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アーサーの洗脳
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「なんの騒ぎ?!うるさいわよ!」
「わっ!びっくりした!」
ドアを叩こうと近づいた途端、中からグロリアが飛び出してきてリラはのけぞった。
「あんただったの。何しにきたのよ。あんたに用なんかないわ」
それだけ言うとグロリアはドアを閉めようとしたが、すかさずライラックが足を挟み、それを阻んだ。
「なにすんのよ!……あんたまさか?!どうやってあの塔から出てきたの?!」
驚愕に目を見開くグロリアは、それでもライラックを追い出そうと足を挟んだままぎゅうぎゅうドアを閉める。
「お前を追い出すために戻ったんだ。その座はリラのものだろう」
彼女に対して怒りを露わにするライラックだが、リラはそんな事よりライラックの足が心配で気が気ではない。
(折れちゃう!骨が脆くなってるのに!)
「グロリア、とりあえず中で話そう!」
「はあ?黙れチビ!自分の家みたいに言ってんじゃないわよ」
「なんでもいいからドアを開けて!!」
心配のあまりパニックになったリラは力一杯ドアを押した。
ガコッ!!ドカン!
「痛いっ!」
「えっ?」
勢いで倒れ込むグロリア。
よろけながらも踏みとどまりリラを支えるライラック。
そして横たわる外れたドア。
「あんた?!馬鹿力にもほどがあるんじゃないの?!」
「そんなに力入れてないよ!」
「そんなはずないでしょ!」
「一体どうしたんだ?」
そんな状況を室内から怪訝な顔で見ていたのはとっくに国に帰ったと思っていたアーサーだった。
「じゃあずっとここにいたの?」
「ああ。体調が良くなかったんだがグロリアが親身に看病してくれてな。彼女の薬はとてもよく効くんだ」
グロリアの看病に薬。
それはまさに今話していた怪しい奴じゃないか。
「アーサー様の為ならなんでもしますわ」
しおらしくクネクネとしなを作るグロリアだが、うっすら頬を染めているところを見るとあながちその言葉は嘘ではないようだ。
「浮気でしょ!セラフィスにバラすよ!
「リラ、女心はうつろいやすいのよ?子供にはわからないだろうけど。国に帰ったらあんたは私の弟なんだからいい子にしてなさい」
「……?」
「アーサー様と結婚の約束をしたの。ね?アーサー様♡」
「ああ」
「兄さんどうしちゃったの!ライラックもなんとか言って!」
「ああ、まあグロリアがこの国からいなくなるならそれはそれで」
「ライラック!」
「あっ、すまない」
ライラックにとってはリラが嫁ぎ先のこの国で、皇后としてして幸せに暮らせるようにする事が目的なので、うっかりとそれ以外に気が回らずリラの怒りをかってしまった。
味方がいないと絶望したリラは、仕方なくアーサーに向き合いしっかりと目を見て諭すように話しかけた。
「兄さん、この女は国王に毒を盛るようなやつだよ。兄さんも変な薬飲まされて騙されてるんだ」
「は?!言いがかりつけないで!どこに証拠があるのよ!」
「そうだぞリラ。それにグロリアは俺にとってなくてはならない人なんだ」
「どういう意味?」
「俺はルロイに帰ったら皇太子に王位継承を辞退するよう求めようと思う」
「皇太子……カイル兄さん?」
「ああ、俺の方が国王に相応しい。それを教えてくれたのはグロリアだ」
「そんな……」
(あんなに仲の良かったカイル兄さんと争おうとするなんて)
リラは小さい拳を膝の上できゅっと握った。
「分かった。もういい。行こうライラック」
「リラ……」
「そうね、諦めて。私たちは明後日この国を出るわ」
グロリアは微笑みながらアーサーの隣に寄り添う。その顔は残酷な勝利の優越感に染まり醜い毒花のようだった。
「信じられない!腹立つ!脳筋だとは思ってたけどあんなあっさり操られるなんて!」
部屋に戻ったリラは、クッションをバシバシ叩いて兄への罵詈雑言を並べ立てていた。
「リラ、さっき陛下への謁見を頼んでおいた。まだ意識は戻っていないが何か証拠があるかもしれない」
「いつのまに。……でも明後日までに少しでいいから尻尾を掴みたい」
例えすぐにはアーサーの洗脳が解けないとしても。
「そうだ、カイル兄さんに手紙を書こう」
とりあえずは無用の争いを避ける為に出来ることをしよう。
リラは早速長兄への手紙をしたためで使用人に伝達を頼んだ。
「わっ!びっくりした!」
ドアを叩こうと近づいた途端、中からグロリアが飛び出してきてリラはのけぞった。
「あんただったの。何しにきたのよ。あんたに用なんかないわ」
それだけ言うとグロリアはドアを閉めようとしたが、すかさずライラックが足を挟み、それを阻んだ。
「なにすんのよ!……あんたまさか?!どうやってあの塔から出てきたの?!」
驚愕に目を見開くグロリアは、それでもライラックを追い出そうと足を挟んだままぎゅうぎゅうドアを閉める。
「お前を追い出すために戻ったんだ。その座はリラのものだろう」
彼女に対して怒りを露わにするライラックだが、リラはそんな事よりライラックの足が心配で気が気ではない。
(折れちゃう!骨が脆くなってるのに!)
