【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy

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★本編★

父の怒り

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 夕方
 ベスが青い顔で部屋に駆け込んで来た。

「アリス様!旦那様がお呼びです。とても怒ってらして……酷い目に遭わされるんじゃと心配です。体調が優れないとお伝えしましょうか」
「大丈夫だよベス。そんな事してもあの人には通用しないから」
「そうかもしれませんが……」
「ちゃんと話をしないといけないから行ってくるよ。殺されるわけじゃないし」

 そう、一度死んだんだ。大抵の事は怖くない。
 不安顔のベスと別れ久しぶりに屋敷に戻る。ああここは暖かいな。こっちに引っ越せないかななんて呑気なことを考えながら。

「アリス!」
「なんでしょう」

 いつものようにビクビクしない僕が意外だったのか父の勢いが削がれた。

「お前魔術を使ったらしいな」
「はい」
「なんで魔力を持っている事を黙ってたんだ!」

 父の横では養母が目で人を殺せそうな勢いで僕を睨みつけている。

「僕も知りませんでした。まさか自分に魔力があるなんて。たまたまこのチョーカーを外した時に気付いたんです」
「何だと?」
「このチョーカー。ダンに見てもらって下さい。魔力を抑える石が付いてる」

 僕はするりと首から外した首輪を父の目の前にぶら下げた。

「なに?!」
「何であんたにそんな事がわかるのよ!あなたこれは何かの間違いよ!」

 養母の顔色が目まぐるしく変わる。

「魔力でわかるんです。あ、お母様は魔術師じゃ無いので分からないですね」

 しれっとそう言うと倒れそうなくらい顔を真っ赤にして喚き出した。

「うるさい!少し黙ってろアリアドネ!ダンどうなんだ?このチョーカーにそんな力があるのか?」

 チョーカーを手に取ったダンは暫くそれを眺めた後重々しく頷く。

「そうか。アリアドネ話は後だ。アリスこっちへ来い」

 そう言われて素直に父の側に行く。

「ダン。もう一度アリスの魔力計測をしてくれ」
「はい。アリス様こちらに手を」
「手に触らないと分からないのですか?高位魔法使いなのに?」
「ぐっ」

「アリス!黙って言うことを聞け!」

 それでも手を差し出さない僕にダンは頭に手をかざす事で確認することにしたらしい。少しも近づきたく無かったのでほっとした。

「公爵様……これは」

 声を上擦らせたダンは真っ青だ。
 そりゃそうだろう。発現した僕はダンなんて足元にも及ばない最高位の魔法使いになるんだから。

「まだ訓練が必要ですがアリス様はとんでもない才能をお持ちです」
「本当か!」
「はい」

 ダンの口調が少し悔しそうなのは僕を弄ぶ楽しみを奪われたからだろう。間に合って本当に良かった。

「やはりあの女の魔力は本物だったのか。俺は分かってたぞ。アリスきちんと先生を付けてやる。お前の力でこの公爵家を盛り立てろ」

「はい」

 嫌に決まってる。
 けれど今の僕は魔力に覚醒したばかりの何も出来ない十歳の子供だ。ここで父の機嫌を損ねて酷い目に遭わされるより大人しく従うふりをする方が得策だ。


 この家を利用して強くなろう。
 僕はそう心に決めた。


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