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★本編★
三人の行方
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部屋から出るとルドルフは僕をひょいっと横抱きにして自室に向かった。所謂お姫様抱っこって奴だ。僕はハッと我に帰りめちゃくちゃに暴れた。
「大人しくしろ。まだ完全に回復してないだろ」
「もう大丈夫です!早く下ろして下さい!子供扱いは嫌です!」
「子供のくせに本当に面白いなお前は」
くくっと笑いそっと僕を降ろす。その顔は穏やかで前生の彼とはまるで別人だった。
「結婚もしてないんですから二度と僕に触れないで下さい」
「結婚したらいいのか?」
「それはまあ……」
「分かった。早く大人になって戻って来い」
「分かってます!」
何とも言えないモヤモヤした気持ちで僕はルドルフを置いてその場から走って逃げた。
いくら過去が変わったからと言って人格まであんなに変わるものか?容赦のない所は同じだが僕に対する態度がまるで別人だ。
前生で彼が僕の顔を見る時は何かを言い付ける時くらいだった。それはそれは無表情で何の興味もない顔で。
結婚したからには良好な関係を築いて行きたいと歩み寄った昔の僕が馬鹿に思えるほどルドルフは冷たかったのだから。
「何かを企んでいるとしか思えない」
そうは思ってもそれが何か現時点では分からない。様子を伺いつつルドルフの術中に嵌らないようにしなければ。
ルドルフの脅しが効いたのかそのあと特に命を狙われる事も無く僕は忙しい毎日を過ごしていた。なにしろ婚約式の準備はとても大変なのだ。皇太子妃になる者に初めて任される大仕事で衣装やお披露目会の準備等やらなくてはいけない事が沢山ある。どんな食事を用意するか飲み物はどうするか。式服からパーティ服に着替えるタイミングまでそれは多岐に渡る。
「アリス様、招待客のリストを作成しました。ご確認下さい」
「ありがとうアーロン」
当然だが謹慎中の僕の実家はリストから外れている。当日はこの件で招待された貴族達が大騒ぎするだろう。あれだけプライドの高い人達だ二度と社交界に足を踏み入れることは出来ないはず。
盛大にざまぁみろと言いたい。
「ご依頼の件も終わりました。報告致します」
「あ!リカルドとノエルと八雲先生?」
「そうです。八雲様は教師をクビになり教会で暮らしておられました。リカルド様はご友人の元に身を寄せておられご無事です」
「あー良かった!ノエルは?」
「……ノエル様は公爵家の地下牢で監禁されていました」
「えっ?!自分の家の護衛騎士を監禁?!」
「それが……どうも公爵からアリス様を害するよう命令されたらしく」
「そんな……」
「頑として言うことを聞かないノエル様を酷い目に合わせていたようです」
なんて事を!!
