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8章 魔道国

第479話 狙いは……

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View of ナレア

「まぁ、私は神話に関して、数年前まで眉唾物だと思っていたのですがね。とあることを切っ掛けにあながち嘘ではないのかもしれないと思うようになりました。既に滅んだ神を、人の手によって復活させられるかどうかは知りませんし、興味もありません。」

肩をすくめるキオルからは、檻に対する蔑みのようなものを感じるのう。

「何故数年前に考えを改めたのじゃ?お主の態度を見る限り神なんぞどうでもいいと思っておるようじゃが?」

「えぇ、それはまぁ単純な話ですよ。既に滅んだとされている神の魔力を手に入れてしまいましたから。目の前に持ってこられては信じる他ないでしょう?まぁ、檻の仕事の一環として神について調べていた時に、うっかり当たりを引いてしまったと言う訳です。」

数年前に神の魔力を手に入れたのう。
物凄く心当たりのある話じゃな......こやつ、レギ殿だけではなくケイにもぶっ飛ばされることになりそうじゃ。
まぁ、リィリの事だけでも、妾を含め最低三発は覚悟してもらうつもりじゃが。

「実に素晴らしい魔力でしたよ。質も量もとんでもない物で、神の魔力と言われて納得できるだけのものでした。とりあえず、戦利品は組織に隠蔽させてもらい......実働部隊には左遷してもらいましたがね。口封じをするまでも無く大半が発狂してしまいましたし、残った者達も正常とは言い難い状態でしたから特に問題はありませんでした。」

実働部隊というのはアザル達のことじゃろうな......神域に普通の人間が入ったら精神をおかしくすると聞いておったが......中々に凄惨なことになったようじゃな。

「その神の魔力のお陰で、今まで動かすことの出来なかった古代の魔道具を動かせるようになったので、色々と研究も捗りました。」

「......その神の魔力とやらはどうしたのかの?使い切ったのかの?」

「流石のナレア様も興味がおありですか。今は私と、向こうにいる二人が分けて使っていますよ。無くなる気配はまだないので非常に重宝しています。結構実験に......。」

そこまで言ったキオルが一瞬何かを思い出したかのように動きを止めた。
しかし妾が疑問を挟む前に再起動したのでそのまま放置する。

「話が逸れてしまいましたね。まぁ、そう言う訳で檻の言う所の神も本当にいたのではないかと言う訳です。少なくともそれに準ずる存在が居た事だけは確かですしね。現存していることに驚きましたが......正直魔力の一部を見ただけでも、迂闊に触れるのは危険すぎると思いますよ。」

「そう言いながら、龍王国で聖域を狙ったのはお主ではないのかの?クルストのヤツが龍王国におったじゃろ。」

「えぇ、あの頃はまだ無尽蔵の魔力が得られる程度にしか考えていませんでしたからね。龍王国の信奉する龍と言う存在ももしかしたら本当にいるのかもと思い、あわよくば程度にちょっかいを掛けてみましたが......確か阻止したのはあなた方でしたね。」

妾が頷くとキオルが破顔する。

「顔も合わせずにここまで関わりがあるという事は、私達には奇妙な縁があるみたいですね。あぁ、そんな嫌そうな顔はしないでください。さて、話を戻させていただきますが......神話の大戦、何体かの神が死ぬことになったらしいのですが、その死がきっかけで世界にダンジョンが生まれたという説があるのです。」

......何故その事を知っておる。
いや、神獣の事もそうじゃが......あまりにも情報が正確すぎるのじゃ。

「まぁ、説といいますか......檻が隠匿している遺跡にそのような記述があるらしいのですよ。私もその遺跡には足を踏み入れた事はありませんがね。」

「それは興味深い話じゃな。」

「残念ながら私も聞きかじっただけですので、その遺跡に関してはあまりお教え出来ることはありませんが......その滅んだ神を信奉していた者達によって作られた遺跡らしいですね。なので、その神を復活させるにはどうすればいいかというような研究がその遺跡ではされていたそうです。」

「つまり、その遺跡から発掘された情報を元に、件の神を復活させようとしているのが檻という組織というわけじゃな?」

妾が纏めるとキオルが笑みを浮かべながら頷く。
ダンジョン絡みの神と言えば魔神の事であろうが......世界を滅ぼしかけた者を信奉するとはのう。
いや、恐れるあまりに信奉してしまうというのはよくある事じゃが......何も復活させてまで......そこまで行くともはや意味が分からぬのじゃ。
それとも御母堂たちが知らぬだけで、魔神にも加護のようなものがあったのかのう?

「ダンジョンを放置すると周囲一帯の魔力を吸い上げ、、魔力の枯渇した不毛地帯としてしまうのは御存じだと思いますが......檻はその先に神の復活があると考えているのです。」

ダンジョンの魔力......やはり魔神の事に間違いないようじゃが......そんなことで復活するのかのう?

「私も興味が無かったのでどの程度信じられる情報かはわかりませんがね。一先ず檻の目的については御理解いただけたと思います。では本題である、魔道国で何をしようとしていたかをお話ししましょう。」

「......。」

「檻は魔道国の王都をダンジョンにしようと画策しています。」

「......なんじゃと?」

王都を......ダンジョンに?
それはつまり......。

「......檻は任意の場所をダンジョンにすることが出来るという事かの?」

「まだ実験段階ですが......そう遠くない内に出来るようになりそうですね。」

......恐ろしい話じゃ。
そのような技術を確立する前に檻を根こそぎ滅ぼしてしまいたい所じゃが......恐らく無理じゃろうな。
実験出来る程に進んでいるという事は、ある程度理論は完成しているという事じゃろう。
一度そこまで行ってしまえば......無かったことにするのは相当に骨じゃ。
しかも相手は地下組織......どう考えても無理じゃな。

「どのようにしてダンジョンを発生させるか聞いてもいいかの?」

「えぇ、それを伝えねば防ぐことも出来ないでしょうしね。切っ掛けになったのは私の作った魔道具なので申し訳ない限りではありますが......。」

......一欠けらも申し訳なさそうにしておらぬではないか。
しかし、そんな妾の視線を意に介さずキオルは話を続ける。

「ダンジョンを攻略した際に、ダンジョンを構成する魔力が渦巻き、霧散しますよね?あの魔力を勿体ないと思ったのが切っ掛けですかね。まぁ、神の魔力を奪うために作った魔道具でダンジョンの魔力を吸収することが出来た事が僥倖だったわけですが。」

創った魔道具どころか、使ったのもこやつではないか......。

「その魔道具でダンジョンの魔力を吸収させて......それでどうするのじゃ?」

「吸収させた魔力を解放することで人為的に魔力だまりを創る事が出来るのです。ただ、一つの魔道具ではダンジョンを構築する程の魔力だまりにはなりません。しかも一つのダンジョンに複数の魔道具を設置したとしても吸収出来た魔力の総量は一つの時と殆ど変わらないと来たものです。」

「つまり......複数のダンジョンを攻略して魔力を吸収する必要があるということかの?」

「そう言う事になります。」

「しかし、それでは本末転倒ではないのかの?檻はダンジョンを増やしたいのじゃろ?」

複数のダンジョンを潰して一つのダンジョンを作るのでは割に合わないと思うのじゃが。

「そうですね......それについては......ダンジョンについて私達の知っている話をしなければなりませんね。」

そう言ってキオルはこちらを見据えてくる。
檻とは、どれだけ妾達の知らない世界を知っているというのか......。
その知識の深さに、そして思想に......妾は悍ましい物さえ感じた。

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