「グロリア、とりあえず中で話そう!」
「はあ?黙れチビ!自分の家みたいに言ってんじゃないわよ」
「なんでもいいからドアを開けて!!」
心配のあまりパニックになったリラは力一杯ドアを押した。
ガコッ!!ドカン!
「痛いっ!」
「えっ?」
勢いで倒れ込むグロリア。
よろけながらも踏みとどまりリラを支えるライラック。
そして横たわる外れたドア。
「あんた?!馬鹿力にもほどがあるんじゃないの?!」
「そんなに力入れてないよ!」
「そんなはずないでしょ!」
「一体どうしたんだ?」
そんな状況を室内から怪訝な顔で見ていたのはとっくに国に帰ったと思っていたアーサーだった。
「じゃあずっとここにいたの?」
「ああ。体調が良くなかったんだがグロリアが親身に看病してくれてな。彼女の薬はとてもよく効くんだ」
グロリアの看病に薬。
それはまさに今話していた怪しい奴じゃないか。
「アーサー様の為ならなんでもしますわ」
しおらしくクネクネとしなを作るグロリアだが、うっすら頬を染めているところを見るとあながちその言葉は嘘ではないようだ。
「浮気でしょ!セラフィスにバラすよ!
「リラ、女心はうつろいやすいのよ?子供にはわからないだろうけど。国に帰ったらあんたは私の弟なんだからいい子にしてなさい」
「……?」
「アーサー様と結婚の約束をしたの。ね?アーサー様♡」
「ああ」
「兄さんどうしちゃったの!ライラックもなんとか言って!」
「ああ、まあグロリアがこの国からいなくなるならそれはそれで」
「ライラック!」
「あっ、すまない」
ライラックにとってはリラが嫁ぎ先のこの国で、皇后としてして幸せに暮らせるようにする事が目的なので、うっかりとそれ以外に気が回らずリラの怒りをかってしまった。
味方がいないと絶望したリラは、仕方なくアーサーに向き合いしっかりと目を見て諭すように話しかけた。
「兄さん、この女は国王に毒を盛るようなやつだよ。兄さんも変な薬飲まされて騙されてるんだ」
「は?!言いがかりつけないで!どこに証拠があるのよ!」
「そうだぞリラ。それにグロリアは俺にとってなくてはならない人なんだ」
「どういう意味?」
「俺はルロイに帰ったら皇太子に王位継承を辞退するよう求めようと思う」
「皇太子……カイル兄さん?」
「ああ、俺の方が国王に相応しい。それを教えてくれたのはグロリアだ」
「そんな……」
(あんなに仲の良かったカイル兄さんと争おうとするなんて)
リラは小さい拳を膝の上できゅっと握った。
「分かった。もういい。行こうライラック」
「リラ……」
「そうね、諦めて。私たちは明後日この国を出るわ」
グロリアは微笑みながらアーサーの隣に寄り添う。その顔は残酷な勝利の優越感に染まり醜い毒花のようだった。
「信じられない!腹立つ!脳筋だとは思ってたけどあんなあっさり操られるなんて!」
部屋に戻ったリラは、クッションをバシバシ叩いて兄への罵詈雑言を並べ立てていた。
「リラ、さっき陛下への謁見を頼んでおいた。まだ意識は戻っていないが何か証拠があるかもしれない」
「いつのまに。……でも明後日までに少しでいいから尻尾を掴みたい」
例えすぐにはアーサーの洗脳が解けないとしても。
「そうだ、カイル兄さんに手紙を書こう」
とりあえずは無用の争いを避ける為に出来ることをしよう。
リラは早速長兄への手紙をしたためで使用人に伝達を頼んだ。
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さすがリラくん👏やってくれましたね✨
まずはセラフィスへの一撃で🤭すっきり致しました😆
さぁ〜次はグロリアですね😱
お兄様も気になりますし、早く🙏懲らしめて下さいませね🩷
そして…ライラック様🥹
グロリアを撃退したら、元に戻るは無いですか?
やっぱり…リラくんの( ˘ ³˘)♥ですかね🤭
楽しみにお待ちしております(*´ェ`*)
リラかっこいいーーー🥰惚れます💕
ざまぁ。ワクワク🤭✨✨✨
ライラックも尻に敷かれそう……
楽しみにしております!!!✨
よしっ❗
これから、反撃(?)開始だ✊
不遇なライラックが、幸せになれますように…。