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★本編★
違和感
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それから一週間、僕はルドルフの言い付け通りずっとベッドで過ごす事になった。
暇なのでひたすら自分に治癒治療をかけ続けていたら、毒の後遺症どころか背中にあった鞭の跡まで綺麗に消え失せていて驚いた。風呂の度に痛々しい傷跡をメイド達に見せなくて済むようになったから良かったけど。
「皇后様、朝食をお持ちしました」
「ありがとうアーロン」
アデリンの事があってから再びアーロンが僕に付いてくれる事になった。
その分ルドルフが一人で全ての国政を務めなくてはならないので顔を合わす事も随分減った。
「アーロン」
「何ですか?」
「そろそろ後宮に妾とか入らないかな」
「何故です?」
「いや、僕は相変わらずヒートが来ないし。でも跡継ぎは必要でしょ」
「確かに跡継ぎは必要かもしれませんがそんな事を陛下に進言したら即座に切り捨てられますよ。実際この間うちの娘を後宮に、と連れて来た男爵が爵位返納させられました」
「えっ?!そんな事くらいでそこまで?!」
「そんな事くらいではありません。皇后様に否定的な家門は全て要職を外されております」
それは困る。前生のようにそろそろ後宮に妾の一人や二人入れて貰って過去を繰り返して貰わないと。過去の僕にはあんなに冷たかったんだから同じように接してくれればいいのに。
「そんなわけでどの貴族も皇后様に気に入られようと謁見を求めて大騒ぎですよ」
「……やだな」
「そうですよね。なので陛下が吟味して皇后様の予定を立てておられます。実は本日の午後も仮の予定がありますが皇后様のご体調次第なのでどうされるか決めて下さいね」
「予定って貴族と会う予定?」
「そうですね。ただ本日は貴族ではないです。どうしても皇后様の力になりたいと言う商人でした」
「そうなんだ」
会ってどうすればいいかは分からないけど回復はしたし会ってみようかな。
「僕一人で会うの?」
「いえ、必ずノエル様を同席させるようにと陛下のご指示です」
「同席?」
護衛ではなく同席ってどう言う意味だろう。ノエルにも話があるんだろうか。
「じゃあノエルにも午後から予定しておいて貰って」
「畏まりました」
食事を済ませた僕は、メイドに身支度を整えて貰い謁見室に向かった。ドアの前にノエルが立っていて丁寧なお辞儀をしながら僕を皇后様と呼ぶ。
仕方ないけれど寂しさが胸に広がる。
「今日は宜しく」
「はい。お任せ下さい」
重いドアを開け中に入ると見知った男が椅子から立ち上がり深々と頭を下げた。
「ライナスさん?」
「皇后陛下!勿体無い。ライナスとお呼び下さい」
「いや、え?どうしてここに?」
彼は僕達が教会で暮らしていた時お世話になった商会の主人だ。国一番の規模で貴族に劣らない大富豪だがとても気さくでよく支援物資を寄付してくれていた。
「いやまさか貴方様が皇后陛下とは」
「黙っていてすみません」
「いえ、ご事情がおありだったのでしょう?皇后陛下には怪我をする度に治療して頂きました。私の命の恩人です」
「大袈裟ですよライナスさん」
「そんなことありません。それにあのソードマスターが皇室騎士団の隊長とは。真実を知った時、私たちは国王陛下から処刑されるんじゃないかとハラハラしっぱなしでしたから」
わははと笑いながらそう言うライナスに僕達も思わず笑ってしまう。ほんの少し前の事なのに凄く懐かしい。
僕達はお茶を飲みながら当時を思い出し和やかな雰囲気で話を弾ませた。
「ところで今日は何か用事があったんじゃないですか?」
「あ、そうです。王室に献上したい物がありお伺いしました。まさか本当に会えるとは思いませんでしたが」
名前を出してくれたらいつでも会ったのに。でもそんな人柄がライナスを信用に足る人物だと証明していた。
「こちらをご覧下さい」
ライナスは懐から地図を出しテーブルに広げる。
「国境沿いに近い山?」
「はい。鉱山になります。先日ここから宝石が出ました。品質は最高級ですし掘り進めたらかなりの量になると思います」
