狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

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4章 遺跡

第156話 話をしましょう

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「まぁ、確実に退治されるじゃろうな。」

スケルトンさんの問いに非常な現実を突きつけるナレアさん。

「でしょうな。流石にそのくらいの良識はありますとも。」

スケルトンの良識か......。
いや、言っていることは至極真っ当なんだけど......顔がどうしてもね?

「人に敵対するつもりもありません。まぁ暇なので出来れば交流したいとは思いますが......何分唯一の入り口が埋まっていたので、出ようにも出られなかったのですがね。はっはっは、いや、はっはっは。」

少し落ち着いて来たのか最初の頃の朗らかさが戻ってきている。

「今はもう好きに出られるじゃろ?」

「まぁそうですが......いくら私が友好的に振舞っても......色々と厳しくないですか?それとも私が引き籠っている間にアンデッドは人権を得ましたか?私が手を振りながら女性や子供に駆け寄っても笑顔で迎え入れてもらえますか?」

「先ほども言ったが当然、即退治じゃな。アンデッドが喋れるなぞ......普通はないからのう。」

......手を振りながら子供に駆け寄るスケルトン......確実に全力で排除するだろうな。

「そう言えば皆さんは驚いてはいたものの、意外とすんなりと受け入れてくださいましたね?」

「妾達にとっては初めての経験と言う訳ではないからのう......とは言え普通はあり得ぬ事じゃからな。駆け寄る暇もないと思うのじゃ。」

「ですよね。自分で想像してもちょっとそれはないかなーって思いますし。まぁそんな感じで外に出るのは諦めて、今まで通り過ごしていたわけです。」

そう言って腰を下ろすスケルトンさん。
それを見たナレアさんが、続いてのその場に座る。
俺とリィリさんもナレアさんの傍に座るが、レギさんは少し悩むような素振りを見せた後少し離れた位置に腰を下ろした。

「一つお聞きしたいのですが、先ほどここの事を遺跡とおっしゃいましたよね?」

「うむ。妾達はそう呼んでおるな。」

「あーつまりここは過去の建築物ということですよね?どのくらい時間が経っているか......わかりますか?」

「正確な事は分からぬが、少なくとも二千年以上前の物じゃと考えておる。」

「二千年......そうですか。」

「お主には生前の記憶があるのかの?」

「いえ、何分昔の事なのではっきりとしたことは言えませんが......あー私に生前の記憶と言うものはありませんでした。気付いたらこの場に、この体でいました。」

「ふむ。では当時の人間と会ったことは......?」

「あー私が自意識を持った時点で既に出口は埋まっていました。ですので会話をするのはこれが生まれて初めての経験ですね。はっはっは、いや、はっはっは。」

楽しそうに笑うスケルトンさんだが......。

「会話が初めてという割には受け答えがしっかりしておる様じゃが?」

「えぇ、不思議なことに言葉や知識なんかは最初から把握していたのですよ。自分がスケルトンと言う事も、人間と言う存在についてもね。いや、本当に不思議ですよね。」

不思議不思議といいながらカラカラと笑うスケルトンさん......千年以上もこの遺跡の中で誰とも会話をすることもない......俺が同じ立場に置かれたら確実に気が狂うだろうな......。

「なるほどのう......。」

「あーそれにしても、皆さん凄いですね。」

「......?何がじゃ?」

「いえ、このゴーレムひっくり返っちゃってるじゃないですか。皆さんがやったのでしょう?」

「まぁ、そうじゃな。」

「このゴーレムやれることを詰め込めるだけ詰め込んだので、私が作ったゴーレムの中で一番強いんですよ。まぁ見た目が気に入ってないので、もっと洗練されたゴーレムでこいつを倒すのが最近の目標なのでしたが。はっはっは、いや、はっはっは。」

「このゴーレムはお主が作ったのかの?」

「えぇ。結構時間かかりましたよ。えっとどのくらいだったかな?あー百?いやもっと?んーまぁとにかく沢山時間かけました。」

このスケルトンさんに時間とかを聞くのは無理そうだな。
まぁ時計が無いしこの遺跡の中だけで過ごしていたら、時間の把握なんて間違いなく無理だと思うけどね。

「ふむ......この遺跡の魔道具はどうじゃ?お主が作ったのか?」

「私が作ったものもありますし、私が生まれる以前からあったものもありますね。特に防犯系の設備は昔からあったものですね。防犯する必要ありませんでしたからね。はっはっは、いや、はっはっは。」

