスの岬―
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しおりを挟む「おい、待てユング! お前どこに行く気だ!? ここで待機してろってさっき命令が出ただろ!?」
長い髭の男が彼を引き止めるとユングは命令を無視した。
「離して下さい! ここで黙って見てろって言うんですか!? リーゼルバーグ副隊長が危ないんですよ!? 僕はとてもじゃ、見てみぬフリ何てできない! 僕は今から隊長を助けに行きます!」
ユングはそう言って言い返すと、直ぐに駆けつけに行こうとした。
「待て! お前みたいなひよっこが手助けに入って一体何ができる!? 冷静になって考えろ!」
長い髭の男が説得すると、ユングはムキになって言い返した。
「ああ、確かに僕はしたっぱの青二才の子供だけど、ただ見て何もしない貴方達よりもマシだ! だって僕達の隊長だぞ!? 貴方は本気でそんなことを思っているんですか!? 悪いけど僕にはそんなことは出来ない! 行っても彼の役に立たないかもしれないけど、僕は見捨てられない! リーゼルバーグ隊長は僕にとって恩師なんだ! 今までずっと生きる意味も希望も何もなかったこの僕を、リーゼルバーグ隊長は救ってくれた! そして、僕は彼に救われた! 今の僕がいるのは、リーゼルバーグ隊長のおかげだ! だから僕は役に立たなくても必ず彼の役にたってみせる! 僕を止めても無駄だ!」
ユングはそこで自分の思いを吐き出すと、そのまま命令を逆らい、唖然としている彼らを無視して、まだ魔法が解けていない風の中へと自分の竜と共に果敢に飛び込んで行った。
「よし、いまなら行けるぞ! ハルバート隊長や、リーゼルバーグ隊長にも出来たんだ! 僕にだって…――!」
彼は自分のワイバーンと共に立ち塞がる風の壁の中を果敢にも飛び込んで行くと、風はたちまち嵐のように渦を巻いて、中で彼に襲いかかってきた。ユングは竜の背中に乗りながら全速力で風の中を突き抜いた。そして、彼は背後から襲いかかってくる竜巻の渦を間一髪の所でかわした。かわすと同時に竜巻の渦は風の壁を突き破った。僅かに突破口が開かれると、彼は素早くその中を潜り抜けた。そして、彼は見事に向こう側に辿り着いたのだった。
「やっ、やった! 生きてる……! 後ろから竜巻の渦が襲いかかって来た時は焦ったけど、こうして生き延びられたのはコイツのおかげかもしれない!」
ユングはそこで喜びの声をあげつつも、冷静に状況を把握した。
「そうだ……! こうしちゃいられないや、はやくリーゼルバーグ隊長を助けに行かないと――!」
不意に突然そのことを思い出すと、急いで彼らの下へと合流しに行った。
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