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6章 黒土の森
第280話 とにかく大きい
しおりを挟む『以上がこの奥にいた魔物の詳細となります。いかがされますか?』
大型の魔物を調査してファラが戻ってきたのだが、中々興味深い情報がもたらされた。
「ふむ、知能の高い魔物......理知を備えているのであれば会話は問題ないのじゃな?」
『はい。私達が念話を使い通訳する必要はありますが、会話自体は問題なくできます。』
「であれば、妾は話を聞きたいと思うがどうじゃろうか?」
「あぁ、問題ない......というか話は絶対に聞いておきたいところだな。」
「そうですね。戦わなくてもいいのであればそれに越したことはないですし......。」
俺はちらりとリィリさんの方をみる。
「......だ、大丈夫だよ!?話の出来る子を食べたいとか思わないからね!?」
「そこは流石に疑っていませんが......。」
理知を兼ね備えていると聞く前に、大型の魔物の正体が蛇と聞かされた時リィリが嬉しそうに顔を輝かせたのを俺は見落とさなかった。
まぁ流石に意思の疎通が出来る相手と聞いて諦めたようだけど......少し残念そうにしていたのも勿論確認している。
それに、この洞窟は外れだったなーと呟いたのもしっかり聞き取っている。
いや、食材探しに来たわけじゃないですよ?
そんな思いを込めてリィリさんをじっと見つめていると、分かっていると言わんばかりに睨み返された。
しかし何かに気付いたようにナレアさんに近づいていく。
「ねーねー、ナレアちゃん。さっきからケイ君が、熱い視線を向けてくるんだけど......。」
「......ほう。」
ナレアさんが冷ややかな視線を向けてくる。
いや、確かにずっと見てはいましたけど......そんな蔑まれるような目で見られる云われはありませんが......。
リィリさんはナレアさんの後ろでにひひと言わんばかりの笑みを浮かべている。
「おーい、そろそろ行こうぜ。向こうも待っているだろうしな。」
レギさんが俺達に声を掛けてくる。
確かにあまり待たせるのは良くないな。
「そうですね。行きましょうか。」
俺はナレアさんの視線から逃げるようにそそくさと移動を始める。
とは言え、隊列を組んでいるわけで......俺の前を歩くのはレギさん、横に並ぶのは当然ナレアさんだ。
「......。」
いや、周囲の警戒をしながら歩いているわけでナレアさんがこっちを見ているわけでは無いのだけど......何故か殺気のようなものをあてられている気がする。
いや、殺気とか感じ取ることは出来ないけど......怒気......だろうか?
先程までと違った意味で、非常に緊張感のある道のりを進んでいく。
こんな殺気的なものを振りまいていて、この奥にいる蛇の魔物を警戒させないだろうか?
......まぁレギさんが何も言わないし、大丈夫なのかな?
後何故かナレアさんとは反対側を歩いているシャルも俺の事を凝視しているんだよね......。
何でか分からないけど、シャルの視線もいたたまれない感じになる。
耐えきれなかった俺が後ろを振り返ると、最後尾を歩くリィリさんと目が合った。
俺と目が合った瞬間テヘペロと言わんばかりの表情で舌を出してくるリィリさんを見て、非常にイラっとしました。
後ろからは何やら不愉快な雰囲気。
左右からは非常にとげとげした空気を浴びせられながら、俺は洞窟を粛々と歩いて行った。
解せぬ......。
ファラに案内されて進むことしばし、洞窟の奥へと進んだ俺達を待っていたのは非常に大きな蛇の魔物だった。
グルフよりも大きいとは聞いていたけど、予想以上のサイズだ。
深い緑色の体は、まさに巨大と言ったサイズ感。
もたげた首の高さは三メートルはあるだろうか?
胴体は十メートル?
いや、もっとあるかも知れない。
大きな口はレギさんでも簡単に丸呑みできそうだし......正直ファラから会話ができる相手と聞いていなかったら全力で攻撃していたと思う。
ただこちらを見下ろしてくる瞳は無機質な感じでは無く、意志を感じる気がする。
とは言え、その巨躯にはレギさんもナレアさんも目を丸くしているし、流石のリィリさんも美味しそうとは思っていないはずだ。
......多分。
しかし......何と話しかけた物か......。
いや、俺が話しかけないと始まらないよな。
「初めまして、僕はケイと申します。」
蛇の魔物はもたげていた首を下ろし俺の目線の高さに合わせるように伏せる。
『お初にお目にかかります。神子様。私は名乗る名は持ち合わせておりませんので、蛇とお呼びください。』
ファラから念話が届く、どうやら通訳をしてくれているようだけど......物凄く丁寧......というか、神子様?
