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8章 魔道国
第421話 報告
しおりを挟むレギさん達が合流した後、俺達は食事を済ませて俺が借りている部屋に場所を移していた。
「......あれ?ここ一人部屋じゃないの?」
何故か部屋に入ったリィリさんがキョトンとしている。
「あ、当たり前じゃろうが!」
ナレアさんがリィリさんに食って掛かるようにして言う。
あぁ......まぁ......その件につきましては、思う所が全くなかったといえば嘘になる気がしないでもないというか......。
因みにレギさんはそれがどうかしたのか?って感じだ。
「まぁ、椅子と......ベッドがあるので適当に座って下さい。とりあえず下で出来なかった近況報告からしましょう。」
そう言ってテーブルをベッドに寄せた俺はそのままベッドに座る。
シャルとマナスは俺の肩から降りてそれぞれベッドの上で寛ぎ始める。
まぁ、マナスは寛いでいるかよく分からないけど......シャルは体を丸めているので分かりやすい。
レギさんは持っていた軽食や飲み物の乗ったお盆をテーブルに乗せて椅子に座り......ナレアさんは少し離れた位置に置いてあった椅子をテーブルの傍に持って来て......リィリさんに奪われる。
「「......。」」
ナレアさん達は無言で見つめ合っているけど......これは相当揶揄われること確定だな。
暫くリィリさんを見ていたナレアさんはため息をつくと俺の横に腰掛ける。
「俺達の方は特に何もなかったからな、精々ファラが調べた範囲では神域の反応はなかったってくらいか?」
「そうだねー。ナレアちゃん達は色々あったみたいだけど、こっちは平和だったかなー。」
リィリさんが非常にニヤニヤしながら俺達を見てくる。
まぁ、ナレアさんがリィリさんに話しているのだろうし、今更隠すこともない。
というかそもそも隠すつもりは無かったけど......。
ナレアさんがこちらをちらりと見てきたので、俺は軽く笑みを返した後レギさんの方を向く。
「レギさん。」
「どうした?改まって。何か問題があったのか?」
「いえ、問題ではありませんが、報告があります。」
報告と言う言い方をしたからかレギさんが少し真剣な表情に変わる。
「ナレアさんとお付き合いすることになりました。」
「おめでとう!」
「......。」
やや食い気味に祝福の言葉をくれるリィリさんと何故か硬直してしまったレギさん。
「ありがとうございます。リィリさん。」
「流石ケイ君!やる時ははちゃんとやるね!」
「......。」
リィリさんは満面の笑みを浮かべながら祝福してくれるが、レギさんは何やら考え込んでしまっている。
「それで、それで......ケイ君はナレアちゃんになんて言ったの?」
「えっと......すみません。緊張しまくっていたので......よく覚えていないのですが......ずっと傍に居たいといった感じの事を......。」
「えー、そこはちゃんと覚えておいて欲しかったなぁ。ナレアちゃんは?覚えてるよね?」
「......覚えてはおるが......アレは妾だけが覚えておればいいのじゃ。」
話を振られたナレアさんがリィリさんから顔を逸らしながら言う。
若干顔を赤くしているのが......ちょっと可愛い。
「わー、レギにぃ聞いた!?見た!?ナレアちゃんが可愛いよー!」
「お、おう。あ、いや。ケイ、ナレア、おめでとう。二人がそんなことになるとは思ってもみなかったぜ。驚いた。」
リィリさんに肩をバシバシと叩かれて硬直から戻ったレギさんが、ぎこちなさを感じさせながらも祝福してくれる。
「ありがとうございます、レギさん。」
「そんな言葉を失う程驚くことじゃないでしょー?」
「いや、驚くだろ。突然だぞ?」
......突然......だろうか?
