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友情の亀裂

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「いや、だからたいしたことじゃ…」
 
「ハッキリ言えよ!」
 
「……」
 
言いかけて黙り込むと、弦は怒鳴り
ながら聞き返してきた。
 
 俺は弦に対して、夢の中でお前とBLしてたとは言えずに、逆に言いづらくて言えないくらいだった。
 
「言えないのか?」
「何だよ恭一の癖に根性なしだな!」
 
弦のその一言に、俺は急にカッとなった。
 
「何だよ弦!」
「そっちこそ俺に言えるのか!?」

 
 「な、何だよ…!?」

 
 「俺のこと避けてる理由、教えろよ!!」

 「はぁ!?」
 
 「この前から俺のこと避けてることなんて、わかってるんだからな!」
 
 「な、何言ってるんだよ…!」
 「別に避けてねーよ!」
 
「嘘つくな!」
「他は騙せても、親友の俺は騙されないぞ!?」
 
「お前が俺のことを避けてる理由を言ったら、教えてやる!」
 
 「だから避けてねーって言ってるだろ!」
 
俺と弦は階段の下で、朝から大きな声を
出して大喧嘩をした。
 
これじゃあ、相談したくてもできない
状況だった。
 
弦が俺のことを避けてる理由をいまだに言わないことにシビレを切らすと、その場で冷たく突き放した。
 

 「あっそう。なら、もういい…!」
 「勝手にしろ!」
 
 「お前とは当分、口をきいてやらないからな!」
 
 「教科書だってお前に貸してやらないし、宿題だって一緒にみてやらないからな!」
 
 
 「お前とは絶交だ!!」
 
 
その瞬間、何を思ったのか。俺は勢いに任せて言ってはいけない言葉を口にした。
 
 
弦はその瞬間、顔が一気に青ざめていた。
 

呆然とした顔で俺のことを見てくると、弦は俺の方をキッと睨み返してきた。 
 
 「バカ野郎…!!」
 「こっちこそ絶交してやる!!」
 
 「お前とはこれっきりだ!!」
 
 「恭一のアホタレ!!」
 
 「ゆ、ゆずる…!?」
 
ひきとめる間もないまま、弦は俺の
そばから泣きながら走り去って行った。
 
「や、やばい…!」
もしかして俺。弦のこと傷つけたのかな…!?」
 
  「なんで絶交だなんて、言っちまったんだろ…!」
 
急に罪悪感に駈られると、俺はその場で
ストンと床の上に座り込んだ。
 
 罪悪感と同時に俺の頭の中では、
『絶交』と言ってしまった言葉が後から
重くのし掛かってきた――。

 その日を境に俺と弦は絶交状態になった。
 
 学校で会ってもお互いに口を聞かずに、
 廊下で会っても、すれ違うようにもなった。
 
 仲の良いクラスメイトに弦のことを聞かれたら、俺は素っ気ない感じで「知らない」と答えるしかなかった。
 
 あんなに俺達、仲が良かったのに。友情に一度入ってしまった亀裂は、簡単には元には戻らなかった。
 
 そうこうしているうちに俺達の溝は徐々に深まった。
 
 
 
 
 あれから弦と絶交してからやく、一ヶ月が過ぎた頃だった――。
 
 
 
 
その日、俺は学校でとんでもない光景を目にしてしまった。
 
 
 
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