「容体は?!今どこに?!」
「八雲様のおられる教会で治癒を受けています。先日ようやく峠は超えて安定されたようです」
「そんな……」
あの屈強なソードマスターをそこまで痛めつけるには相当な拷問が行われたはずだ。僕は怒りのあまり頭が真っ白になった。
「会いに行きたい!」
「今はまだ安静が必要なのでもう少しお待ち下さいと八雲様から伝言を預かっております。必ず回復させるからと」
「でも!」
「ノエル様の事はアリス様が一番ご存じでしょう?」
「え?」
「アリス様が来ればノエル様はどんなに苦しくても痛くても心配かけまいと普段通りに振る舞おうとされる。無理はさせたくないと八雲様の心遣いです」
ああ、そうだ。ノエルはそんな人だ。僕の前では決してつらい顔を見せない。どんなに大変な状況でもいつも平然と僕を守ってくれる。
舞踏会での彼の優しい笑顔を思い出し胸がきゆうっと苦しくなった。
「僕は僕でここでなすべき事をする」
「はい」
溢れる涙をゴシゴシと手で擦った。
「婚約式が終わったら会えるよね」
「はい。会えますよ」
それを目標に頑張ろう。僕は中断していた招待客リストを手に取り作業を再開した。
「大人しくしろ。まだ完全に回復してないだろ」
「もう大丈夫です!早く下ろして下さい!子供扱いは嫌です!」
「子供のくせに本当に面白いなお前は」
くくっと笑いそっと僕を降ろす。その顔は穏やかで前生の彼とはまるで別人だった。
「結婚もしてないんですから二度と僕に触れないで下さい」
「結婚したらいいのか?」
「それはまあ……」
「分かった。早く大人になって戻って来い」
「分かってます!」
何とも言えないモヤモヤした気持ちで僕はルドルフを置いてその場から走って逃げた。
いくら過去が変わったからと言って人格まであんなに変わるものか?容赦のない所は同じだが僕に対する態度がまるで別人だ。
前生で彼が僕の顔を見る時は何かを言い付ける時くらいだった。それはそれは無表情で何の興味もない顔で。
結婚したからには良好な関係を築いて行きたいと歩み寄った昔の僕が馬鹿に思えるほどルドルフは冷たかったのだから。
「何かを企んでいるとしか思えない」
そうは思ってもそれが何か現時点では分からない。様子を伺いつつルドルフの術中に嵌らないようにしなければ。
ルドルフの脅しが効いたのかそのあと特に命を狙われる事も無く僕は忙しい毎日を過ごしていた。なにしろ婚約式の準備はとても大変なのだ。皇太子妃になる者に初めて任される大仕事で衣装やお披露目会の準備等やらなくてはいけない事が沢山ある。どんな食事を用意するか飲み物はどうするか。式服からパーティ服に着替えるタイミングまでそれは多岐に渡る。
「アリス様、招待客のリストを作成しました。ご確認下さい」
「ありがとうアーロン」
当然だが謹慎中の僕の実家はリストから外れている。当日はこの件で招待された貴族達が大騒ぎするだろう。あれだけプライドの高い人達だ二度と社交界に足を踏み入れることは出来ないはず。
盛大にざまぁみろと言いたい。
「ご依頼の件も終わりました。報告致します」
「あ!リカルドとノエルと八雲先生?」
「そうです。八雲様は教師をクビになり教会で暮らしておられました。リカルド様はご友人の元に身を寄せておられご無事です」
「あー良かった!ノエルは?」
「……ノエル様は公爵家の地下牢で監禁されていました」
「えっ?!自分の家の護衛騎士を監禁?!」
「それが……どうも公爵からアリス様を害するよう命令されたらしく」
「そんな……」
「頑として言うことを聞かないノエル様を酷い目に合わせていたようです」
なんて事を!!
「容体は?!今どこに?!」
「八雲様のおられる教会で治癒を受けています。先日ようやく峠は超えて安定されたようです」
「そんな……」
あの屈強なソードマスターをそこまで痛めつけるには相当な拷問が行われたはずだ。僕は怒りのあまり頭が真っ白になった。
「会いに行きたい!」
「今はまだ安静が必要なのでもう少しお待ち下さいと八雲様から伝言を預かっております。必ず回復させるからと」
「でも!」
「ノエル様の事はアリス様が一番ご存じでしょう?」
「え?」
「アリス様が来ればノエル様はどんなに苦しくても痛くても心配かけまいと普段通りに振る舞おうとされる。無理はさせたくないと八雲様の心遣いです」
ああ、そうだ。ノエルはそんな人だ。僕の前では決してつらい顔を見せない。どんなに大変な状況でもいつも平然と僕を守ってくれる。
舞踏会での彼の優しい笑顔を思い出し胸がきゆうっと苦しくなった。
「僕は僕でここでなすべき事をする」
「はい」
溢れる涙をゴシゴシと手で擦った。
「婚約式が終わったら会えるよね」
「はい。会えますよ」
それを目標に頑張ろう。僕は中断していた招待客リストを手に取り作業を再開した。
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