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同居
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「何これ美味っ!本当に肉?柔らかっ!飲み物じゃないの?」
ナイフとフォークを駆使して一心不乱に肉を飲み込む俺。
うっとりとハムスターでも見るような目で微笑み俺を見る浩二。
そんな俺たちをこれ以上ないくらい顔を歪め眉間の皺を深くして眺める直線男。
カオスな食卓はそれでも俺にとって久し振りにきちんとした食事だったし神戸牛に至っては初めてのご馳走だった。
「はーお腹いっぱい。ご馳走様でした!」
きちんと手を合わせて感謝を示し立ち上がる。
「じゃあこれで」
「あっ!待って夏姫!また会ってくれる?」
馬鹿浩二余計なこと言うな。
ほら直線男が睨んでる。
「だってほらそこの直せ・・お兄さんと約束したからね。もうこれで一生サヨナラね」
子供に言い聞かせるようにそう言ってドアに向かった。
そんな俺の前に
いつからいたのか恰幅のいい和服を着こなした老人が立ちはだかる。
「お前が夏姫か?」
「そうだけど」
「2度と浩二に会わんと約束しろ!!」
「会わないって言ってるじゃん!!!」
なんなのもう
こいつらマジ頭おかしい
「親父!俺は夏姫を愛してる!」
「ややこしくなるから黙ってろ馬鹿!・・えっ?お父さんなの?」
「わしの可愛い一人息子に馬鹿と言ったか?」
「あーー!!もう!!!」
俺は一刻も早くこの場から立ち去りたいだけなのに!
1人押し黙っている直線男になんとかしろと目で合図するとやっと重そうな口を動かした。
「組長。ここは浩二さんに席を外して貰って3人で話を詰めましょう」
「そうだな。浩二先に車で待ってなさい」
「・・はい。夏姫を虐めないでね」
「わかっとる」
しおしおと玄関から出て行く浩二が心底羨ましい。
なぜ身内3人で話合わない。
なぜ俺を巻き込む。
俺だって外に出たい。
ちょっと待てよ。
しかも組長って言ったよ?
詰めるって話だよね?指じゃないよね?
可愛いしか取り柄のない俺が小指なんて無くなったらもう誰からも相手にされないよ?
そこら辺分かってくれてるよね?
「夏姫」
「はいっ!」
直線男に名前を呼ばれ背筋が伸びる。
いやでも呼び捨てにするな。
お前とは今日初対面だろ。
「どうしてもぼっちゃんと付き合いたいなら条件を飲んでもらう」
「飲みません」
だって付き合わないから。
直線男は驚いた顔で俺を見る
「肝の座った奴だな」
感心したようにそう呟いた瞬間親父が叫んだ
「話にならん!!」
それはお前だろ!!と言いたい気持ちをぐっと抑えて大人しくしている。
コマンドは命大事に。
「賢士」
「はい」
賢士って言うんだ。
この直線男。
「このΩはお前が面倒を見ろ」
「「えっ?!」」
同時に変な声が出た。
「お前もそろそろ身を固めたほうがいいだろう。お前の番なら浩二も何も言えん。あいつはβだからな」
「いやしかし組長」
賢士は気を遣いながら反論する。
そんなすごい奴なんだ浩二のパパ。
「分かったな?こいつは今日からお前の番だ。さっさと首を噛んで自分のものにしろ」
はあああ?
どんな言種だ!
俺にだって選ぶ権利はある!
そう言いかけた時浩二パパが俺を見て言った
「賢士の家にいればさっきの肉が毎日食えるぞ。賢士は料理が得意だしな。」
毎日?
