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4章 遺跡

第155話 骨の名は

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マナスを通してナレアさんから連絡があった。
油断は出来ないがどうやら巨大ゴーレムの動きを止めることが出来たらしい。
一応動き出してもいいように保険は掛けたままではあるが......合流して欲しいとの事なのでシャルの背中に乗ったまま皆の所に運んでもらった。

「お待たせしました。」

「ゴーレムの動きは止まっておるか?」

「えぇ、今の所は問題ありません。」

「とりあえず約束は守っておる様じゃな。」

「約束ですか?」

「うむ、このゴーレムの中にアンデッドがおってのう。そやつがゴーレムを止めてくれたのじゃが、信用できるかどうかは分からぬがのう。」

遺跡にアンデッドがいる話は聞いたことがあったが......ゴーレムの中にいるって言うのは初めて聞いたな。

「アンデッドと意思の疎通が出来たのですか?」

「出来たというか......出来てしまったというか......。」

何故かレギさんがめんどくさそうに告げてくる。
そんなめんどくさい感じのアンデッドなのかな?
と、そこでナレアさんの右手に包帯が巻かれているのに気付いた。

「ナレアさん、手を怪我したのですか?」

「うむ、少し不覚を取ってしまってな。」

「......見せてください。治療します。」

俺はナレアさんの手を取り、丁寧に包帯を外していく。
包帯の下から出てきたのは変色して腫れ上がった手首と傷だらけの掌だった。
ナレアさんが痛そうに顔を顰める。

「すぐに治します。」

俺は急いで回復魔法を行使する。
すぐにナレアさんの負傷は癒されて元通り綺麗な手に戻る。
俺はナレアさんの手を触りちゃんと治っているかを確かめる。

「どうですか?痛いところはありませんか?」

「うむ、感謝するのじゃ。」

そう言ってナレアさんは手を動かして具合を確かめる。

「問題ないようじゃ。ありがとう、ケイ。」

「えぇ、お安い御用ですが......気を付けてくださいね?」

「ほほ、すまなかったのう。まぁ頭を吹き飛ばされなかっただけ良かったと思っておくのじゃ。」

流石に頭は......俺じゃ治す自信はない。
回復魔法は練習が難しいんだよな......。

「お待たせして申し訳ない。何分あまり止める機会がないもので手間取ってしまいました。はっはっは、いや、はっはっは。」

回復魔法について考えていたら、なんかすごい朗らかな笑い声が聞こえてきた。

「これですか?」

「これじゃ。」

会話のできるアンデッドってみんなこんな感じなのかな?
俺はそんなことを考えながら、決してリィリさんの方を見ないように全身に力を籠める。

「......なんか変な感じがするなぁ。」

リィリさんが首を傾げながら辺りを見回している。
少し感づかれた気はするけど......大丈夫なようだ。

「リィリ、ケイが何やら言いたいことがある様じゃぞ。」

「そっかー。ケイ君、後でお話ししようね。」

俺の味方はどこにもいなかった......ってか頑張って耐えたのに酷くないですかね?

「失礼なこと考えるほうが悪いに決まっておろう。」

......おっしゃる通りです。

「ケイを弄るのはそのくらいにして、下の奴はどうするんだ?」

「約束したからのう、引っ張り上げてやるかの?」

「ロープ垂らすからそれに掴まってくれる?」

リィリさんがゴーレムの内部にロープを垂らしている。
まぁ外に出す約束をしていたのなら出してあげないといけないよね。
一体どんな人......アンデッドなのかな?
いや、とりあえず朗らかに笑うタイプなのは分かっているけど。
リィリさんが垂らしたロープの先端はレギさんがしっかりと持っている。

「自分で上がれる?」

「えーすみません。ちょっと難しいですね。筋力が無くて申し訳ない。はっはっは、いや、はっはっは。」

何がそんなに面白いのかめちゃくちゃ笑っている。
レギさんが引っ張り上げるとローブを羽織った骨......スケルトンが出てくる。

「あーありがとうございます。いや、助かりました。一生中にいないといけないかと思いましたよ。はっはっは、いや、はっはっは。」

微妙にさっきから突っ込みどころがある言い回しをしてくるよな......ただ直後に自分で笑ってるからな......なんというか、おっさん臭がする。

「お手数おかけしました。私はスケルトンの......あースケルトンです。どうぞお見知りおきを。」

......スケルトンのアースケルトン?

