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グロリアの誤算
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目が覚めると見た事のない部屋にいた。
お父様の部屋に似てる……
寝起きのリラはぼんやりとそんな事を思う。まだほんの一週間なのに家族の元に帰りたくてたまらなかった。
「お目覚めでしょうか」
「うん、おはよう」
見た事のない侍女だ。そう言えばモネを昨日から見ていない。
「モネはどうしたの?」
「家庭の事情で休みをとっております」
「そう」
じゃあ仕方ないな。病気とかじゃなくて良かった。
「妃殿下、朝食を準備しておりますのでお着替えの後ご案内いたします」
「うん」
リラはベッドから降りて侍女の世話を受け、身支度を整えた。今日はゆっくりしたいのでサスペンダーのついた黒いズボンに白いシャツ、それに黒いベストだ。
ベストにはリラの目と同じ色のシルバーダイヤモンドがボタンとして付いている。シンプルだが一目で仕立ての良い物と分かるこの服はコランが用意してくれた中の一着だ。
「食堂に行くの?」
「いえ本日は違う場所です」
無駄な事は一切話さない新しい侍女は丁寧だが冷たい印象で、リラはそれ以上何も聞けない。
随分歩いてリラを一つの扉の前に案内した侍女は軽くノックをして扉を開けた。
「あーら!ようこそリラ」
「えっ」
目の前にいたのはソファで足を組みふんぞり返るグロリア。食事など何一つ用意されていない。騙された、と思った時には先程の侍女はすっかり姿を消してしまっている。
「まあそこに座りなさいよ。あ、みんな出て良いわよ。しばらく誰も入ってこないで。泣き声が聞こえても、悲鳴が聞こえてもね」
「承知いたしました」
控えていた侍女に意味深な事を言ってグロリアはリラに向き直った。
当のリラは(昨日は涙目で逃げたくせに凄い。自分なら恥ずかしくて二度と外を歩けないのに)などと考えながら彼女を見つめ返す。
「何か用ですか」
「あなたに相談があるのよ。この国から出て行ってくれない?目障りなの。私とセラフィスは愛し合ってるって言ったでしょ?」
「はぁ」
それはそうなのかもしれないけど……と、リラは思う。愛情とかじゃなくてもう意地なのかも知れない。結婚したからには頑張って幸せにならなくてはと思うのは何だか呪いみたいだけど。
「セラフィスに別れて欲しいと言われたら帰ります」
「何言ってるの?!見ていれば解るでしょ!」
「分かりません。セラフィスは僕を愛していると抱きしめました。別れたい相手にそんな事しますか?」
「!!嘘言わないで!!」
ティーカップが飛んできたので持ち前の反射神経で避けたら更に怒られた。
いや、避けるでしょ普通。
「セラフィスが何を考えているのかは本当に分かりません。そこはまず二人で話し合って貰えませんか」
「話し合う必要なんかない!あんたが出て行けば良いのよ!」
……堂々巡りだ。
「全く話にならないわ!ちょっと!誰か!割れたカップを片づけなさい!」
話にならないのはどっちだろうか。面倒くさくなったリラは部屋に戻ろうと立ち上がった。
その時、慌ててカップを片付けに来た侍女に片腕がない事に気付く。
手伝おうとしたリラは相手の顔を見て衝撃を受けた。
「モネ?」
「妃殿下……」
リラを見上げた顔は涙で汚れている。一体どうしてここに。そしてなぜ一昨日はあったはずの左腕が無いのか。
「申し訳ございません!」
頭を擦り付けんばかりに跪くモネにグロリアが近づき頭を蹴った。
「何するんだ!」
モネを庇ったリラをグロリアは高笑いしながら見下ろす。
「バカね!モネは私の侍女よ。あんたの結婚衣装を汚したのもこの子。ちゃんと着られないくらいズタズタにしろって言ったのに中途半端な事しか出来なかったから罰を与えたの」
「なに?」
罰?まさかそれで腕を切り落としたのか?
たったそれだけの事で?
リラの脳裏に衣装部屋の侍女が足を切ろうとしていた記憶が蘇った。
「モネの腕を切ったのか」
「そうよ。叱るくらいじゃ効果ないでしょ」
ガタガタと震えながらリラに謝罪を繰り返すモネ。そんな彼女をリラはそっと抱き起こし椅子に座らせた。
「痛みは?」
「だっ大丈夫です」
「そんなわけないよね。我慢しなくて良いよ。一昨日の夜か昨日のことでしょ?後で宮廷医に診てもらおう」
「そんな、私なんかに勿体無い」
「大丈夫だから」
リラは今まで味わった事が無いような怒りが込み上げるのを感じた。
侍女でも平民でも同じ人間だ。こんな風に扱って良いわけがない。例えどんなに謝ってももう取り返しがつかないんだ。まだ若いモネはこれから一生片腕で暮らすんだぞ。
「何勝手なことしてんのよ!モネは私の侍女よ!」
「グロリア」
「呼び捨てにするな!あんたもおんなじ目に遭わせてあげるわ!」
自分より一回りも小さいモネを侮り、平手打ちをしようとグロリアは手を振り上げた。
リラはその手を掴みあらぬ方向に向かって勢いよく折り曲げる。
「い……痛っ!?ぎゃあああああ!!」
バキッという嫌な音と共にグロリアの絶叫が部屋に響き渡る。
痛みのあまり地面をのたうつ彼女を見下ろしたリラはにっこり笑って言った。
「大丈夫だよね?折れただけ。無くなったわけじゃないし」
「あっ!あんたこんな事してタダで済むと!」
「済むよ。ただの妾のお前が侍女にこんな事して何も言わない皇太子なら僕の事だって叱れないだろ。だって僕は皇太子妃なんだから」
「そんな、いや、だってセラフィスは……」
痛みのあまり涙と脂汗を流しながら必死に言葉を探すグロリアはやっとリラの怒りが本物だと察し、唇を噛む。
「お願い!!医者を呼んで!!」
「無理だよ。医者には今からモネを診てもらわなきゃいけないからね。だって彼女の方が重症だろ。お望み通り泣いても喚いても誰も来ないよ。良かったね」
リラはそう言ってモネを連れ、外に出る。
あまりの出来事に自分から助けを求めに行くという簡単な事にさえ気付かずグロリアは一人絶望した。
やり過ぎた。
リラはこっそり反省した。
怒りのあまり腕を折っちゃうなんて父様や兄様に知られたら凄く怒られる。それにモネも驚かせてしまった。
「びっくりしたよね、ごめんねモネ」
先程から泣きっぱなしのモネはしゃくりあげながらも首を振る。
「感謝しかありません皇妃様。私は皇妃様を裏切ったのに」
「だって僕の結婚式を本当に楽しみにしてたでしょ」
「勿論です!あの時は本当に……」
「グロリアに逆らったら殺されちゃうんだからそりゃ断るなんて無理だよ。それに服はちゃんと着られたから大丈夫」
式典の服を汚すなんて大変な事だ。けれど全てを台無しにせず、裾にだけ汚れをつけた彼女の葛藤も理解できるし、そもそも既に過分な罰を受けた。これ以上何が言えるだろうか。
モネを連れて宮廷医の元に急いでいると前からコランが走って来た。
「リラ様!遅くなりました!」
「コラン、すぐ医者に連絡して」
「まさか!グロリアが何か?!」
「あ、まあ」
僕ではないけど確かにグロリアのせいではある。
コランの顔色がサッと変わる。
「申し訳ございません!朝のご挨拶に伺ったら既に見慣れない侍女と部屋を出られたと聞いて……!」
そう言いながらコランはリラに怪我はないか確認する。慌てて走ってきたのだろう。額に汗を浮かべていた。
「あっ、違う違う。モネの腕を見てあげて欲しいんだ」
「侍女の腕を?……あっ?」
片方の袖だけが風に揺れている様子にコランは口を閉じた。そして使用人を探してモネの案内を依頼した。
「よく診て貰ってね」
「皇妃様……」
まだ泣き続けているモネを見送り、コランと共に自室への道を辿る。
「あ、そうだ。グロリアのとこにも医者を寄越して」
「どうしてですか?」
「えーっと。ちょっと喧嘩したんだ」
「喧嘩?」
「殴りかかられたから、その……腕を折っちゃった」
「…………はあ」
コランから聞いた事ないような間抜けな返事が返って来た。
「ほら、僕って小さいでしょ?昔からよく誘拐なんかされそうになったんだよね。だから父王が護身術を身に付けなさいって」
「護身術を?」
