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一歩
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次の日、俺は賢士に連れられて買い物に来ていた。
俺のブカブカのシャツに穴の空いたジーンズを見ていると可哀想だという理由で。
一応言っとくけどファッションだからね?
オーバートップスにクラッシュデニムな?
まあ買ってくれるんなら付き合いますけどね。勿論。
「これなんか良いんじゃないか?落ち着いてて」
「胸にワニとか熊とか馬の刺繍が入ったポロシャツなんか絶対嫌。」
日曜日のお父さんか。
「お前の選ぶのはどれもチャラチャラしてるんだよ」
「賢士の選ぶのはどれも年寄りくさいんだよ!」
睨み合う2人を店員があらまあと微笑ましい顔で眺めていて更にムカつく。
見るからにαとΩの俺たちはカップルだと思われているんだろう。
それでも賢士は周りの女性客にチラチラと熱い視線を投げかけられている。
なんだか面白くない
「別に賢士を好きじゃないけど腕組んでいい?」
「好きじゃないならやめろ」
「うるさいなあ」
胡散臭そうな顔で俺を見る賢士を無視して腕を組むと悔しそうなため息がそこかしこで聞こえた。
気持ちいい♡
悪どい仕事してそうだけど金回りは良さ気だし高そうなスーツを着こなせるスタイルの持ち主だ。
こんな奴と番になれたら一生安泰だよな。
・・俺ってば何を弱気になってるんだ。
1人で生きていくって
αには頼らないって
家を出たあの日に誓ったはずだろ。
うちは親兄弟親戚一同全てαの名門家系だった。
子供の頃はとても可愛がられ大事に育てられた。
男の子なのに姫なんて名前に入れられちゃうくらい。
でも10歳の時、初めてのバース検査でΩと分かった途端、世界が一変した。
身分も愛情も全てを奪われて地下の部屋に閉じ込められた。
それでも家に置いて貰えたのは18歳の確定検査でαに変化するかもしれなかったからだ。
けれどやっぱり検査結果はΩで。
その日から早く家を出ていくようにと毎日言われた。
そんな事言われても行くあてもないしここに居ればご飯だけは食べられると頑張って居座ってたんだけど
ある日、酔ったαの兄に乱暴されそうになり
とうとう
家を飛び出した。
家を出て初めて分かったのは
ご飯とか寝る場所とかそんなことより
もしかすると両親が今までごめんねと言って地下から出してくれるかもしれない。
昔みたいにママの可愛い夏姫と言って笑って抱きしめてくれる日が来るかもしれない。
毎日そんな夢を見てあの場所から離れられずにいたってことだった。
「夏姫?どうした?ぼんやりして」
賢士の声にハッと我に返る。
「なんでもない」
急いで笑顔を作り返事をする。
しばらく忘れてたのに。
組んだ腕の温かさに子供の頃を思い出したんだろうか。
親以外で初めて
汚い欲望を感じさせない腕だったから
「夏姫が大人しいと気持ち悪いな」
「はあ?気に入った服がなかったからだよ!」
わざと悪態をつく。
心に触れさせないように
「ほんっっとわがままだな。じゃあ次の店行くぞ」
「えっ」
「何が、え?だよ。気に入らなかったんだろ?さっさと行くぞ」
「・・うん」
俺は涙を堪え賢士の腕をぎゅうっと強く掴み歩幅の広い彼に置いていかれないよう大きく足を踏み出した。
俺のブカブカのシャツに穴の空いたジーンズを見ていると可哀想だという理由で。
一応言っとくけどファッションだからね?
オーバートップスにクラッシュデニムな?
まあ買ってくれるんなら付き合いますけどね。勿論。
「これなんか良いんじゃないか?落ち着いてて」
「胸にワニとか熊とか馬の刺繍が入ったポロシャツなんか絶対嫌。」
日曜日のお父さんか。
「お前の選ぶのはどれもチャラチャラしてるんだよ」
「賢士の選ぶのはどれも年寄りくさいんだよ!」
睨み合う2人を店員があらまあと微笑ましい顔で眺めていて更にムカつく。
見るからにαとΩの俺たちはカップルだと思われているんだろう。
それでも賢士は周りの女性客にチラチラと熱い視線を投げかけられている。
なんだか面白くない
「別に賢士を好きじゃないけど腕組んでいい?」
「好きじゃないならやめろ」
「うるさいなあ」
胡散臭そうな顔で俺を見る賢士を無視して腕を組むと悔しそうなため息がそこかしこで聞こえた。
気持ちいい♡
悪どい仕事してそうだけど金回りは良さ気だし高そうなスーツを着こなせるスタイルの持ち主だ。
こんな奴と番になれたら一生安泰だよな。
・・俺ってば何を弱気になってるんだ。
1人で生きていくって
αには頼らないって
家を出たあの日に誓ったはずだろ。
うちは親兄弟親戚一同全てαの名門家系だった。
子供の頃はとても可愛がられ大事に育てられた。
男の子なのに姫なんて名前に入れられちゃうくらい。
でも10歳の時、初めてのバース検査でΩと分かった途端、世界が一変した。
身分も愛情も全てを奪われて地下の部屋に閉じ込められた。
それでも家に置いて貰えたのは18歳の確定検査でαに変化するかもしれなかったからだ。
けれどやっぱり検査結果はΩで。
その日から早く家を出ていくようにと毎日言われた。
そんな事言われても行くあてもないしここに居ればご飯だけは食べられると頑張って居座ってたんだけど
ある日、酔ったαの兄に乱暴されそうになり
とうとう
家を飛び出した。
家を出て初めて分かったのは
ご飯とか寝る場所とかそんなことより
もしかすると両親が今までごめんねと言って地下から出してくれるかもしれない。
昔みたいにママの可愛い夏姫と言って笑って抱きしめてくれる日が来るかもしれない。
毎日そんな夢を見てあの場所から離れられずにいたってことだった。
「夏姫?どうした?ぼんやりして」
賢士の声にハッと我に返る。
「なんでもない」
急いで笑顔を作り返事をする。
しばらく忘れてたのに。
組んだ腕の温かさに子供の頃を思い出したんだろうか。
親以外で初めて
汚い欲望を感じさせない腕だったから
「夏姫が大人しいと気持ち悪いな」
「はあ?気に入った服がなかったからだよ!」
わざと悪態をつく。
心に触れさせないように
「ほんっっとわがままだな。じゃあ次の店行くぞ」
「えっ」
「何が、え?だよ。気に入らなかったんだろ?さっさと行くぞ」
「・・うん」
俺は涙を堪え賢士の腕をぎゅうっと強く掴み歩幅の広い彼に置いていかれないよう大きく足を踏み出した。
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