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第6章―竜騎兵―
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「あいつはチキン野郎だからそんな度胸はねえ。あったとしても墓穴を掘るだけだ。まあ、本当にあいつがやったならそれはそれで面白い話だけどよ。退屈しのぎにはなるけどな。でも、そんな事してなんの得があるんだよ? 情に流されるような奴には見えねえーし、なんか引っ掛かるんだよなぁ……」
彼がフと呟くと、リーゼルバーグは黙って頷いた。
「確かにあいつは長年看守をしていたが、囚人に対して情がある奴とは思えん。ましてや囚人を牢屋から逃がすなどとは気が触れてるとしか…――」
2人はそこで考え込むと、小さな疑問を感じていた。ジャントゥーユはそんな彼らに再び命令した。
「クロビスがお前達に出動命令を下された……! 役立たずのお前達には、良い機会だろ……! 早くダモクレスの岬に向かえ……!」
彼がそう告げると、ハルバートは椅子から立ち上がって一言怒鳴った。
「うるせぇ、んな事はテメェに言われなくても一々わかってるんだよ! 俺達は犬じゃねぇんだぞ! はいそうですかって、簡単に行けるか! おい、リーゼルバーグ! 確かダモクレスの岬はここから少し離れてる所だったよな!?」
ハルバートが突然質問すると、彼は側で答えた。
「ああ、そうだ。でも、人の足であそこに行くのには無理があるぞ。あそこには野生の狼の群れがある。そして、吹雪きがもっとも荒れている場所だ。我々が、やすやすと近づけば命取りになるだろう。それに今日みたいな天気ならば視界が悪いのは当然だ。逃げた囚人もあそこまで無事に辿り着けるとは考えにくい」
リーゼルバーグは物事を冷静に見極めるとそう言って助言した。その話にハルバートも冷静に頷いた。
「アンタの言う通りだぜ。チッ、よりによってあそこに逃げるとはな。とんでもなく達が悪い囚人だ。足であそこまで行くにはかなりの時間がかかる。やっぱり探すとなると空からになるな。この時間じゃ、外の視界もかなり悪い。そうだ。目がいい奴を5人ほど連れて行くか?」
ハルバートがそう言って彼に話すと、近くの棚の上にあった古い地図を持ち出した。そして、そのままテーブルの上に地図を広げたのだった。
「そうだなハルバートよ、ワイバーンは目は良いほうだ。肝心なのは連れて行く人間だ。エドガーとカイルとユングとロジャーズとスティングを連れて行こう。彼らは竜騎兵の中では一際目が良い方だ。場合によれば彼らは使えるぞ」
そう言ってリーゼルバーグがスティングの名を口にすると彼は一瞬、ピクっと反応した。そして、一言いい返した。
「スティングならもういない…――! 生憎だが、奴は死んじまったから連れて行くのは4人だけにするぞ!」
何も知らない彼にハルバートはそう言うと、テーブルに広げた地図にナイフを突き立てた。
「おい、スティングはどうした?」
彼が再び尋ねるとハルバートは黙ってナイフを手に持つとそれで何処かを指した。彼はテーブルの前で後ろ向きで何処かを指し示していた。リーゼルバーグは不意に指された方向を見た。すると部屋の隅に白い布が被されていた遺体を発見した。彼はおもむろにその方を歩き出すと、布が被された遺体を黙って捲った。
彼がフと呟くと、リーゼルバーグは黙って頷いた。
「確かにあいつは長年看守をしていたが、囚人に対して情がある奴とは思えん。ましてや囚人を牢屋から逃がすなどとは気が触れてるとしか…――」
2人はそこで考え込むと、小さな疑問を感じていた。ジャントゥーユはそんな彼らに再び命令した。
「クロビスがお前達に出動命令を下された……! 役立たずのお前達には、良い機会だろ……! 早くダモクレスの岬に向かえ……!」
彼がそう告げると、ハルバートは椅子から立ち上がって一言怒鳴った。
「うるせぇ、んな事はテメェに言われなくても一々わかってるんだよ! 俺達は犬じゃねぇんだぞ! はいそうですかって、簡単に行けるか! おい、リーゼルバーグ! 確かダモクレスの岬はここから少し離れてる所だったよな!?」
ハルバートが突然質問すると、彼は側で答えた。
「ああ、そうだ。でも、人の足であそこに行くのには無理があるぞ。あそこには野生の狼の群れがある。そして、吹雪きがもっとも荒れている場所だ。我々が、やすやすと近づけば命取りになるだろう。それに今日みたいな天気ならば視界が悪いのは当然だ。逃げた囚人もあそこまで無事に辿り着けるとは考えにくい」
リーゼルバーグは物事を冷静に見極めるとそう言って助言した。その話にハルバートも冷静に頷いた。
「アンタの言う通りだぜ。チッ、よりによってあそこに逃げるとはな。とんでもなく達が悪い囚人だ。足であそこまで行くにはかなりの時間がかかる。やっぱり探すとなると空からになるな。この時間じゃ、外の視界もかなり悪い。そうだ。目がいい奴を5人ほど連れて行くか?」
ハルバートがそう言って彼に話すと、近くの棚の上にあった古い地図を持ち出した。そして、そのままテーブルの上に地図を広げたのだった。
「そうだなハルバートよ、ワイバーンは目は良いほうだ。肝心なのは連れて行く人間だ。エドガーとカイルとユングとロジャーズとスティングを連れて行こう。彼らは竜騎兵の中では一際目が良い方だ。場合によれば彼らは使えるぞ」
そう言ってリーゼルバーグがスティングの名を口にすると彼は一瞬、ピクっと反応した。そして、一言いい返した。
「スティングならもういない…――! 生憎だが、奴は死んじまったから連れて行くのは4人だけにするぞ!」
何も知らない彼にハルバートはそう言うと、テーブルに広げた地図にナイフを突き立てた。
「おい、スティングはどうした?」
彼が再び尋ねるとハルバートは黙ってナイフを手に持つとそれで何処かを指した。彼はテーブルの前で後ろ向きで何処かを指し示していた。リーゼルバーグは不意に指された方向を見た。すると部屋の隅に白い布が被されていた遺体を発見した。彼はおもむろにその方を歩き出すと、布が被された遺体を黙って捲った。
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