「うん。そしたら意外と才能あったみたいで結構その……強くなっちゃって」
リラは恥じらいなから告白した。
本人にとっては恥ずかしい事なんだろうか。
コランはそんなリラに胸を鷲掴みにされた。
「こんなにか弱くていたいけでいらっしゃるのに」
「力は強くないんだけどね。弱いなりにまあ。なんて言うか、あるんだよ、人体には色んな場所に急所が」
そう言ってリラはにっこり笑った。
コランの背筋に汗が流れる。
いけない、これは本物だ。この方は絶対に怒らせてはいけない。
コランはそう強く思った。
お父様の部屋に似てる……
寝起きのリラはぼんやりとそんな事を思う。まだほんの一週間なのに家族の元に帰りたくてたまらなかった。
「お目覚めでしょうか」
「うん、おはよう」
見た事のない侍女だ。そう言えばモネを昨日から見ていない。
「モネはどうしたの?」
「家庭の事情で休みをとっております」
「そう」
じゃあ仕方ないな。病気とかじゃなくて良かった。
「妃殿下、朝食を準備しておりますのでお着替えの後ご案内いたします」
「うん」
リラはベッドから降りて侍女の世話を受け、身支度を整えた。今日はゆっくりしたいのでサスペンダーのついた黒いズボンに白いシャツ、それに黒いベストだ。
ベストにはリラの目と同じ色のシルバーダイヤモンドがボタンとして付いている。シンプルだが一目で仕立ての良い物と分かるこの服はコランが用意してくれた中の一着だ。
「食堂に行くの?」
「いえ本日は違う場所です」
無駄な事は一切話さない新しい侍女は丁寧だが冷たい印象で、リラはそれ以上何も聞けない。
随分歩いてリラを一つの扉の前に案内した侍女は軽くノックをして扉を開けた。
「あーら!ようこそリラ」
「えっ」
目の前にいたのはソファで足を組みふんぞり返るグロリア。食事など何一つ用意されていない。騙された、と思った時には先程の侍女はすっかり姿を消してしまっている。
「まあそこに座りなさいよ。あ、みんな出て良いわよ。しばらく誰も入ってこないで。泣き声が聞こえても、悲鳴が聞こえてもね」
「承知いたしました」
控えていた侍女に意味深な事を言ってグロリアはリラに向き直った。
当のリラは(昨日は涙目で逃げたくせに凄い。自分なら恥ずかしくて二度と外を歩けないのに)などと考えながら彼女を見つめ返す。
「何か用ですか」
「あなたに相談があるのよ。この国から出て行ってくれない?目障りなの。私とセラフィスは愛し合ってるって言ったでしょ?」
「はぁ」
それはそうなのかもしれないけど……と、リラは思う。愛情とかじゃなくてもう意地なのかも知れない。結婚したからには頑張って幸せにならなくてはと思うのは何だか呪いみたいだけど。
「セラフィスに別れて欲しいと言われたら帰ります」
「何言ってるの?!見ていれば解るでしょ!」
「分かりません。セラフィスは僕を愛していると抱きしめました。別れたい相手にそんな事しますか?」
「!!嘘言わないで!!」
ティーカップが飛んできたので持ち前の反射神経で避けたら更に怒られた。
いや、避けるでしょ普通。
「セラフィスが何を考えているのかは本当に分かりません。そこはまず二人で話し合って貰えませんか」
「話し合う必要なんかない!あんたが出て行けば良いのよ!」
……堂々巡りだ。
「全く話にならないわ!ちょっと!誰か!割れたカップを片づけなさい!」
話にならないのはどっちだろうか。面倒くさくなったリラは部屋に戻ろうと立ち上がった。
その時、慌ててカップを片付けに来た侍女に片腕がない事に気付く。
手伝おうとしたリラは相手の顔を見て衝撃を受けた。
「モネ?」
「妃殿下……」
リラを見上げた顔は涙で汚れている。一体どうしてここに。そしてなぜ一昨日はあったはずの左腕が無いのか。
「申し訳ございません!」
頭を擦り付けんばかりに跪くモネにグロリアが近づき頭を蹴った。
「何するんだ!」
モネを庇ったリラをグロリアは高笑いしながら見下ろす。
「バカね!モネは私の侍女よ。あんたの結婚衣装を汚したのもこの子。ちゃんと着られないくらいズタズタにしろって言ったのに中途半端な事しか出来なかったから罰を与えたの」
「なに?」
罰?まさかそれで腕を切り落としたのか?
たったそれだけの事で?
