329 / 528
7章 西への旅路
第328話 理解できていない訳で
しおりを挟む『ふむ......何やら面白そうな話をしておるのう。』
俺がどう説明したものかと頭を悩ませていると、魔道具からナレアさんの声が聞こえて来た。
『お?ナレアか。帰ってきていたのか?』
『うむ、今しがたな。ノーラとリィリは土産をグルフに食わせておる。』
『お前はいかなくて良かったのか?』
『うむ、まぁ......そうじゃな。』
レギさんの問いかけに、何となくナレアさんの言葉が歯切れ悪い感じはするけど助かった。
『まぁそれよりも先程の話じゃが......魔物の正体が分かったのかの?』
「いえ、正体はまだ調べている所です。ただ少し気になることがあって、レギさんに相談していた所なのですが......。」
『ふむ?アンデッドと聞こえたが......。』
「えぇ。まず最初に魔物の事を目撃していたネズミ君がいたので、その子からの聞き取りで分かった内容を伝えておきますね。」
俺は先程レギさんに説明したものと同じ内容をナレアさんに伝える。
『なるほどのう......すまぬが、妾も心当たりはないのう......それでケイはアンデッドと睨んでおるのかの?』
「睨んでいると言うか......霊体って分かります?」
『霊体......いや、分からぬのう。どういったものなのじゃ?』
「う......ナレアさんもご存じないですか......困ったな......。」
ナレアさんが分からないってことは、幽霊系の魔物はいないってことのような気もするけど......いや、違うその結論に至る前に、幽霊的な物を俺が説明出来ないといけない。
『説明しにくいのかの?』
「そう、ですね......はっきりとこういった物って言う説明が出来ないのですよね......概念というか抽象的というか......そう言った感じなんですよね。なんか、こう......ふわっとしたものと言いますか......。」
いや、駄目だ。
何一つ具体的に説明できない......なんて言えばいいのだろう?
『ふむ......推察するに、実体のないアンデッドがケイの世界にはいるということかの?』
「えっと......いる、わけじゃないのですが......想像上の物というか......いや、もしかした居るのかもしれませんが......少なくとも僕は見たことがないです。」
『......なるほど......それは説明のしようがないかもしれぬが......何故そんな話になったのじゃ?』
「えっと......こちらで確認出来た情報から元の世界の話を思い出しました。それで......この世界は僕の元居た世界にとっては想像上の物が多いので、そういった物もあるかな?と思いまして......。」
『まぁ、絶対無いとは言い切れぬが......どういった物かもう少し説明してもらえぬことにはのう。』
「ですよねぇ......。」
レギさんに聞いてみようと息巻いて連絡した自分が恥ずかしい......何一つ説明出来て無いよ......。
何か......何かないのか!?
「あー死んだ人......いや、生き物が死んだ際にその場に想いを残すというか......肉体はなくなってもそこにいると言うか......。」
『体が無いのにそこにいる?謎かけのようじゃな......。』
うーん、自分で言っていても意味不明です。
「......あー精神体って感じなのですが。」
『精神体......体は無いのに意識だけが残っている......と言った感じかの?』
「そうです!それです!」
『ふむ......面白い話じゃのう。実際にそういったことが確認されたわけでは無く、想像上の物なのじゃろ?うむ、実に面白い考え方じゃ。死してなお想いを残すか......。』
ナレアさんの様子はこちらからでは見えないが......ある程度上手いこと伝わった気がする。
いや、俺のぐちゃぐちゃな説明をナレアさんが拾ってくれた感じだけど。
『あーなんとなく言いたいことは分かった気がするが......今回の魔物がそう言う感じなのか?』
俺とナレアさんの話を黙って聞いていたレギさんが俺に問いかけてくる。
そういえば、無駄に説明が長かったな......。
「そういう感じと言いますか......こちらでは僕が言っていたようなことはあるのかな?と思いまして......。」
『......死んでも意識が残る、か......リィリの事を除けば、聞いたことがないな。』
レギさんが少し考えるような雰囲気で言う。
リィリさんか......確かに生前の記憶を残したまま、身体はスケルトンになっていたからな。
身体が動かない間も意識があった的なことは言っていたし......まぁ、本当にずっと意識があったかどうかは分からないとも言っていたけど。
『そうじゃな......何故リィリの身にその様なことが起こったのかは分からぬが......リィリだけが特別と考えるよりは、知られていないだけで他にも同じような事例があると考える方が自然じゃな。』
『だが今回の魔物は骨すらないんだろ?』
「えぇ、そう聞いています。」
『いや、だからこそケイが精神体が......と言う話を持ち出してきたのじゃろ?』
『だが何度かそういう訳ではないって言っていたような......あー、つまりさっきから話がふわふわしていたのは、上手く説明できないから俺達にどう質問したらいいか分からなかったってことか......ふっ。』
『レギ殿......それはいくらなんでも身も蓋もなさすぎじゃ。』
ちょっ、レギさんが噴き出したのですけど!?
ちょー恥ずかしいのですが!?
余計な事ばかり言ってどうもすみませんでした!
『これは仕方ないのじゃ。共通する概念があるかどうかを確認するための話じゃからな。ケイが上手く説明出来なくても無理からぬことよ。まぁ......説明する方法が無いわけでは無いがのう。』
ナレアさん......フォローしてくれてるけど、最後にもっと上手くやれると思うと言われると......へこみます。
「えーっと......とりあえず、お二人の知る限り人が死んだ後に魔物化するという事は、その遺体や骨などが魔力によって動かされるという事であって、人としての何かが残って動くようなものではない。例外としてリィリさんのような存在が確認出来ている以上、完全否定までは出来ない......ってところですかね?」
『うむ、そうなるのじゃ。』
「ありがとうございます。今回の件が例外に当てはまる場合、説明が物凄く困難という事は分かりました。」
『依頼は調査だからな。しっかり報告書はあげろよ。』
「......レギさん、今からでも応援に来てくれませんか?もしくはナレアさん。こういった状況はナレアさんが調べて報告書を作った方が、より素晴らしい物......というか分かりやすい物になると思うのですが......。」
『『......。』』
いつもは頼もしい二人の声が途絶える。
いや、二人ともここに来たくない訳では無いのは分かる。
レギさんは先に別の依頼を受けている以上、来たくても来ることが出来ないだろう。
ナレアさんはナレアさんで、こういった不思議な現象に首を突っ込みたがらない訳がない。
でも恐らくノーラちゃんと約束が色々あるのだろう。
勿論、俺が助けを求めていると言えば、ノーラちゃんはすぐにでも助けにって言ってくれるだろうけど......うん、さっきのは完全に失言だった。
二人とも未知に挑んでいる俺の事を非常に心配してくれているだろうし......俺自身がそんなことを言って余計に心配させるのは、情けなさすぎて申し訳ない。
「すみません、冗談です。ちょっと書類を作るのが嫌だっただけです。報告書を作るときに相談させてもらうので、それ以外は心配しないでください。」
『ほほ、妾は高いぞ?』
「俺は読みやすい書き方くらいしか教えられないと思うがな。」
二人が俺の誤魔化しの軽口に乗ってくれる。
こういう所も、皆が俺を安心して送り出せない原因だよなぁ......もっと考えて口にしないと......。
後、もっと説明上手くなりたい......。
思いつきから行った通信だったが......色々と反省ばかりが募る内容だったよ。
俺は自分に呆れつつ、二人との通信を終えた。
5
お気に入りに追加
1,720
あなたにおすすめの小説
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる