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第4章―狂気の沙汰―

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 その日、逃げた囚人の男は、とうとう見つかることはなかった。全ての部屋を看守全員が見回りして探しても男は見つからず、まるで雲隠れするような奇妙な事態だった。クロビスは椅子に座ると、机の上にあった書類を片手で払った。

バサッ!

 はたかれた書類が辺り一面に舞い上がり、はらはらと床に落ちた。

バンッ!

 クロビスは拳で机を思いきり叩くと、その場で怒りをぶつけて怒鳴った。

『なぜ見つからない……!? こんなに探しても見つからないのは一体どう言う事だ……!』

彼がそう言うのも無理はなかった。要塞のようなタルタロスの牢獄は、外から簡単に侵入できない作りになっていた。

 中からも簡単には脱走は出来ない迷宮のような造りでもある。長年ここで勤めている看守ですらたまに道に迷ってしまうような、複雑な構造になっていた。

さらに一ヶ所だけ重要な扉には、クロビスにしか開けれない扉があった。そこを突破しなくては、恐らく外から抜け出すのは無理な話だった。

クロビスの中では直ぐに見つかると思っていた。だが、日が落ちて夜になっても見つからない不足の事態に自分の爪をギリギリと噛んだ。

怒りに満ちると自分の部屋に飾ってある装飾品を手当たり次第に壊し始めた。そして、部屋の中をメチャクチャに荒らすと呟いた。

「ええい、この失態どうしてくれようかっ!? これでは私が親父に殺される! ひょっとしら、アイツはどこかの回し者かもしれない……!」

 彼は立ちながらブツブツと独り言を呟いた。そして、不意に何かを思いつくと他の看守を部屋に呼び寄せた。暫くするとギュータスとケイバーとジャントゥーユを自分の部屋に、越させるように命令した。

 まもなくして3人は他の看守に呼ばれると彼の部屋に訪れた。ケイバーは部屋に入って早々に彼に尋ねた。

「なんだ、俺達を呼んで何の用だ。みつかったのかよクロビス――?」

 ケイバーがそう言うと、クロビスは3人に命令した。

「さっきの看守に尋問を行う、お前達は拷問部屋にさきに行ってろ!」

クロビスがそう言うと3人は頷いて返事をした。

「拷問かぁ? へっ、久しぶりに腕が鳴るぜぇ」

 ギュータスはそう言うと、狂気染みた笑い浮かべた。ジャントゥーユは口からだらしないヨダレを垂らしながら話した。

「拷問…拷問…グヘヘヘ…俺、拷問…好きだ…! 叫び声聞きたい…早くやろう……!」

ジャントゥーユはそう言うと誰よりもさきに拷問部屋へと向かって行った。その後をギュータスが追いかけに行った。
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