328 / 528
7章 西への旅路
第327話 分からなければ聞けばいい
しおりを挟む『ケイ様。お待たせいたしました、情報収集をしてまいりました。それと件の魔物をこの者が目撃していたようなので連れてきました。』
俺達が足跡の傍で他にも何か痕跡がないか調べていると、ファラが一匹のネズミを連れてやってきた。
目撃者がいたのか......それはかなり助かるな。
『話によるとその魔物は朧気な姿で、夜になると現れるそうです。何をするでもなく、ただ立ち尽くしていて気づいたら消えているそうです。』
「へぇ......。」
蜃気楼みたいな感じってことかな......?
「スライムみたいな感じではないのかな?」
『......スライムではないようです。人型の巨大な魔物だそうですが......その姿がはっきりしないのでそれ以上は分からないとのことで。』
「......なるほど......今聞いた話で心当たりはある?」
『申し訳ございません。私には心当たりはありません。』
『聞いた限りでは私も分かりかねます。力及ばず不甲斐ない限りです......。』
俺が問いかけるとシャルとファラが謝ってくる。
いや、怒ってないからね?
大丈夫だよ?
俺は肩にいるマナスの方を見るけど、マナスも心当たりが無いようで横向きに小さく震えている。
「気にしなくて大丈夫だよ。これから調べて行けばいいのだからね。でも、皆が知らないってなると相当珍しいのかな......ナレアさん達にも聞いてみないとな。」
俺は懐から通信用の魔道具を取り出して話しかける。
「誰か聞こえますか?先ほど目的地に着いて、情報を少し集めたので相談したいのですが......。」
『ケイか?どんな様子だ?』
「レギさんですか?こちらは今の所、特に問題はありません。少し魔物の情報が手に入ったのですが......。」
『聞かせてくれ。』
レギさん以外からは返事が聞こえてこない......というか、レギさん返事がめちゃくちゃ早かったな。
傍に魔道具を置いて、いつでも連絡が付くようにしてくれていたのだろうな。
「まず足跡ですが、先日聞いた通り人型の巨大な魔物の物でした。その魔物の様子を見ていたネズミ君から話を聞けたので、心当たりがあったら教えてください。」
俺はネズミ君から聞いた情報とシャルが感じた魔力の事、シャル達の誰もその魔物について心当たりが案かったこと等を伝えた。
『......なるほどな。すまねぇ、俺もその魔物について心当たりはないな。リィリ達にも聞いておくが、あいつら今街に出ているからな。戻ってきたら聞いておく。』
「ありがとうございます。」
なるほど......二人はノーラちゃんと一緒にお出かけって感じか。
グルフは連れて行ってないよね......?
『シャルが気になった覚えのある魔力って奴が気になるな。』
「そうですね......その線から何か分かるかも知れませんが......もう少し情報を集めて、後は実際にその魔物を見てみたいですね。」
『待っていれば、その内会えそうなのか?』
『......数日に一度、夜に現れるそうです。』
レギさんの質問にファラが情報を教えてくれる。
「時間はかかるかも知れませんが、数日の内に会えそうです。」
『そうか。俺の方もまだ当分は動けないしな。魔物を見つけたとしても無茶だけはするなよ?』
「分かりました。定時連絡は入れるのでまた夕暮れ頃に連絡します。」
『了解だ。何かあったらすぐに連絡しろよ?』
「えぇ、レギさんも頑張ってください。」
『おう。』
俺達は通信を終える。
レギさんの方は問題なさそうだけど......レギさんも心当たりの無い魔物か。
相当でかい魔物だし、特徴は結構あるから......知っていればすぐに思い出すだろうし、新種の魔物かなぁ?
ネズミ君の話では突然現れて、気づいたら消えているってことだけど......まぁ実際に会ってみれば分かるか?
「周辺の調査は進めてくれているのだよね?」
『はい!配下にした者たちによって調べさせています。今の所怪しい物は発見出来ておりませんが......。』
「うん、引き続きお願いするよ。まぁ、巡回している人達も、村の中の足跡以外には不審な物を見つけられてないみたいだし、何もない可能性は高いけどね。」
『承知いたしました。』
「......あ、そういえばナレアさんが遺跡の可能性も考えていたっけ。その可能性も調査してくれるかな?」
「はい。ケイ様のおっしゃられていた井戸の先等も調べさせておきます。」
「うん、よろしくお願いね。シャル、俺達はどうする?」
ファラが俺の返事を聞き駆け出したので、俺はシャルに今後の方針を相談する。
『そうですね......私は先程レギが言っていたように、魔力の事が気になっています。その辺をもう少し探ってみたいと思っています。』
「なるほど。うん、それが良さそうだね。マナスも魔力には敏感だし手伝ってね。」
俺が話しかけるとマナスが大きく弾む。
うん......まぁ、魔力について調べると言っても......完全に二人任せだけどね......俺、そういったこと出来ないし......。
俺の肩から飛び降りたマナスが足跡に近づき、シャルはその周囲を何やら調べる。
流石に役に立たないからと言って、俺がここから離れるわけにはいかない。
俺がこの場を離れようとすれば、必ず二人は俺についてくる。
だから俺に出来ることは、二人の邪魔にならない様に周囲を見渡して、何か偶然発見出来ないか期待するくらいだ。
まぁ、ファラやネズミ君が調べているだろうから、俺が何か発見出来ることはないだろうけどね......。
しかし......どこから歩いて来たわけでもなく、どこに向かうでもない......突然この場に現れて気づいた時には消えている......ね。
......まさか、この村で殺された人たちの怨念が魔物として現れた......とかじゃないよね?
そういえば、魔物の体が霞んで見えるってことだったし......アンデッドの中でも霊体系だろうか?
そう言うタイプの魔物がいるって聞いたことはないけど......レギさんに聞いてみるか?
あれ?
でも足跡があるな......じゃぁ霊体系ではないのだろうか?
実体がなければ足跡は付かないだろうし......まぁいいか、聞いてみよう。
「シャル、少しレギさんと話をしているから何かあったら教えて。」
『承知いたしました。』
シャルに聞いてもいい気はするけど、何やら考え込んでいるようだし今はそっとしておいた方がよさそうだ。
俺は片付けたばかりの魔道具を取り出して呼びかける。
「レギさん、さっきの今で申し訳ないのですが、今いいですか?」
『どうした?何か分かったか?』
「いえ、そう言うわけでは無いのですが、少し聞きたいことが。アンデッド系の魔物についてなのですが......。」
『アンデッド系の魔物?別に構わないぜ?』
「ありがとうございます。アンデッド系の魔物で肉体を持っていない類の魔物っていますか?」
『肉体を?アースの様なスケルトンみたいなやつの事か?』
「あ、いえ肉が無いと言う意味ではなく......実体がないと言いますか霊体といいますか......。」
『......?いや、すまん。どういうことだ?体そのものが無い魔物ってことか?霊体ってのはなんだ?』
逆にレギさんに質問されて思考が止まる。
そもそも霊ってなんだ......?
どう説明すれば......。
魂的な......いや、魂もそもそもよく分からない。
「えーっと何と言いますか......存在していないといいますか......漂っているといいますか......。」
『......すまん。よく分からんが......アンデッドって言っていたな?何かの死体ってことか?』
「いや、死体ではなくてですね......うーん。」
まずい......自分から聞いておいて、何を質問しているのかを説明できないぞ。
しかし、本当にどう説明したら......霊魂とかって概念がないみたいだし......そもそもこの世界のアンデッドって存在が......リィリさんという例外を除けば、死体に魔力が宿って動かされている物って感じだからな......。
3
お気に入りに追加
1,734
あなたにおすすめの小説
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。