リラの脳裏に衣装部屋の侍女が足を切ろうとしていた記憶が蘇った。
「モネの腕を切ったのか」
「そうよ。叱るくらいじゃ効果ないでしょ」
ガタガタと震えながらリラに謝罪を繰り返すモネ。そんな彼女をリラはそっと抱き起こし椅子に座らせた。
「痛みは?」
「だっ大丈夫です」
「そんなわけないよね。我慢しなくて良いよ。一昨日の夜か昨日のことでしょ?後で宮廷医に診てもらおう」
「そんな、私なんかに勿体無い」
「大丈夫だから」
リラは今まで味わった事が無いような怒りが込み上げるのを感じた。
侍女でも平民でも同じ人間だ。こんな風に扱って良いわけがない。例えどんなに謝ってももう取り返しがつかないんだ。まだ若いモネはこれから一生片腕で暮らすんだぞ。
「何勝手なことしてんのよ!モネは私の侍女よ!」
「グロリア」
「呼び捨てにするな!あんたもおんなじ目に遭わせてあげるわ!」
自分より一回りも小さいモネを侮り、平手打ちをしようとグロリアは手を振り上げた。
リラはその手を掴みあらぬ方向に向かって勢いよく折り曲げる。
「い……痛っ!?ぎゃあああああ!!」
バキッという嫌な音と共にグロリアの絶叫が部屋に響き渡る。
痛みのあまり地面をのたうつ彼女を見下ろしたリラはにっこり笑って言った。
「大丈夫だよね?折れただけ。無くなったわけじゃないし」
「あっ!あんたこんな事してタダで済むと!」
「済むよ。ただの妾のお前が侍女にこんな事して何も言わない皇太子なら僕の事だって叱れないだろ。だって僕は皇太子妃なんだから」
「そんな、いや、だってセラフィスは……」
痛みのあまり涙と脂汗を流しながら必死に言葉を探すグロリアはやっとリラの怒りが本物だと察し、唇を噛む。
「お願い!!医者を呼んで!!」
「無理だよ。医者には今からモネを診てもらわなきゃいけないからね。だって彼女の方が重症だろ。お望み通り泣いても喚いても誰も来ないよ。良かったね」
リラはそう言ってモネを連れ、外に出る。
あまりの出来事に自分から助けを求めに行くという簡単な事にさえ気付かずグロリアは一人絶望した。
やり過ぎた。
リラはこっそり反省した。
怒りのあまり腕を折っちゃうなんて父様や兄様に知られたら凄く怒られる。それにモネも驚かせてしまった。
「びっくりしたよね、ごめんねモネ」
先程から泣きっぱなしのモネはしゃくりあげながらも首を振る。
「感謝しかありません皇妃様。私は皇妃様を裏切ったのに」
「だって僕の結婚式を本当に楽しみにしてたでしょ」
「勿論です!あの時は本当に……」
「グロリアに逆らったら殺されちゃうんだからそりゃ断るなんて無理だよ。それに服はちゃんと着られたから大丈夫」
式典の服を汚すなんて大変な事だ。けれど全てを台無しにせず、裾にだけ汚れをつけた彼女の葛藤も理解できるし、そもそも既に過分な罰を受けた。これ以上何が言えるだろうか。
モネを連れて宮廷医の元に急いでいると前からコランが走って来た。
「リラ様!遅くなりました!」
「コラン、すぐ医者に連絡して」
「まさか!グロリアが何か?!」
「あ、まあ」
僕ではないけど確かにグロリアのせいではある。
コランの顔色がサッと変わる。
「申し訳ございません!朝のご挨拶に伺ったら既に見慣れない侍女と部屋を出られたと聞いて……!」
そう言いながらコランはリラに怪我はないか確認する。慌てて走ってきたのだろう。額に汗を浮かべていた。
「あっ、違う違う。モネの腕を見てあげて欲しいんだ」
「侍女の腕を?……あっ?」
片方の袖だけが風に揺れている様子にコランは口を閉じた。そして使用人を探してモネの案内を依頼した。
「よく診て貰ってね」
「皇妃様……」
まだ泣き続けているモネを見送り、コランと共に自室への道を辿る。
「あ、そうだ。グロリアのとこにも医者を寄越して」
「どうしてですか?」
「えーっと。ちょっと喧嘩したんだ」
「喧嘩?」
「殴りかかられたから、その……腕を折っちゃった」
「…………はあ」
コランから聞いた事ないような間抜けな返事が返って来た。
「ほら、僕って小さいでしょ?昔からよく誘拐なんかされそうになったんだよね。だから父王が護身術を身に付けなさいって」
「護身術を?」
「うん。そしたら意外と才能あったみたいで結構その……強くなっちゃって」
リラは恥じらいなから告白した。
本人にとっては恥ずかしい事なんだろうか。
コランはそんなリラに胸を鷲掴みにされた。
「こんなにか弱くていたいけでいらっしゃるのに」
「力は強くないんだけどね。弱いなりにまあ。なんて言うか、あるんだよ、人体には色んな場所に急所が」
そう言ってリラはにっこり笑った。
コランの背筋に汗が流れる。
いけない、これは本物だ。この方は絶対に怒らせてはいけない。
コランはそう強く思った。
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