自分で言うのもなんだけど......ここ最近......特に魔道国に入る直前辺りまでかなりギクシャクしていたし......それはレギさんも気づいていたから声かけてくれていたんだと......。
「はぁ......だからこの前も言ったでしょ?レギにぃはやっぱり駄目だって......。」
「......それはどういう......ん?確かにその台詞、この前聞いたな......。」
レギさんは心当たりがあるのか、記憶を辿るように首を傾げる。
「確かケイ達が喧嘩をしてて......それでヘイル達の話に......そう言えば途中でヘイル達が付き合っているみたいな話になって......んん?」
その様子を見ていたリィリさんが半眼になりつつため息をつく。
リィリさんはレギさんの様子が相当不満なようだ。
まぁ、確かにちょっとレギさんはその手の話に鈍すぎるけど......。
「まぁ、レギにぃの事は置いといて......ケイ君はナレアちゃんのどこを好きになったのかな?」
「......それは非常に難しい質問ですね。」
リィリさんの質問を聞いて、ナレアさんがこちらをちらちら見ているのが気になる。
こういうのはスパッと答えることが出来た方が良いのだろうけど......非常に難しい質問だ。
何と言えば正解なのだろうか......?
......いや、正解を答える質問じゃないな......思ったことを素直に言うべきだ。
「......やっぱり何処がって言うのは難しいですね。優しい所や面倒見のいい所であったり、可愛らしい所であったり、頼りになったり博識であったり......勿論見た目もですが......うーん、上げていくと間違ってはいないとは思うのですが、何か間違っている気もするのですよね......。ナレアさんだからとしか言いようがないですね。」
言葉にすると何かしっくりこない感じがするけど......ナレアさんだからっていうのが一番正しいとは思うのだけど......何処が好きって質問の答えとしては間違っている気がするな。
「そ、そうか......。」
何かレギさんが気まずそうに視線を逸らすのを見て......自分の言ったことを実感して恥ずかしくなってきた。
い、いや......今は恥ずかしがるべきじゃない。
俺はナレアさんの方を見るが......耳まで真っ赤になって俯いてしまっている。
「うーん、ちょっと理屈っぽいというか回りくどいというか......でもまぁ、ケイ君っぽいね!」
......これは褒められてないけど、ぎりぎり合格くらいだろうか。
「さてさて、じゃぁ次はナレアちゃんの番だよねぇ。」
「......。」
ナレアさんは俯いたまま何も言おうとしない。
......まぁ、若干、ナレアさんから聞きたいなぁと思わなくもないけど......。
「ねぇねぇ、ナレアちゃん......ケイ君も聞きたそうにしてるよー?」
物凄くニヤニヤしながら声をかけるリィリさん。
次の瞬間、勢いよく顔を上げたナレアさんに睨まれる。
顔は真っ赤で、今にも泣きそうな感じだったけど......思わず顔がにやけてしまう。
しかしナレアさんが口を開こうとした瞬間、シャルの声が聞こえてくる。
『ファラが到着したようです。』
......物凄くナレアさんから視線を外したくないけど......流石に一生懸命働いて来てくれたファラを放置するわけにはいかない。
「ありがとう、シャル。皆さん、ファラが戻って来たみたいです。」
そう言って俺はベッドから立ち上がり、窓を開く。
この宿は窓もガラスが嵌め込まれているな......この世界の宿では初めて見た......今までも別に安宿ってわけじゃなかったと思うけど......。
窓を開けて振り返ると、リィリさんはまだ何やら言いたげだったけど、流石に俺と同じように考えたのか特に不満は口にせずテーブルに置かれた飲み物を手に取っていた。
「......流石にファラでもそこまで情報は集められていないだろうな。」
先程まで落ち着かない様子を見せていたレギさんが咳払いをした後、話を始める。
「流石に街に来てまだ半日どころか四半日も経っていませんからね......部下を少し作って、情報網を作り始めたってくらいじゃないですか?」
いくらファラでも部下になるように説得をするには時間が掛かるだろうし、情報を聞くのも時間がかかる。
どれだけ効率よく動こうとも限界はあるはずだ。
俺の予想では、王都の基本的な情報と......部下を何匹か従えることが出来たとかってところだ。
まぁ、二、三時間の成果とはしては物凄いと思うけど......ファラならこのくらいやれそうだから怖い。
そんなことを考えていると、俺が開いた窓からファラが姿を現した。
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