【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

★本編★

死に戻り

　その記憶は七歳の時。

　僕は父である公爵とその正妻である養母が見守る中で魔力検査を受けていた。

「終わりました公爵様」

　高位魔術師のダンが厳かに告げる。

「どうなのだ。アリスに魔力は宿っているのか」
「残念ながら微量の魔力もございませんでした」
「そうか」

　特段落胆することもなく父が呟く。その隣で養母が唇に弧を描き、嬉しそうに俺を見て笑った。

「ほらね？やっぱりあの平民の女が魔術師なんて嘘だったでしょう？」
「そうだな」

　……あの女とは僕の母だ。嘘も何も母は何一つそんな事言ってない。魔力があると噂を聞いた父が無理やり拉致して側室にしたのだ。子供を作るためにこの屋敷に軟禁された母は2年前に病気で亡くなるまでずっと泣いていた。

「もうこの子はいらないわよね」
「そうだな」
「お待ち下さい」

　静かに事の成り行きを見ていたダンが声を上げた。

「なんだ」
「この子はオメガにございます。この子の母親からは微量ですが確かに魔術の気配がありました。それならこの子の産む子供に魔力の宿る可能性がございます」
「なるほど」
「そんな事どうでもいいわ！さっさと捨てましょうよこんな子！」

　きいきいと吼える養母（……いや育ててもらった記憶は一切ないが）の怒りをよそにダンと父上は何やら相談を始めた。こんな場所でも優しくしてくれるメイドはいるし捨てられたら行くところが無い僕は黙って事の成り行きを見守る。
　そうしているうちに離れの一番古い部屋に外から鍵をかけて僕を監禁する事が決まりその日から一人ぼっちで過ごすことになったのだ。





　ああどうしてこんな事を思い出してるんだろう。振り返ると自分の人生は碌な事が無かった。そんな中でたった一つだけルルテラとの出会いが唯一の幸せな思い出だ。

　……ルルテラ？

　そうだ！ルルテラはどこだ？！慌ててベッドから飛び降りたが思った以上に高さがあり頭から床に倒れ込む。

「あれ……？」

　床にへたり込んで両手を見ると自分の手が子供のように小さくなっているのに気付いた。

「なんで？全部夢だったのか？」

　いやそんなはずはない。あんな悪夢があるだろうか。しかも出産の痛みの感覚もまだ生々しくこの体に残っている。

　一体何が起こったのか首を捻っていると手首のブレスレットが目に入った。鮮やかな青だった物が真っ黒になりヒビまで入って今にも割れそうだ。これは母が生前僕にくれた物だった。もしかして魔力が宿っていてそれが僕を助けてくれたのだろうか。

「母さん」

　そう呼びかけた途端、ブレスレットがパラパラと砕けすうっと消えてしまった。
　やはりそうなんだ。

　勝手に涙が溢れポタポタと床に散る。


「ありがとう母さん。今度はルルテラを死なせたりしない。二人で一緒に幸せになるよ」

　僕はそう呟いて窓の外の白み始めた空を見上げた。