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第9章―ダモクレスの岬―

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 見えない強力な風の壁を撃ち破ると、彼らは中へと侵入した。風は今だに嵐のように周囲に吹き荒れていた。待機していた部下達は、2人が竜巻の中に呑み込まれた所を最後に目撃して見失った。そして、風は嵐のように大きな渦をまいていた。それはまるで周りを結界のように囲んでるようにも見えた。部下達は一歩も近づくことも出来ずに、そこで見守っていることしか出来なかった。ユングは2人の安否が気になった。

「ハルバート隊長とリーゼルバーグ隊長は一体どうなったんだ!? まさかあの嵐の中で……!?」

 ユングは突然焦ると、顔を色を一気にかえて沈黙した。部下達が心配している頃、ちょうど彼らは嵐の中を果敢に突破して見えない風の壁を撃ち破っていた。彼らは風が囲んでいる結界の中に入ると、直ぐに体勢を立て直した。

『よっしゃあーっ! 突破成功だぁーっ!』

 ハルバートはそこで思わず、大きな声を出して右手でガッツポーズを決めた。そして、ケイバーに話しかけると後ろを振り向いた。すると彼の前髪がとんでもない事になっているのに気がついた。

「お前、前髪が凄いことになってるぞ? いつからそんな髪型になったんだ?」

「うるせぇ、誰のせいだ! 誰の!? よくも俺様の髪型をメチャクチャにしてくれたな! あんな無謀なことするなんてどうかしてるぜ! マジ最悪だ!」

 彼は怒りを露にするとハルバートを頭の中で100回殺した。リーゼルバーグは直ぐに声をかけた。

「おい、2人とも何をやっている! 話してる暇はないぞ! 早く囚人を捕まに行くぞ!」

 彼の呼び掛けにハルバートは直ぐに頷いた。

「ああ、そうだ! 奴に鬼ごっこはここまでだって事をわからせてやるさ!」

 ハルバートは自分の竜に合図を送ると、囚人が逃げている方角に向けて全速力で飛ぶように指示を出した。リーゼルバーグも自分の竜に合図を送ると、二匹のは頷くと直ぐに翼を大きく広げて速度を上げて飛び始めた。冷たい雪が降る中、脱走した囚人は行き絶え絶えに必死で逃げていた。無我夢中で走りながら咄嗟に後ろを振り向いて確認すると、彼らが後ろから接近してくるのが見えた。囚人は相当焦っているのか、雪の上で足をとられて躓いて倒れた。その瞬間ハルバートはチャンスとばかりに急接近を試みた。

「よし、今がチャンスだ! ぜってぇ、捕まえてやる!」

 ハルバートはその場で意気込んだ。ケイバーは後ろで相づちをすると「ああ」と返事をした。そして、背中に背負っているボウガンを片手で取り出した。

「逃げた野郎には俺が直々で落とし前をつけてやる! 奴のせいで今日は散々な一日だったからな、もうこうなったら只じゃおかねぇぜ!」

 ケイバーは両手でボウガンを手に持つと、構えて狙いを定めようとした。

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