「そうなんだ!良かったですね」
「あ、いやこの鉱山を皇后陛下に献上したいと思い権利書をお持ちしたのです」
「え?!どうして?!」
「皇后陛下に有意義に使って頂きたい」
「どう言う事?」
ライナスが言葉を濁したので僕はノエルに尋ねる。
ノエルはしばらく考えてから国庫は財政難ですからと答えた。
財政難?そんな事初めて聞いた。
驚いた僕が問い糺すと今まで皇室を支援していた貴族を立て続けに粛清した事により収入が途絶え、更に辺境地に災害が起こり物資が不足して国庫からかなりの持ち出しがあったのだとノエルは言う。
「国王陛下のやり方は乱暴な部分も多いですが間違っていないと私は思ってます」
「ライナスさん……」
「皇后陛下がいらっしゃるので良い国にしたいと思っておられるのでしょう。これからこの国はもっと豊かになる。その為に少しお手伝いをさせて頂きたいのです」
僕は目先の事しか考えてなかった。皆が豊かに暮らせるようにするのが僕達の仕事なのに。
ルルテラが生まれそして生きていくこの国を子供達に誇れるように。
「ありがとうございます」
僕は丁寧に頭を下げ、ライナスを恐縮させた。
夜になり久しぶりにルドルフが僕の部屋に来た。昼間の話をすると良かったなと笑って頭を撫でられる。
「良かったなじゃないです。僕は何も知らなかったんですよ。この鉱山はありがたく民の為に使わせて貰いましょう」
「ああ、そうだな。特に資金が足りない所を確認しよう」
そう言ってルドルフはベッドに横になった。
「これからおまえが会う貴族や平民はどれもお前に忠誠を誓い力になってくれる相手だ。実際に話して相手を見極めこれから先に役立てるようにな」
「……どうしてですか?」
「おまえは皇后だろう?」
「そうですけど……」
何故だろう。ルドルフの表情に理由はそれだけではない何かを感じる。
「ほら早く寝ろ。まだ完全に回復してないんだから」
「はい、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
十人くらい余裕で寝られそうな大きなベッドの端と端で僕は掛布に包まった。
何とも言えない違和感を枕と一緒に抱えながら。
暇なのでひたすら自分に治癒治療をかけ続けていたら、毒の後遺症どころか背中にあった鞭の跡まで綺麗に消え失せていて驚いた。風呂の度に痛々しい傷跡をメイド達に見せなくて済むようになったから良かったけど。
「皇后様、朝食をお持ちしました」
「ありがとうアーロン」
アデリンの事があってから再びアーロンが僕に付いてくれる事になった。
その分ルドルフが一人で全ての国政を務めなくてはならないので顔を合わす事も随分減った。
「アーロン」
「何ですか?」
「そろそろ後宮に妾とか入らないかな」
「何故です?」
「いや、僕は相変わらずヒートが来ないし。でも跡継ぎは必要でしょ」
「確かに跡継ぎは必要かもしれませんがそんな事を陛下に進言したら即座に切り捨てられますよ。実際この間うちの娘を後宮に、と連れて来た男爵が爵位返納させられました」
「えっ?!そんな事くらいでそこまで?!」
「そんな事くらいではありません。皇后様に否定的な家門は全て要職を外されております」
それは困る。前生のようにそろそろ後宮に妾の一人や二人入れて貰って過去を繰り返して貰わないと。過去の僕にはあんなに冷たかったんだから同じように接してくれればいいのに。
「そんなわけでどの貴族も皇后様に気に入られようと謁見を求めて大騒ぎですよ」
「……やだな」
「そうですよね。なので陛下が吟味して皇后様の予定を立てておられます。実は本日の午後も仮の予定がありますが皇后様のご体調次第なのでどうされるか決めて下さいね」
「予定って貴族と会う予定?」
「そうですね。ただ本日は貴族ではないです。どうしても皇后様の力になりたいと言う商人でした」
「そうなんだ」
会ってどうすればいいかは分からないけど回復はしたし会ってみようかな。
「僕一人で会うの?」
「いえ、必ずノエル様を同席させるようにと陛下のご指示です」
「同席?」
護衛ではなく同席ってどう言う意味だろう。ノエルにも話があるんだろうか。