無職が最強の万能職でした!?〜俺のスローライフはどこ行った!?〜
あーもんど
ファンタジー
不幸体質持ちの若林音羽はある日の帰り道、自他共に認める陽キャのクラスメイト 朝日翔陽の異世界召喚に巻き込まれた。目を開ければ、そこは歩道ではなく建物の中。それもかなり豪華な内装をした空間だ。音羽がこの場で真っ先に抱いた感想は『テンプレだな』と言う、この一言だけ。異世界ファンタジーものの小説を読み漁っていた音羽にとって、異世界召喚先が煌びやかな王宮内────もっと言うと謁見の間であることはテンプレの一つだった。
その後、王様の命令ですぐにステータスを確認した音羽と朝日。勇者はもちろん朝日だ。何故なら、あの魔法陣は朝日を呼ぶために作られたものだから。言うならば音羽はおまけだ。音羽は朝日が勇者であることに大して驚きもせず、自分のステータスを確認する。『もしかしたら、想像を絶するようなステータスが現れるかもしれない』と淡い期待を胸に抱きながら····。そんな音羽の淡い期待を打ち砕くのにそう時間は掛からなかった。表示されたステータスに示された職業はまさかの“無職”。これでは勇者のサポーター要員にもなれない。装備品やら王家の家紋が入ったブローチやらを渡されて見事王城から厄介払いされた音羽は絶望に打ちひしがれていた。だって、無職ではチートスキルでもない限り異世界生活を謳歌することは出来ないのだから····。無職は『何も出来ない』『何にもなれない』雑魚職業だと決めつけていた音羽だったが、あることをきっかけに無職が最強の万能職だと判明して!?
チートスキルと最強の万能職を用いて、音羽は今日も今日とて異世界無双!
※カクヨム、小説家になろう様でも掲載中

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

修学旅行に行くはずが異世界に着いた。〜三種のお買い物スキルで仲間と共に〜
長船凪
ファンタジー
修学旅行へ行く為に荷物を持って、バスの来る学校のグラウンドへ向かう途中、三人の高校生はコンビニに寄った。
コンビニから出た先は、見知らぬ場所、森の中だった。
ここから生き残る為、サバイバルと旅が始まる。
実際の所、そこは異世界だった。
勇者召喚の余波を受けて、異世界へ転移してしまった彼等は、お買い物スキルを得た。
奏が食品。コウタが金物。紗耶香が化粧品。という、三人種類の違うショップスキルを得た。
特殊なお買い物スキルを使い商品を仕入れ、料理を作り、現地の人達と交流し、商人や狩りなどをしながら、少しずつ、異世界に順応しつつ生きていく、三人の物語。
実は時間差クラス転移で、他のクラスメイトも勇者召喚により、異世界に転移していた。
主人公 高校2年 高遠 奏 呼び名 カナデっち。奏。
クラスメイトのギャル 水木 紗耶香 呼び名 サヤ。 紗耶香ちゃん。水木さん。
主人公の幼馴染 片桐 浩太 呼び名 コウタ コータ君
(なろうでも別名義で公開)
タイトル微妙に変更しました。

~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる