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第8章―吹雪の中の追跡―

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「損得ってコトワザがあるだろ。あまり深入りしない方がいいぜ?」

 ケイバーがその事を話すと、ハルバートは笑って言い返した。

「なんだよ、お前らしくねえな。なんでも知りたがり屋の癖に、これには興味がないってか?」

「うるせーよハルバート。てめえにはわからねえけど俺にはわかる。何か…――」

「ケッ、また黙りか? まあ、いいさ。損得だろうが一度首を突っ込んだ以上は俺には知る権利がある! オーチスが何で囚人を逃がしたのか、あそこに行けば全てがわかる! 何故ダモクレスの岬にワザワザ場所を指定したんだ……!? あそこには一体何が……!」

 ハルバートは独り言のように呟くと前で考え込んだ。すると、ケイバーが不意に冗談を言い始めた。

「――ヒョッとしたら、逃がした囚人と駆け落ちしようとしたんじゃないか?」

「あぁん? 今なんつった?」

「いや、駆け落ちだよ駆け落ち」

「はぁ?」

「オーチスは長年ここに勤めていたから、間がさしたんじゃねーか? あいつは故郷に家族を残して出稼ぎに来てるだろ? 自分の奥さんとも長い間会ってねーから、その間に逃がした囚人と恋に落ちたりして…――」

「おいおいマジかよ? お前が言うとマジに聞こえるからやめろ。いつからボケるようなキャラになったんだ?」

 ハルバートは前で呆れるとため息をついた。

「囚人に渡した手紙はきっと恋文だったりして。あいつが囚人に脱獄の話を持ちかけたのも、本当は2人で駆け落ちする為の話だったら笑えるよな?」

 ケイバーはそう言うと後ろで可笑しそうに笑った。

「つまり……奥さんと子供をそっちのけに、男に走ったってワケか?」

「ああ、きっとそうだ!」

「じゃあ何か? あいつらは出来てて、2人でダモクレスの岬まで駆け落ちする約束だったってことか?」

「ああ、愛がゆえの2人の過ちだ。人の恋路は邪魔するもんじゃねーな」

 ケイバーはそう話すと、両腕を組んで染々と語った。

「あははははっ! そりゃー、見事な傑作な話だ! でも、あまりふざけてるとお前をこの空の上から振り落とすぞ?」

 ハルバートは後ろを振り返るとギロッと睨み付けた。

「じょ、冗談だよ……! そんな目で見てくるなよ……!?」

 ケイバーは可笑しそうに笑って言い返すと、彼は白けた顔で舌打ちした。

「なあ、ところでハルバート。お前に1つ聞きたい事があるんだが聞いてもいいか?」

「どんなことだ?」

「お前が看守嫌いなのは知っている。でも、なんでそんなに毛嫌いするんだ?」

「チッ、うるせーよ。お前には関係ないだろ……!」

 ハルバートはその質問に不機嫌な顔で答えた。

「ああ、確かに俺には関係ないことだ。でも興味がある」

「興味だと?」

「ああ、そうだ」

 ケイバーは怪しく笑いながら言い返した。

「俺の趣味は情報収集なんでね、何でも知りたくなるのが俺の悪い癖だ。まあ、そう言うことだから教えろよ?」

 彼の返答にハルバートは、嫌味ったらしく言い返した。

「――本当にお前は趣味が悪いぜ。そんなだから、人に嫌われるんだ」

「素敵な誉め言葉ありがとう。ありがたく受け取ってやるよ?」

「チッ、誰も誉めてねーよ! 単に飽きれてるんだ!」

 彼は怒鳴ると深くため息をついたのだった。

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