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★本編★
魔法の先生
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生まれてすぐ胸の上に乗せられたルルテラは赤い顔をくしゃっとさせてもぐもぐと口を動かしていた。
ウサギみたいだな。
思わず笑みが溢れる。
するとルルテラもニコッと笑った。
僕は驚いてこの生き物がとても愛おしくなった。
「ルルテラ」
すやすやと眠る瞼に口付ける。
幸せになって欲しい。誰よりも。
「ルルテラ……」
自分の声にハッと目が覚める。
ああ、夢を見ていたのか。
「会いたい……」
呟いてまた涙を溢す。
魔力のことを口にしなければよかった。まさかルドルフがルルテラの力に気付いてないなんて夢にも思わなかった。
彼も僕に匹敵する程の魔力を持っていたはずなのに。
でも大丈夫今度こそ間違えない。
ただ一つの心配は顔も見たく無いルドルフと子供を作れるのかと言う事。
当時はこんな自分を伴侶にと望んでくれたルドルフに報いる事に必死だったし嫌われて侯爵邸に返される事も怖かった。
その気持ちを彼への愛だと錯覚するなんて。
結婚にはまだ七年ある。その間にまずは自分の足で立てるように基盤を固める。
そしてルルテラがお腹に宿った時点で遠くに逃げるんだ。魔法防御を張った家で見つからないように二人で暮らそう。
早く会いたいよルルテラ。
「初めましてアリス。私は八雲と言います」
「ヤクモ?」
「そう。いい発音だね」
父が連れて来た魔術の先生は遠い国から来た若い男性だった。
最初はダンが引き受けると言って聞かなかったけど八雲が現れると尻尾を巻いて逃げて行った。それほど格の違いを感じたんだろう。もう二度と会わない事を祈っている。
「確かに凄い魔力だね。でもまだ卵の状態だ。ゆっくりと孵化させていこう」
僕より十歳ほど年上のその人はエキゾチックな黒髪と黒い目を持った雰囲気の優しい人で僕の緊張はあっという間に解れた。
「魔術には防御と攻撃があるのは知ってるかい?」
座学で分厚い本を前にそう問われて僕は一瞬躊躇した。魔術に関して何の知識もない風に装わなければ怪しまれると思ったから。
「えっと知りません」
けれどそう答えた僕を八雲はクスッと笑った。
「大丈夫。お父さんに報告したりしないよ」
「えっ?」
「アリスからは魔法とは違う不思議な力を感じる。何を知っていてもおかしくないと思うような」
「八雲先生……」
この人は本当に強い力を持った人なんだ。
「実は知ってます……僕はこの先攻撃と防御どちらも使えるようになります。そして僅かですが治癒も」
「そうか。教えてくれてありがとう。じゃあどれも少しずつ訓練していこう」
「はい!」
この人について行けばもっと強くなれる!
期待に胸を膨らませ目の前の本を開いた途端ドアが開き一人の男がズカズカと入って来た。
「リカルド兄さん?」
公爵家の放蕩息子。長男のリカルドがじっと僕を見下ろしている。全く家に寄り付かないので顔を忘れるところだった。僕のことを聞いて後継の座を奪われまいと帰って来たのだろうか。
「親父がアリスと一緒にこの男から魔法を学べって」
吐き捨てるようにそう言うと隣の椅子に乱暴に腰掛ける。魔術師の要素もないのに公爵は何を考えているんだろう。僕を監視する為か。
「そうなのかい?でも個別の方が学びやすいと思うよ。君は午後からの授業でどうかな」
やんわりとした断りという名の八雲の提案にも無言を貫き姿を消す気配はない。仕方なく僕たちは授業を再開した。
ウサギみたいだな。
思わず笑みが溢れる。
するとルルテラもニコッと笑った。
僕は驚いてこの生き物がとても愛おしくなった。
「ルルテラ」
すやすやと眠る瞼に口付ける。
幸せになって欲しい。誰よりも。
「ルルテラ……」
自分の声にハッと目が覚める。
ああ、夢を見ていたのか。
「会いたい……」
呟いてまた涙を溢す。
魔力のことを口にしなければよかった。まさかルドルフがルルテラの力に気付いてないなんて夢にも思わなかった。
彼も僕に匹敵する程の魔力を持っていたはずなのに。
でも大丈夫今度こそ間違えない。
ただ一つの心配は顔も見たく無いルドルフと子供を作れるのかと言う事。
当時はこんな自分を伴侶にと望んでくれたルドルフに報いる事に必死だったし嫌われて侯爵邸に返される事も怖かった。
その気持ちを彼への愛だと錯覚するなんて。
結婚にはまだ七年ある。その間にまずは自分の足で立てるように基盤を固める。
そしてルルテラがお腹に宿った時点で遠くに逃げるんだ。魔法防御を張った家で見つからないように二人で暮らそう。
早く会いたいよルルテラ。
「初めましてアリス。私は八雲と言います」
「ヤクモ?」
「そう。いい発音だね」
父が連れて来た魔術の先生は遠い国から来た若い男性だった。
最初はダンが引き受けると言って聞かなかったけど八雲が現れると尻尾を巻いて逃げて行った。それほど格の違いを感じたんだろう。もう二度と会わない事を祈っている。
「確かに凄い魔力だね。でもまだ卵の状態だ。ゆっくりと孵化させていこう」
僕より十歳ほど年上のその人はエキゾチックな黒髪と黒い目を持った雰囲気の優しい人で僕の緊張はあっという間に解れた。
「魔術には防御と攻撃があるのは知ってるかい?」
座学で分厚い本を前にそう問われて僕は一瞬躊躇した。魔術に関して何の知識もない風に装わなければ怪しまれると思ったから。
「えっと知りません」
けれどそう答えた僕を八雲はクスッと笑った。
「大丈夫。お父さんに報告したりしないよ」
「えっ?」
「アリスからは魔法とは違う不思議な力を感じる。何を知っていてもおかしくないと思うような」
「八雲先生……」
この人は本当に強い力を持った人なんだ。
「実は知ってます……僕はこの先攻撃と防御どちらも使えるようになります。そして僅かですが治癒も」
「そうか。教えてくれてありがとう。じゃあどれも少しずつ訓練していこう」
「はい!」
この人について行けばもっと強くなれる!
期待に胸を膨らませ目の前の本を開いた途端ドアが開き一人の男がズカズカと入って来た。
「リカルド兄さん?」
公爵家の放蕩息子。長男のリカルドがじっと僕を見下ろしている。全く家に寄り付かないので顔を忘れるところだった。僕のことを聞いて後継の座を奪われまいと帰って来たのだろうか。
「親父がアリスと一緒にこの男から魔法を学べって」
吐き捨てるようにそう言うと隣の椅子に乱暴に腰掛ける。魔術師の要素もないのに公爵は何を考えているんだろう。僕を監視する為か。
「そうなのかい?でも個別の方が学びやすいと思うよ。君は午後からの授業でどうかな」
やんわりとした断りという名の八雲の提案にも無言を貫き姿を消す気配はない。仕方なく僕たちは授業を再開した。
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