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8章 魔道国

第445話 パスワードは頭の中に保管

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『はい、到着―。ここが鳳凰が召喚した召喚物が封印されている場所だよ。』

そう言って妖猫様が立ち止まった場所は......他の場所と変わらないただの平原。
召喚物のようなものは見当たらないけど......。

『あはは、まぁ、空間魔法を使ってちょっと見えなくしているから分からないだろうけどねー。』

妖猫様が笑いながら種明かしをしてくれる。
......なるほど、神域の外から中の様子が分からない様にしているのも同じ原理だろうか?
隠すだけなら仙狐様の幻惑魔法並みに気付かせない様に出来るみたいだな。

「なるほど......物を動かしたり、隠したり......色々なことが出来るのですね。」

『そうだねぇ。空間魔法は直接攻撃したり出来ないけど......便利なことは色々出来るねぇ。』

「攻撃は出来ないのですか?」

俺のイメージでは空間を切り裂くみたいな......防御不能攻撃とか出来るのかと......対人では恐ろし過ぎて使い処が無さそう......とか考えていたけど。

『うん。あーところでケイ君。魔法の話もいいけどー、先に召喚物を確認してもらってもいいかなー?』

「す、すみません、妖猫様。」

しまった......空間魔法って物凄く楽しみにしていたから、つい前のめりになってしまった。
あ、妖猫様だけじゃなく、ナレアさんも苦笑している。
いや、今回は僕でしたけど......ナレアさんもかなり耳が大きくなっていたと思いますよ?

『あはは、天狼から聞いていた通りだねー。魔法に物凄く興味を持っているって......憧れていると言ってもいい感じだって彼女は言っていたよ。基本的に落ち着いた雰囲気なのに、魔法の事になると随分と幼くなるって。』

うぅ......母さんに色々と教えてもらっていた頃は魔力操作が出来なくって、ことある毎に魔法が使いたいって言い続けていたからな......。
恥ずかしい。
妖猫様とナレアさん......シャルやファラにまでなんか生暖かい目で見られている。
心なしかマナスも......。

『まぁ、魔法の話は後にして、そろそろ封印を解くよー。あ、封印って言っても、見えなくしてある物が見えるようになるだけだから安心してね。いきなり爆発したりはしない......と思うよー。』

何故か妖猫様が不安を煽ってくるのだけど......まぁ、大丈夫だろうけどさ。

『......あ。』

......今、妖猫様『あ。』って言った?
思わず俺が妖猫様の方を妖猫様の方を見ると、さっと目を逸らされた。
いやいや......冗談ですよね?
いくら何でも妖猫様がそんなフラグ回収的なお約束なんかするはずがない......。
ですよね!?
妖猫様!?
そんな俺の懇願にも似た視線を受けつつ妖猫様が封印を解き、俺達の目の前に空中に固定された四角い物が現れる。
爆発したりは......しないようだ。
しっかりと空中に固定されているみたいだし、大丈夫そうだ......やはり冗談だったみたい、だね?
俺がもう一度妖猫様の方に視線を向けると......ペロリと舌を出した妖猫様と目が合った。
中々心臓に悪い冗談だったけど、まぁいいか......俺は若干ほっとしながら召喚物へと視線を戻した。

「......これは、箱ですかね?」

「箱に見えるのう。」

『取っ手もついているし、カバンって可能性もあるよねー。』

サイズ的には小さめの旅行鞄ってくらいだけど......金属製っぽいな。
留め具のようなものもついているし、入れ物っぽいけど......ノートパソコンのように開いて使うタイプの機材と言う可能性も否定できない。

「もしかしたらカバンの形をした機械と言う可能性もありますけど、問題は......。」

俺は色々な角度から空中に固定された箱を観察する。
恐らくその箱の底部であろう場所に、ラベルのようなものが張っているの見つけた。
しかし、残念ながらそこに書かれている文字は俺には読めなかった。