「このマンションも広くて住みやすそうだろう?訳ありみたいだし夜中に街を彷徨いて相手を探すよりここに居た方が良いんじゃないか?」
それはとても魅力的な提案だ。
賢士をちらりと見ると苦々しい顔をしているがこの親父の言うことには逆らえないらしい。
それならしばらく利用させて貰うのもいいかもしれない。
「条件がある」
俺がそう言うと何様だよと顔に書いてある賢士が低い声でなんだ?と聞いてきた。
「番うにしても強引なのは嫌だ。ちゃんと俺がお前を好きになってからにして欲しい」
まあそんな日は絶対来ないんだけど。
分かったのか分かってないのかと言えば分かってない目をした賢士が軽く頷く。
「よし!では仲良くやれよ」
そう言って高笑いでも聞こえてきそうなご満悦の表情で親父が部屋を出て行く。
残されたのはたった今出来たばかりのお試しカップルだ。
「俺・・清楚な大人っぽい美人が好きなんだけどな」
「俺だってお前みたいなおっさんじゃなくて元気な若者の方が好きだわ」
「ほんと可愛いのは顔だけだな」
「褒めてくれてありがとう!」
言い合いをしながらも賢士は部屋を俺のために空けてくれて室内の設備を一通り説明してくれる。
どこもかしこも最先端で見たことない物ばかりだった。
こんなとこに住める機会なんて滅多にない。
今のうちに好き勝手使って楽しもう。
俺はそう心に誓って豪華すぎる自分の部屋をウキウキしながら眺めた。
ナイフとフォークを駆使して一心不乱に肉を飲み込む俺。
うっとりとハムスターでも見るような目で微笑み俺を見る浩二。
そんな俺たちをこれ以上ないくらい顔を歪め眉間の皺を深くして眺める直線男。
カオスな食卓はそれでも俺にとって久し振りにきちんとした食事だったし神戸牛に至っては初めてのご馳走だった。
「はーお腹いっぱい。ご馳走様でした!」
きちんと手を合わせて感謝を示し立ち上がる。
「じゃあこれで」
「あっ!待って夏姫!また会ってくれる?」
馬鹿浩二余計なこと言うな。
ほら直線男が睨んでる。
「だってほらそこの直せ・・お兄さんと約束したからね。もうこれで一生サヨナラね」
子供に言い聞かせるようにそう言ってドアに向かった。
そんな俺の前に
いつからいたのか恰幅のいい和服を着こなした老人が立ちはだかる。
「お前が夏姫か?」
「そうだけど」
「2度と浩二に会わんと約束しろ!!」
「会わないって言ってるじゃん!!!」
なんなのもう
こいつらマジ頭おかしい
「親父!俺は夏姫を愛してる!」
「ややこしくなるから黙ってろ馬鹿!・・えっ?お父さんなの?」
「わしの可愛い一人息子に馬鹿と言ったか?」
「あーー!!もう!!!」
俺は一刻も早くこの場から立ち去りたいだけなのに!
1人押し黙っている直線男になんとかしろと目で合図するとやっと重そうな口を動かした。
「組長。ここは浩二さんに席を外して貰って3人で話を詰めましょう」
「そうだな。浩二先に車で待ってなさい」
「・・はい。夏姫を虐めないでね」
「わかっとる」
しおしおと玄関から出て行く浩二が心底羨ましい。
なぜ身内3人で話合わない。
なぜ俺を巻き込む。
俺だって外に出たい。
ちょっと待てよ。
しかも組長って言ったよ?
詰めるって話だよね?指じゃないよね?
可愛いしか取り柄のない俺が小指なんて無くなったらもう誰からも相手にされないよ?
そこら辺分かってくれてるよね?
「夏姫」
「はいっ!」
直線男に名前を呼ばれ背筋が伸びる。
いやでも呼び捨てにするな。
お前とは今日初対面だろ。
「どうしてもぼっちゃんと付き合いたいなら条件を飲んでもらう」
「飲みません」
だって付き合わないから。
直線男は驚いた顔で俺を見る
「肝の座った奴だな」
感心したようにそう呟いた瞬間親父が叫んだ
「話にならん!!」
それはお前だろ!!と言いたい気持ちをぐっと抑えて大人しくしている。
コマンドは命大事に。
「賢士」
「はい」
賢士って言うんだ。
この直線男。
「このΩはお前が面倒を見ろ」
「「えっ?!」」
同時に変な声が出た。
「お前もそろそろ身を固めたほうがいいだろう。お前の番なら浩二も何も言えん。あいつはβだからな」
「いやしかし組長」
賢士は気を遣いながら反論する。
そんなすごい奴なんだ浩二のパパ。
「分かったな?こいつは今日からお前の番だ。さっさと首を噛んで自分のものにしろ」
はあああ?
どんな言種だ!
俺にだって選ぶ権利はある!
そう言いかけた時浩二パパが俺を見て言った
「賢士の家にいればさっきの肉が毎日食えるぞ。賢士は料理が得意だしな。」
毎日?
「このマンションも広くて住みやすそうだろう?訳ありみたいだし夜中に街を彷徨いて相手を探すよりここに居た方が良いんじゃないか?」
それはとても魅力的な提案だ。
賢士をちらりと見ると苦々しい顔をしているがこの親父の言うことには逆らえないらしい。
それならしばらく利用させて貰うのもいいかもしれない。
「条件がある」
俺がそう言うと何様だよと顔に書いてある賢士が低い声でなんだ?と聞いてきた。
「番うにしても強引なのは嫌だ。ちゃんと俺がお前を好きになってからにして欲しい」
まあそんな日は絶対来ないんだけど。
分かったのか分かってないのかと言えば分かってない目をした賢士が軽く頷く。
「よし!では仲良くやれよ」
そう言って高笑いでも聞こえてきそうなご満悦の表情で親父が部屋を出て行く。
残されたのはたった今出来たばかりのお試しカップルだ。
「俺・・清楚な大人っぽい美人が好きなんだけどな」
「俺だってお前みたいなおっさんじゃなくて元気な若者の方が好きだわ」
「ほんと可愛いのは顔だけだな」
「褒めてくれてありがとう!」
言い合いをしながらも賢士は部屋を俺のために空けてくれて室内の設備を一通り説明してくれる。
どこもかしこも最先端で見たことない物ばかりだった。
こんなとこに住める機会なんて滅多にない。
今のうちに好き勝手使って楽しもう。
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