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第6章―竜騎兵―

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「答えは簡単だ。知らなかったことにしてやる。俺達は囚人が逃げた話を聞かなかったし、知らなかったで、どうだ?」

 彼がそう言うと、隣にいたリーゼルバーグが口を挟んだ。

「おい、ハルバート……!」

「うるせえ、お前は引っ込んでろ!」

 ハルバートはそう言って言い聞かせると直ぐに黙らせた。

「――正直言って俺達にとってだ。囚人がここから脱獄しようが、そんなことは関係ねえ。マヌケな看守が囚人を逃がしたってことだけで、俺達には何の問題はない。まあ、あるなら看守のほうに問題があるのは確かだ。もちろん囚人が1人脱獄したからこのことがギレイタスにバレれば後で大事になるのは間違いない。あいつは昔から短気な性格だからな。一度キレたら、手におえない奴だ。看守達の首が片っ端から飛ぶだろう。あいつは昔からそんな奴だ。でも一番かわいそうなのは坊っちゃんだ。坊っちゃんはここの代理責任者だしな、きっとそれなりの責任をとらせられるのは確実だろう。だから俺達が坊っちゃんを助けてやるって話だ。いい考えだろ? つまりだ。俺がいいたいのは奴には報告はせずに動いてやるってことだ。だから俺達は囚人が逃げた話に関しては、見なかったし聞かなかったし知らなかったことにしてやる。坊っちゃんもその方がいいだろ? 怖い親父にどんな酷いめにあうかは、坊っちゃん自身がよくわかってることだしな」

 ハルバートはそう話すと、1人で何かを思い詰めてる様子だった。

「さてと、ここからはビジネスといこうか? 行ってやる代わりに俺達の見返りは何だ? まさか命令だけで動くとは思ってねーよな? 俺達はそんなに安くはないぜ。ここからはビジネスなんだ。それくらいわかるよな?」

 ハルバートはジャントゥーユにそういうと話を切り出した。

「ギレイタスにはこのことは黙っててやるし、坊ちゃんの命令には逆らうつもりもない。でも、タダで行くのは気が引ける。どうせなら見返りが欲しいくらいだ。それだったら喜んで俺達は行くぜ。このクソみたいな天候の中を竜に乗ってダモクレスの岬まで行ってやるぜ。でも、見返りがなきゃ面白くねえだろ。俺の言いたいことがわかるよな。坊ちゃんは褒美を出すと言ったか?」

 そう言って率直に尋ねると、ジャントューユは直ぐに頷いて答えた。

「囚人を捕まえた者のには……褒美として……金貨200枚が与えられる……」

 彼がそう答えると、ハルバートは笑って言い返した。

「ふざけんな、金貨200枚だけじゃ足りねぇ! そんなはした金で俺達が動くと思ったか!? 下っ端の奴らならそれでウハウハだろうけどな、俺はそんな金じゃ動かないぜ! せめて10000は出して貰わないとやる気がおきねぇ! 坊ちゃんを助けてやりたいのは山々だが、この吹雪の中を飛ぶとなるとこっちも命がけになるんだ! 時間ならいくらでも待つからよ、今すぐ坊ちゃんの所に行って話をつけて来い!」

 彼がそう話すとジャントゥーユは、その必要はないと答えた。

「クロビスにはあとでそう伝えとく……今は早くダモクレスの岬に行け……!」
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