まぁ入り口が埋まって誰も入ることが出来ない状態が千年以上も続けばそうだろうね......。

「もともとこの施設は何かを研究していたような感じでしたが......まぁ私には必要なかったのでその手の物は殆ど片づけてしまったのですよね。」

「......そうなのか。」

「あー申し訳ない。一時期掃除が趣味の時もありまして......。」

ナレアさんが非常に残念そうにしているのを感じたのかスケルトンさんが謝る。
まぁ、ナレアさんにしてみれば、遺跡の歴史を調べようにも色々と片づけられていたら......それはもうスケルトンさんの生活を調べるようなものだよね......。

「まぁ、残されていた資料なんかを調べることでゴーレムの作り方や魔道具の事なんかを勉強できたのはいい暇つぶしになりましたね。」

「ほう......それは素晴らしい。」

「とはいえ、それも流石に飽きてきていましたからねぇ。最近は寝ることが多くなっていましたね。おかげでより一層時間感覚が怪しくなってしまいましたね。はっはっは、いや、はっはっは。」

「......何がそんなに面白いのじゃ?」

「あーすみません。何が面白いと言われれば、やはり会話その物ですね!何しろ久しくなかった初めての経験ですから!楽しい!楽しいのです!」

そう言って大仰に天井を仰ぎ見るスケルトンさん。
表情は変わらないが......その姿は歓喜に満ち溢れているように感じられる。
それを見ていたレギさんの表情が少しだけ柔らかくなる。

「そうか......そうだな。無粋な事を聞いてしまったな。すまぬ。」

「いえいえ!それよりも、もっとお話をしましょう!といっても私から話せるようなことは殆どありませんがね!何せ生まれてこの方この施設から出たことのない箱入り息子です故!はっはっは、いや、はっはっは。」

「ふむ、妾としては色々と話を聞きたいことはあるが......まぁそれは後程で良いのじゃ。何か妾達に聞きたい事はあるかの?」

ナレアさんがスケルトンさんに聞くと顎に手を当てながら、如何にも考えている雰囲気を醸し出す。

「そうですなぁ。正直外の事は知りたい事しかないので何から聞いたものか......うーん、そうですね......生前の記憶でもあれば当時と今の違いとかを比べてみたかったのですが......っていうか私って生きていたことあるのですかね?」

「いや......どうじゃろうな?」

「いや......これは面白い研究対象になりそうですね。私と言う存在が一体どういったものなのか......やや哲学的ではありますが......。」

「アンデッドの研究か......確かに面白いかもしれぬな。その内話を聞かせてもらいたいものじゃ。」

ナレアさんは一瞬リィリさんの方を見てそう答える。

「えぇ、えぇ。勿論ですとも!外ではその辺の研究は進んではいないのでしょうか?」

「あまり魔物の研究を盛んに行っておる場所は多くないのう。アンデッド専門ともなると......ついぞ聞いたことはないのう。」

「なるほど......私が先駆者と言う事ですね。険しき道に私ワクワクが止まりませんとも!はっはっは、いや、はっはっは。」

「そ、そうじゃな。」

ちょっとスケルトンさんのテンションにナレアさんが押されているな......。

「しかし、先駆者となる者がスケルトンと名乗るのも味気がないですな!名前が欲しい所ですが......ふむ、良ければ私に名前を付けて下さらないでしょうか?今日と言う日の記念に是非!」

「う、うむ......名前か......妾達で良いのか?」

「えぇ!私が初めて会った人達!あなた達と出会ったことで生の実感を得たと思います!これは即ち、あなた達に生み出されたと言っても過言ではないと思います!つまり私はあなた達の子供!」

いや、それは違うと思います。
そんな三段論法でスケルトンを子供に迎えたくはない。
っていうか俺達より遥かに年上ですよね?

「そ、それはどうかのう?」

「まぁまぁ、お母さん。そう言わないで下さいよ。はっはっは、いや、はっはっは。」

「......。」

うわぁ......ナレアさんがめちゃくちゃ嫌そうな顔をしながら固まっている。
あんな顔見たの初めてだな......。

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