「じゃあノエルにも午後から予定しておいて貰って」
「畏まりました」
食事を済ませた僕は、メイドに身支度を整えて貰い謁見室に向かった。ドアの前にノエルが立っていて丁寧なお辞儀をしながら僕を皇后様と呼ぶ。
仕方ないけれど寂しさが胸に広がる。
「今日は宜しく」
「はい。お任せ下さい」
重いドアを開け中に入ると見知った男が椅子から立ち上がり深々と頭を下げた。
「ライナスさん?」
「皇后陛下!勿体無い。ライナスとお呼び下さい」
「いや、え?どうしてここに?」
彼は僕達が教会で暮らしていた時お世話になった商会の主人だ。国一番の規模で貴族に劣らない大富豪だがとても気さくでよく支援物資を寄付してくれていた。
「いやまさか貴方様が皇后陛下とは」
「黙っていてすみません」
「いえ、ご事情がおありだったのでしょう?皇后陛下には怪我をする度に治療して頂きました。私の命の恩人です」
「大袈裟ですよライナスさん」
「そんなことありません。それにあのソードマスターが皇室騎士団の隊長とは。真実を知った時、私たちは国王陛下から処刑されるんじゃないかとハラハラしっぱなしでしたから」
わははと笑いながらそう言うライナスに僕達も思わず笑ってしまう。ほんの少し前の事なのに凄く懐かしい。
僕達はお茶を飲みながら当時を思い出し和やかな雰囲気で話を弾ませた。
「ところで今日は何か用事があったんじゃないですか?」
「あ、そうです。王室に献上したい物がありお伺いしました。まさか本当に会えるとは思いませんでしたが」
名前を出してくれたらいつでも会ったのに。でもそんな人柄がライナスを信用に足る人物だと証明していた。
「こちらをご覧下さい」
ライナスは懐から地図を出しテーブルに広げる。
「国境沿いに近い山?」
「はい。鉱山になります。先日ここから宝石が出ました。品質は最高級ですし掘り進めたらかなりの量になると思います」
「そうなんだ!良かったですね」
「あ、いやこの鉱山を皇后陛下に献上したいと思い権利書をお持ちしたのです」
「え?!どうして?!」
「皇后陛下に有意義に使って頂きたい」
「どう言う事?」
ライナスが言葉を濁したので僕はノエルに尋ねる。
ノエルはしばらく考えてから国庫は財政難ですからと答えた。
財政難?そんな事初めて聞いた。
驚いた僕が問い糺すと今まで皇室を支援していた貴族を立て続けに粛清した事により収入が途絶え、更に辺境地に災害が起こり物資が不足して国庫からかなりの持ち出しがあったのだとノエルは言う。
「国王陛下のやり方は乱暴な部分も多いですが間違っていないと私は思ってます」
「ライナスさん……」
「皇后陛下がいらっしゃるので良い国にしたいと思っておられるのでしょう。これからこの国はもっと豊かになる。その為に少しお手伝いをさせて頂きたいのです」
僕は目先の事しか考えてなかった。皆が豊かに暮らせるようにするのが僕達の仕事なのに。
ルルテラが生まれそして生きていくこの国を子供達に誇れるように。
「ありがとうございます」
僕は丁寧に頭を下げ、ライナスを恐縮させた。
夜になり久しぶりにルドルフが僕の部屋に来た。昼間の話をすると良かったなと笑って頭を撫でられる。
「良かったなじゃないです。僕は何も知らなかったんですよ。この鉱山はありがたく民の為に使わせて貰いましょう」
「ああ、そうだな。特に資金が足りない所を確認しよう」
そう言ってルドルフはベッドに横になった。
「これからおまえが会う貴族や平民はどれもお前に忠誠を誓い力になってくれる相手だ。実際に話して相手を見極めこれから先に役立てるようにな」
「……どうしてですか?」
「おまえは皇后だろう?」
「そうですけど……」
何故だろう。ルドルフの表情に理由はそれだけではない何かを感じる。
「ほら早く寝ろ。まだ完全に回復してないんだから」
「はい、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
十人くらい余裕で寝られそうな大きなベッドの端と端で僕は掛布に包まった。
何とも言えない違和感を枕と一緒に抱えながら。
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