俺の素性を知っている......ファラが先に伝えていたのだろうけど、ちょっと驚いた。
もしかして目線を合わせてくれたわけじゃなくって平伏しているのだろうか?
ファラ達の事を考えると、あまりへりくだった対応はしない方がよさそうだね......。
「それじゃぁ蛇、ファラから色々聞いているかもしれないけど......僕達は黒土の森について話を聞きたいんだ。」
『何なりとお尋ねください。私の知る限りの全てをお答えさせていただきます。』
......話が早くて助かるけど......この蛇さんは......怯えてない?
大丈夫?
ファラはどんな交渉をしたのだろうか?
「あはは。そんなに畏まらなくてもいいけど......色々教えてくれるのは助かるよ。よろしくお願いするね。僕達はこの黒土の森で探し物をしているのだけど......特徴的な地形、それと近寄ることが出来ない場所ってあるかな?」
『特徴的な地形で言えば、ここと同じような洞窟が数カ所、湖が一か所。それと巨木が群生している場所があります。後は地底湖がありますが、こちらは二つ目の質問の近寄ることが出来ない場所でもあります。』
なんと......有益そうな情報がぼろぼろでてきたぞ!
「凄い嬉しい情報が多いけど、特に地底湖ってのが気になるな。それはどこにあるの?」
『この洞窟......この付近に存在する大体の洞窟が繋がっています。この洞窟ではもう少し奥に行くと下の方に降りる横穴があるのでそこから降りていけます。』
「なるほど......それでその地底湖に近づくことが出来ないって言うのはなんで?」
『地底湖に近づく者は殺されます。非常に強力な魔物が縄張りにしていると考えられていますが、その姿を見て無事だった者はいません。遠巻きに地底湖を見る程度であれば大丈夫なのですが......地底湖まで行って、戻って来た者は一人としておりません。』
それはまた随分と恐ろしい話だな......っていうかこの洞窟を最初に発見してこの蛇の話を聞けて良かった。
下手に別の洞窟から地底湖に行っていたら、突然襲われていたかもしれないね。
それにしても非常に助かったな......
俺が皆の方に視線を向けると皆の表情も引き締まったものになっていた。
得体のしれない何かのいる地底湖......ここが最優先調査対象かな。
「他に何か聞いておきたい事ってありますか?」
地底湖の事を考えながら尋ねるとすぐにレギさんが言葉を発する。
「この森や洞窟で注意すべき魔物や罠、地形はあるだろうか?」
......確かにそれは絶対に聞くべきでしたね......ちょっと気が逸っていたかな?
『巨木地帯に生息する鳥の魔物はかなり強いです。それと地上の湖付近にも強めの魔物が複数生息していますが飛びぬけて強い魔物というのはいません。注意すべき地形としては......洞窟付近と洞窟内は地盤が緩んでいる所があるのでお気を付けください。罠は特にないと思います。』
「そうか。助かる。」
レギさんが情報を聞いて少しだけ考え込む素振りを見せる。
湖の方に強めの魔物がいるって言うのは納得できる話ではある......水が無いと魔物でも生きてはいけないだろうからね。
自然とそこに魔物が集まって強い奴が幅を利かせるのだろう。
それと巨木地帯の鳥の魔物か......仙狐様はその名の通り狐の神獣だろうから鳥の眷属っていうのは考えにくいけど零ではないかな?
「貴方みたいに話が出来る子って他にはいないかな?」
リィリさんが続けて質問をするが、どうやら蛇に心当たりはないようで横に首を振っている。
珍しく食事関係の質問をしなかったな......とか失礼なことを考えてしまったが、普通に考えれば蛇の食糧は俺達とは違うかな?
蛇の食糧か......卵とかネズミとかを丸のみにするイメージだけど......サイズ的にどっちも小さすぎるよな、この蛇にとっては。
っていうか、この蛇は一体何を食べているのだろうか?
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