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魔女との対決
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当分目を覚ましそうに無いセラフィスを置き捨て、リラは部屋を出てライラックに駆け寄った。
「リラ!大丈夫か?すごい音がしたが……」
「何にも問題ないよ!ところでグロリアに話があるんだけど部屋に案内してくれる?」
「ああ、わかった。コラン、馬車を頼めるか」
「はい!」
リラだけなら走った方が早いがライラックはそうはいかない。
リラは黙って用意された馬車に乗り込んだ。
「どのくらい?」
「敷地内だ。ほんの十五分くらいだから庭でも楽しんでくれ」
そう言うとライラックは、懐かしそうに窓から見える景色に目を和ませた。
「父とよくこの庭を散歩した」
独り言のようなそれは、柔らかい風になってリラの耳をくすぐる。
「素敵な庭だね」
「ああ、母が好きだった」
先に鬼籍に入ったと聞いたがさぞかし綺麗な人だったんだろう。リラはライラックの手をきゅっと握る。
「国王陛下の容体はどうなの?まだ僕も会わせてもらってないんだけど」
「……父の面倒はグロリアが看てると聞いた。使用人には一切任せず献身的に看病をしてくれてるらしい。それに関してはあの女に感謝しなければならないな」
「え?ちょっと待って?」
リラは眉間に皺を寄せた。
(グロリアとは短い付き合いだけど献身的なんて言葉とは程遠くない?)
「ねえ、陛下は突然倒れたって聞いたけど元々何か病気があったの?」
「いや、風邪一つひいたことのない丈夫な人だった」
「どうしてグロリアに陛下を任せたの?」
「グロリアは、元々薬を売って生活していたようなんだ。彼女の作る薬はとても効果が高いらしい。だから今も陛下の薬は……」
そこまで話してからライラックはハッとしてリラを見た。
「グロリアが治療薬じゃなくて目が覚めない薬を飲ませてるとしたら」
「とんでもない事だね」
とんでもないを通り越して反逆罪で死刑案件だ。
「ひとまずグロリアから事情を聞こう。素直に吐くとは思えないが陛下から遠ざけること は出来る」
「うん!」
リラは力強く頷いた。
「ここだ」
「えーーー?」
グロリアの住まう離宮は、大きさこそ本宮殿に劣るものの、豪華さにかけては引けをとらない……いやむしろ格段上だった。
「グロリアが贅を凝らして建てさせたと聞いた」
「そうなんだ」
(本宮殿のグロリアの部屋も凄かったけどここは更にキラキラが過ぎて眩しい)
リラは目をぱちぱちさせながら屋敷を見上げた。
「リラ行くぞ」
「あ、はいっ!」
いや、そんなことよりライラックだ。怒りを湛えた彼はとても頼もしく格好良くて、リラはときめきを隠せない。
(見た目はすごく年上だけど全然結婚出来る。全て解決したら居なくなりそうだから、どんな事をしてでも逃さないように気をつけないと)
そんな物騒な事を考えながらライラックの後について門を潜ると、これまた豪華な扉の前で護衛の騎士が二人の行手を阻んだ。
「誰も入れるなと皇妃様よりの命令だ!帰れ!」
「僕の顔知ってるよね?皇后だよ?」
「誰であっても関係ない!」
「急ぎの用だ。取り次いで貰えないか」
「出来ないと言ってるだろうが!なんだこのジジイは!帰れ!いい加減にしないと痛い目を見るぞ!」
「取次だけでも」
「無理だっ!」
ドスン!!
「ぎゃあっ!!!!」
「リラ?!なにを……」
「ごめんね、ちょっとイライラしちゃった」
兵士の足を渾身の力で踏み付けたリラは困った顔でライラックを見上げる。
「ごめんね?でもちょっと大袈裟だよ?見てあげるからあっち行こう。ライラックちょっと待ってて?」
「あ、ああ」
天使の微笑みで兵士を無理やり建物の影に引き摺り込んだリラは、突然真顔になり兵士の兜を剥いだ。
「足は大丈夫?多分骨が砕けてると思うけど」
「えっ?!」
「ねえ、僕のライラックに冷たくしないで欲しいんだ。黙って言う事を聞いて。いい?」
「そんなわけには……」
「この足、もう一度踏んだら二度と歩けなくなるけど」
「ひいっ!!」
「踏まれたくないよね?」
顔面蒼白の兵士はコクコクと頷く。
「城の兵士じゃないよね?どこで雇われたチンピラか知らないけど、グロリアに付いててもいい事ないからこのまま逃げちゃえば?」
「は、はい!」
二人を部屋に通してしまえばどうせ罰を受ける。最悪殺されるかもしれない。そう思った兵士は足を引き摺りながらも一心不乱に森に向かって走った。
これで邪魔はいなくなった。
あの兵士と戦うにはライラックは歳をとり過ぎてる。昔から剣術に長けていたし、彼が負けるとは思わないが微塵も怪我をしてほしくない。
「いざとなったら僕が守るけど、ライラックの前では、か弱い可愛いリラでいたいんだよね」
なんせ恋する乙女?だから。
「リラ!大丈夫か?」
「はーい!大丈夫だよー」
心配になって様子を見に来たライラックにリラは満面の笑顔で応える。
「さあ行こうか」
「うん!」
「いよいよ魔女との対決だ」
「リラ!大丈夫か?すごい音がしたが……」
「何にも問題ないよ!ところでグロリアに話があるんだけど部屋に案内してくれる?」
「ああ、わかった。コラン、馬車を頼めるか」
「はい!」
リラだけなら走った方が早いがライラックはそうはいかない。
リラは黙って用意された馬車に乗り込んだ。
「どのくらい?」
「敷地内だ。ほんの十五分くらいだから庭でも楽しんでくれ」
そう言うとライラックは、懐かしそうに窓から見える景色に目を和ませた。
「父とよくこの庭を散歩した」
独り言のようなそれは、柔らかい風になってリラの耳をくすぐる。
「素敵な庭だね」
「ああ、母が好きだった」
先に鬼籍に入ったと聞いたがさぞかし綺麗な人だったんだろう。リラはライラックの手をきゅっと握る。
「国王陛下の容体はどうなの?まだ僕も会わせてもらってないんだけど」
「……父の面倒はグロリアが看てると聞いた。使用人には一切任せず献身的に看病をしてくれてるらしい。それに関してはあの女に感謝しなければならないな」
「え?ちょっと待って?」
リラは眉間に皺を寄せた。
(グロリアとは短い付き合いだけど献身的なんて言葉とは程遠くない?)