「アースケルトンかの?妾はナレアじゃ。」

「あーいえ、すみません。アースケルトンではないです。それはさておき、初めましてナレア殿。」

「......そうか。うむ、初めましてじゃな。」

「私に名前は......多分ないですね。」

「多分?あ、私はリィリだよ。」

リィリさんが首を傾げながら自己紹介をしている。

「あー私こう見えて結構長い事スケルトンやっているので......あまり昔の記憶がないのですよね。」

こう見えてというか......スケルトンの年齢はよく分からないなぁ。
しかし、昔の記憶がないほどか......相当長い年月なのだろうな。

「それにまぁ、ここには私以外ゴーレムしかいませんしね。名前って必要なかったのですっかり忘れてしまいました。まぁあったかどうかも分かりませんがね。あっはっは、いや、あっはっは。」

朗らかなんだけど、いちいち自分の台詞に笑うのが引っかかるというか......。
って俺も自己紹介するべきだな。

「僕はケイと申します。」

「レギだ。」

俺とレギさんが続けて自己紹介をするとスケルトンさんはこちらに顔を向けてお辞儀をしてくる。

「どうも。いやぁ、やはり入り口が外に露出すると人が入ってきますねぇ。」

「......妾達の前にこの遺跡に来た者達がおったじゃろ?なんぞ知らぬか?」

「あー以前に来た方ですか。確か......十日ほど前に来た方々ですね。いや、あの方々には申し訳ないことをしました。」

十日?
十日前だと俺達が上の階を探索していた頃だ......俺たち以外に人が入って来てはいないはずだけど。

「うん?十日かの?」

「おや?違いましたかな?」

「この遺跡の入り口は一か所かの?」

「一か所ですよ。しかし、先ほども言っていましたが遺跡、遺跡ですか。はっはっは、いや、はっはっは。」

また笑いだすスケルトンさん。
何がおかしいのかは相変わらず分からないけど......入り口が一か所なら俺たち以外にここに来た人はいるとは思えないな......。

「ふむ、では十日と言うのはおかしいのう。前ここに誰かが来たのは半年ほど前のことではないかの?」

「おや、半年ですか。すみません。昼夜の感じられない日々を過ごしているので、あー時間感覚が適当なのですよ。はっはっは、いや、はっはっは。」

頭を掻きながら謝ってくるスケルトンさん。
表情はまったく変わっていないが......恥ずかしそうに笑っている感じはしている。
しかし時間感覚が完全に死んでるな......いや、時間感覚だけじゃなく普通に完全に死んでるか......。

「うむ、それでその者達の話を聞きたいのじゃが。」

「あぁ、申し訳ありません。その方々ですが......あー設置してあった防衛用の仕掛けにより命を落とされておりまして。お知り合いの方でしたでしょうか?」

「知り合いと言う訳ではないが......その者達の所属する国から依頼を受けて調べに来たのじゃよ。」

「そうでしたか......本当に申し訳ありません。私が設置していた仕掛けで命を奪ってしまいました。そんなつもりは無かった......とは言えませんね。」

先程までの軽快さは無く神妙な雰囲気で謝ってくるスケルトンさん。

「ふむ、妾達に謝られてものう。その者達の遺体はどうしたのじゃ?」

「埋葬させていただきました。服以外の身に着けていたもの、アクセサリーや武器の類は回収して清めさせてもらいました。」

「そうか......遺品は持ち帰ってやりたいので譲ってもらっていいかの?」

「えぇ、勿論です。遺体も連れ帰ってあげられれば良かったのですが......。」

「丁寧に埋葬してくれておるのならそれでよかろう。遺品だけでも回収できれば御の字と元々考えておったのでな。」

墓を暴くと言うのもね......。

「あーまさか私が寝ている間に外から人が入って来れるようになっているとは思いませんでした。」

「寝ておったのかの?」

「はい、あまりやることもありませんからね。」

完全に暇を持て余しているな......。
母さん達はどうやって過ごしていたのだろう?

「ふむ......ここから出ようとはしなかったのかの?」

「まぁ......私見た目がちょっと一般受けしないと思うんですよね。個人的には色白でいい骨格していると思うのですが......。」

なんでスケルトンの方々はそんなに色白をアピールしたがるのだろうか......?
俺とレギさんがリィリさんの方を見ると物凄い勢いで視線を逸らされた。
まぁリィリさんは骨格を自慢してはいなかったかな?

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