「うーん、ここに文字が書いてあるようなのですが......ちょっと僕は知らない文字ですね。」

『んーそっかー。ケイ君の居た世界の文字でもなかったかー。』

「必ずしもそうとは言えませんが......僕の居た世界は国が相当多かったので知らない文字の方が多いのですよね。ただ、少なくとも僕の知識にある文字出ない事だけは確かです。」

『そっかー。じゃぁ中身は分からず仕舞いか。まぁ、予想通りと言えば予想通りだったけど。』

妖猫様があまり残念そうじゃないのは、箱を見ただけで中身が分かるわけないと思っていたからか。
せめてあの文字が読めたら可能性はあったかもしれないけど......シリアルナンバーとかの可能性もあるしなぁ。
まさかパスワードを書いて張っているとは思わないけど。
これは魔神を倒すことの出来るもののはずだし......箱を開けたら、大爆発とか、猛毒散布とか、ウィルス散布とか、ブラックホール発生とか、世界を覆いつくす粘菌が無限増殖していくとか......あるかも知れない。
まぁ、何にせよ魔神が居ない以上、訳の分からない物はこのまま永遠に封印しておいてもらいたい......神獣のお歴々と本来の持ち主には申し訳ない話だとは思うけど。

『中身が分からない以上、ここの封印も解くことは出来なさそうだねー。ささっと片付けよー。ところで、ケイ君は天狼の所の封印を解くんだよね?』

早々に召喚物を封印しながら妖猫様が小首を傾げながら聞いてくる。
一瞬で姿の見えなくなった箱の事はもうどうでもいいらしい。

「はい。空間魔法の練習を積んでからになりますが、いずれ封印を解きたいと思っています。」

『元々ケイ君の持ち物と分かっている天狼の所は安心だね。武器とかじゃないんでしょ?』

「はい、日用品ですね。生活必需品と言えるかもしれないくらい、僕の世界では普及しているものです。」

スマホじゃなくってガラケーの人もまだいると思うけど......殆どの人が携帯は持っていると思う。

『不思議だよねー。ケイ君の世界の日用品って殺傷能力が高いの?』

「いえ......鈍器にすらならないと思います。」

まぁ......社会的に殺すとかなら使えるかもしれないけど......魔神を社会的に殺してもな......。
意外と世間体を気にするタイプだったかもしれないけど......余計暴れまわりそうな気がする。

『ってことは......鳳凰が召喚したのはやっぱりケイ君だったってことだよねぇ。』

「それは......魔神に魔法を邪魔をされたせいで、僕になってしまったのではないかなぁと考えているのですが。」

以前......母さんの神域で初めて召喚魔法の事を聞かされた時に、そんなことを考えた気がする。

『なるほどーそういう考え方もあるかー。』

「神獣様はおろか、自分の眷属にも負けるくらいですからね。僕を呼んだところで何も出来ずに死んでいたのは間違いないかと。」

呼び出されただけで死んでいるし......。
この世界に来てから神子になって魔法を使えるようになったりはしたけど......呼び出された時点で魔神を倒せなければ意味はないからね。

『そう考えると召喚されるのが随分と遅くなったのは不幸中の幸いだったね。下手に早く呼び出されていれば、魔神もろとも爆発で終わりだったわけだし。』

召喚された直後、召喚主と敵もろとも爆死って意味不明過ぎるな......。
これ以上ないくらい意味のない死に方かもしれない。
母さん達の為にも、そんな死に方をしなくて良かった。
まぁでも、母さんがいない場所に出てきた時点でアウトだったわけだから、爆死でもなんでも一緒か。

「色んな偶然に助けられて生きていると思うと、今生きていること自体が奇跡のように思えます。」

『そうだねー。いや、ほんと良かったよー。そして、これからもケイ君がしっかりとこの世界で生きていける様に、空間魔法の事を教えておこうか。』

「ありがとうございます。よろしくお願いします!」

召喚物の確認も終わったことだし、ついにお楽しみの時間だ。
どんなことが出来るのか......あぁ、楽しみだ。
本当に楽しみだ。

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