【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy

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★本編★

分からない気持ち

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 陛下の呼び出しから戻ったルドルフは僕の首のアザを見るなりアーロンを連れてどこかへ行ってしまった。再び部屋に戻って来たのは新しく付けられたメイドに散々世話を焼かれヘトヘトになった頃だ。

 部屋に入るなりメイドとアーロンを下がらせたルドルフは僕の隣に座り首に巻かれた包帯を撫でながら話しかけた。

「お前は俺との結婚が嫌ではないのか」
「……嫌ではないです」
「そんな嫌そうな顔をしておいて?」
「……」

 ここで真実を話しても頭がおかしいと思われるだけだろう。僕は黙りこんで俯いた。それを黙秘と取ったのかルドルフはため息をつき立ち上がる。

「婚約式だけ終わったら城から出ても良い」
「えっ?」
「どちらにしても結婚にはまだ早いだろう。お前の覚悟が決まったら戻って来い」
「いいんですか?」
「ああ。婚約式は来月だ。それが済んだらしばらく自由にしてやる」
「あ……ありがとうございます?」

 とんだ拍子抜けだ。どうやってここから出ようかとずっと思案していたのに。ルドルフは何を思ってこんな事を言い出したんだろう。

「教会に戻るのか」
「そうですね。ご存知のように公爵邸に僕の居場所はありませんから」
「それは問題ない。帰りたいなら帰ればいい。公爵達は二度とお前に手出しは出来ないはずだ」
「どう言う意味ですか?」
「それなりの対価を払って貰う予定だからな。処分は保留にしてある」
「対価?」
「お前を傷つけたんだから当然だ。今日は早く寝ろ」

 そう言って部屋を出て行くルドルフを僕は腑に落ちない気持ちで見送った。

 この世で最も僕を傷付けた人がそんな事を言うなんて。予定より早く能力を発現させたからだろうか。そんな小さな変化からこんな事になるなんて思いもしなかった。
 そう言えばリカルドはどうなったんだろう。対価がどう言うものか分からないけれど彼も公爵家の一員だ。連帯責任を負わされているかもしれない。

「アリス様そろそろ夕食です。お召し物を替えましょう」

 ルドルフと入れ替わりに部屋に入って来たアーロンがそう言ってクローゼットから服を持って来る。包帯が見えない首の詰まった物を選ぶのは流石の配慮だ。

「ごめんなさい。食欲がないから今日は食事はいらない」
「……承知しました。では飲み物をお待ちします」
「ありがとう。ところでお願いがあるんだけど」
「何でしょうか?」

 メガネをかけた端正な顔で僕を見上げるアーロン。その誠実な表情は昔と少しも変わらない。

「僕の兄に連絡をとって欲しいんだ」
「兄……バクロ様ですね?」
「いや長男のリカルドの方」
「リカルド様?公にはされていない方がいらっしゃるのですか?」
「公にされていない?」

 それはおかしい。嫡子なのに。

「公爵家にアリス様がいらっしゃる事も誰も知りませんでした。リカルド様も同じような理由で秘匿されているのでは」
「同じような理由って……」

 リカルドも養母の子供じゃないって事?じゃあ僕を助けてくれたのも……。それじゃあ尚更酷い目にあってる可能性がある。

「公爵家にいたリカルドを探して欲しい」
「承知しました」
「それと護衛騎士のノエルと僕の魔法の先生の八雲も。公爵家が処罰を受けるなら彼らが巻き添えを食わないか心配だ」
「すぐに手配します」

 アーロンを通じてこちらは無事だと伝えていたが彼らからは接触はおろか手紙一つなかった事も気になっていたのだ。これを機に公爵家から離れられるよう手伝える事があれば何でもしようと思う。僕に居場所をくれた人達だから。







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