「ねえ、陛下は突然倒れたって聞いたけど元々何か病気があったの?」
「いや、風邪一つひいたことのない丈夫な人だった」
「どうしてグロリアに陛下を任せたの?」
「グロリアは、元々薬を売って生活していたようなんだ。彼女の作る薬はとても効果が高いらしい。だから今も陛下の薬は……」
そこまで話してからライラックはハッとしてリラを見た。
「グロリアが治療薬じゃなくて目が覚めない薬を飲ませてるとしたら」
「とんでもない事だね」
とんでもないを通り越して反逆罪で死刑案件だ。
「ひとまずグロリアから事情を聞こう。素直に吐くとは思えないが陛下から遠ざけること は出来る」
「うん!」
リラは力強く頷いた。
「ここだ」
「えーーー?」
グロリアの住まう離宮は、大きさこそ本宮殿に劣るものの、豪華さにかけては引けをとらない……いやむしろ格段上だった。
「グロリアが贅を凝らして建てさせたと聞いた」
「そうなんだ」
(本宮殿のグロリアの部屋も凄かったけどここは更にキラキラが過ぎて眩しい)
リラは目をぱちぱちさせながら屋敷を見上げた。
「リラ行くぞ」
「あ、はいっ!」
いや、そんなことよりライラックだ。怒りを湛えた彼はとても頼もしく格好良くて、リラはときめきを隠せない。
(見た目はすごく年上だけど全然結婚出来る。全て解決したら居なくなりそうだから、どんな事をしてでも逃さないように気をつけないと)
そんな物騒な事を考えながらライラックの後について門を潜ると、これまた豪華な扉の前で護衛の騎士が二人の行手を阻んだ。
「誰も入れるなと皇妃様よりの命令だ!帰れ!」
「僕の顔知ってるよね?皇后だよ?」
「誰であっても関係ない!」
「急ぎの用だ。取り次いで貰えないか」
「出来ないと言ってるだろうが!なんだこのジジイは!帰れ!いい加減にしないと痛い目を見るぞ!」
「取次だけでも」
「無理だっ!」
ドスン!!
「ぎゃあっ!!!!」
「リラ?!なにを……」
「ごめんね、ちょっとイライラしちゃった」
兵士の足を渾身の力で踏み付けたリラは困った顔でライラックを見上げる。
「ごめんね?でもちょっと大袈裟だよ?見てあげるからあっち行こう。ライラックちょっと待ってて?」
「あ、ああ」
天使の微笑みで兵士を無理やり建物の影に引き摺り込んだリラは、突然真顔になり兵士の兜を剥いだ。
「足は大丈夫?多分骨が砕けてると思うけど」
「えっ?!」
「ねえ、僕のライラックに冷たくしないで欲しいんだ。黙って言う事を聞いて。いい?」
「そんなわけには……」
「この足、もう一度踏んだら二度と歩けなくなるけど」
「ひいっ!!」
「踏まれたくないよね?」
顔面蒼白の兵士はコクコクと頷く。
「城の兵士じゃないよね?どこで雇われたチンピラか知らないけど、グロリアに付いててもいい事ないからこのまま逃げちゃえば?」
「は、はい!」
二人を部屋に通してしまえばどうせ罰を受ける。最悪殺されるかもしれない。そう思った兵士は足を引き摺りながらも一心不乱に森に向かって走った。
これで邪魔はいなくなった。
あの兵士と戦うにはライラックは歳をとり過ぎてる。昔から剣術に長けていたし、彼が負けるとは思わないが微塵も怪我をしてほしくない。
「いざとなったら僕が守るけど、ライラックの前では、か弱い可愛いリラでいたいんだよね」
なんせ恋する乙女?だから。
「リラ!大丈夫か?」
「はーい!大丈夫だよー」
心配になって様子を見に来たライラックにリラは満面の笑顔で応える。
「さあ行こうか」
「うん!」
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