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第7章―闇に蠢く者―
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しおりを挟むカマエルは暫く現実を受け入れることが出来なかった。そして、重たい口を開くと彼は尋ねた。
「――もうよい、お前がその目で見たことを全て話せ。包み隠さずに全てだ!」
「カミーユ様。魔族が天界に押し寄せたあの日、ミカエル様と他の天使と私は、モルグドアの門へと向かいました。そして、開くはずもない扉が僅かにですが開いていたのです。私達は扉の前で目を疑いました。ミカエル様が遥か何千年前に封印なされた扉が開いていたのです。天魔大戦でミカエル様は激しい激戦の中、サタンと戦って幾多の死闘を天と地で繰り広げました。そして、ミカエル様は神からさずかりし剣で、宿敵サタンの心臓をその剣で貫き。悪魔の王を遥か闇の中へと永遠に葬り去りました。その時に、冥界のジャハンナに通じる唯一の出入り口であるモルグドアの門をミカエル様は、神の大いなる力により封印なされたのです。その開くはずもない扉があの日、僅かに開いていたことに我々は驚愕せざるを得なかったのです……! ミカエル様は、邪悪な悪魔達が扉の外から出ないようにと再び封印を施そうと扉に近づいたのです。そして、その時にミカエル様はサタンの罠にかけられたのです…――!」
真に迫る話に、カマエルは次第に牢屋の中で恐れを感じた。それは、彼が頭の中で想像した悪い予感だった。余りの恐ろしさに少なからず絶望を感じ始めたのだった。彼はそんな父を気遣いながら話を続けた。
「それは一瞬の出来事でした。ミカエル様が扉の前に手をかけたと同時に扉の向こう側から1つの剣が放たれ、そのまま剣はミカエル様の心臓を矢の如く瞬く間に貫いたのです! それはまさしく、邪悪なサタンを闇に葬り去った剣クラウ・ソラスでした! 私が幼き頃、母と共に見た絵本に描いてあった剣は、まさしくあの剣でございます…――!」
「ばっ、馬鹿な……! 光の剣はあの時、サタンの体と共に闇の中に永久に葬り去ったはずだ! 光の剣で破れた者は、例え悪魔の王でさえも、抜く事は敵わぬはずだ……! あのような悪しき者が聖なる剣に触れる事は出来ぬはずなのに、何故それが扉から放たれたのだ……!?」
カマエルは驚愕しながら全身を酷く震わせた。そんな父の激しい動揺は彼にも伝わった。
「光の剣の役目はサタンを倒すこと、そしてその悪魔の王を永久に封印することが役目のはずだ……! 体を封印されたのにも関わらず、サタンはまだ足掻こうとするとは何て恐ろしい奴だ……! 死してその体を封印されてもなお、天界になんの恨みがあると言うのだサタン――!」
カマエルは激しい怒りを込み上げると、遥か古の天使の言葉でサタンを罵ったのだった。怒りで荒ぶる父の様子を伺いながらも、彼は再び話を始めた。
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