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4章 遺跡
第153話 巨大ゴーレム調査開始
しおりを挟むView of ナレア
ケイのお蔭である程度安全が確保出来たのでゴーレムの調査を始めたのじゃが......流石に全ての腕を拘束出来ているわけではないので偶に攻撃が飛んで来る。
まぁ、それもレギ殿達によって防がれているので妾は調査に集中出来ておる。
今の所めぼしいものは見つかっておらぬが、何か手掛かりになりそうなものがありそうな気はしておる......。
「ナレアちゃん。そこに継ぎ目とは少し違う感じの隙間みたいなのがあるけど。」
リィリの言う方を見てみると、確かに継ぎ目と言うよりは......。
「確かに......上にいたゴーレムの装甲とは少し違うようじゃが......何とか外す......いや開けないかのう?」
装甲と言うよりも扉の様な感じじゃな。
しかし取っ手の様なものもないし......隙間はあるものの指が入るほどの大きさではない。
「釘とか打ち込んで引っ張ってみる?」
「ゴーレムの硬さを考えると釘の方が折れそうじゃな......ん?」
リィリの見つけた扉の様な隙間の脇に掌ほどの大きさの小窓の様なものを見つける。
触ってみると少し動いた。
どうやらこちらの小窓は開きそうじゃな。
妾は引いたり上や横にずらしてみようとしたりして小窓を開けようとするが中々開かない。
鍵穴や魔術式の様なものは見当たらないからどうにかして開けられると思うのじゃが......。
「ナレアちゃん、その大きさならナイフを突っ込めば開けられそうじゃない?」
「いや......なんとなく、開けそうなのじゃが......お、開いたのじゃ。」
奥に押し込むとカチっと音がなり小窓が少し浮いた。
小窓を開くとそこには魔道具が埋め込まれていて......ふむ、これはどうやら扉を開く物のようじゃな。
罠は......無いようじゃな。
魔力を流せば開く仕組み......うむ、間違いないようじゃな。
繋がっているのもすぐ横の扉で間違いないようじゃ。
「何か分かった?」
魔道具を調べているとレギ殿が声をかけてくる。
「うむ、隣の扉を開ける魔道具の様じゃ。まぁ何が飛び出してくるか分からないからのう。迂闊に開けるわけにはいかぬが......。」
「でも、ケイ君もいつまでもゴーレムを抑えておくのは無理じゃないかな......?」
「そうじゃよな......。」
先程ゴーレムを押さえつけた時に妾が使った魔力はかなりの物じゃった。
それを維持し続けているケイは妾よりも遥かに多い魔力を持っているとは言え、無限に持っているわけではない。
「どうするんだ?他の場所を調べるか?」
他の場所を調べるか......それともこの扉を開くか......。
妾の勘ではこのゴーレムを制御している魔道具はこの扉の先じゃが......。
「ここ以外に扉の様な隙間はあったかの?」
「ざっと見た感じではここだけっぽいね。」
「あぁ、少なくともこちら側には無さそうだな。反対側はケイが確認したんだろ?」
「うむ......妾としてはこの扉の奥で間違いないと思うのじゃが。」
というか、今の所ここ以外に怪しい場所がないのじゃ。
「私は開けて調べた方がいいと思う。」
「俺もだ。ここで引いても状況は良くならないだろう?」
確かに二人の言うようにここを調べる以外に手はないか......。
「分かったのじゃ。扉を開く。二人とも警戒を頼むのじゃ。」
そう言って妾は開閉用の魔道具に魔力を流す。
レギ殿が武器を構えて扉を警戒、リィリは周囲を警戒している。
妾はレギ殿と同じように扉を警戒する。
扉が横に滑るように開き中から何かが伸びてくる......これは......なんじゃ?
斜め上に向かって伸びていくそれは......柱とは違うようじゃが......。
「......なんだこれは?」
「......階段じゃない?ほらこのゴーレム今ひっくり返っているから。」
あぁ、そう言えばそうじゃったな。
「階段が出てくるということは、中に人が入るように作られておるという事じゃな。」
「まぁ......上下が逆転しているようだがな。」
「天井を歩く感じになるね。」
「少し不便そうじゃが......まぁ大丈夫じゃろう。」
入り口を覗き込んでみるが真横に向かって通路が進んでいるため、顔を中に完全に入れてしまわないと確認することは出来ないのう。
まぁ、こういう時は手鏡じゃな。
そう思い懐から取り出した手鏡をゴーレムの内部に差し込んでみたのじゃが......中を確認する暇もなく手鏡が弾かれてしまった。
勿論妾の手ごと。
「っ!?」
「ナレアちゃん!?大丈夫!?」
「う、うむ。どうやらゴーレムの中にも魔力弾を撃ってくる仕掛けがある様じゃな。」
まさか手鏡ごと撃たれるとは思っていなかったのじゃ。
手鏡は......うむ、粉々じゃな。
妾の手も流石に油断しておったからな......血が出ておるし、手首も痛めてしまっておる。
ケイに強化魔法を掛けてもらっておらなかったら手首から先が無くなっていたかもしれんのう。
妾は腰に付けた鞄から出した包帯を撒こうとしたのじゃが......片手では難しいのう......とりあえず、片側を口にくわえて......。
「ナレアちゃん、貸して。私が巻くよ。」
「む、済まないがよろしく頼むのじゃ。」
「もし普通に階段を上って入ろうとしたら頭を撃たれてたね......。」
「問答無用過ぎるのじゃ。リィリ言っていた、暴走して手が付けられなくなったというのも間違いではなさそうじゃな。」
リィリに包帯を巻いてもらいながら話しているとレギ殿が扉に近づいて行く。
「治療が終わったら少し周囲警戒を頼む。俺は中の攻撃の間隔を計ってみる。」
「了解。」
包帯を巻いて手首を固定したので少し楽になったが......こちらの手で殴ったりは厳しいのう。
「利き腕が使えないと不便じゃな。」
「ケイ君がいたらすぐに治してくれるんだけどねぇ。ナレアちゃんが怪我をしたって言ったらあそこから飛んできてくれそうだけど......。」
そう言ってリィリはケイがいる方を見る。
「まぁ、あやつは心配性じゃからな。他人の心配ばかりしおって、一番危なっかしいのは本人じゃろうに。」
「ケイ君のいい所だけど悪い所でもあるねぇ。」
「まぁケイの話はいいのじゃ......レギ殿!どうじゃ?」
なんとなくリィリがニヤニヤしだしたので強引に話を切り上げてレギ殿に声をかける。
何やらリィリが残念そうな声を上げているが放っておくのじゃ。
まったく......遺跡探索中にリィリは何を考えておるのじゃ。
「外程は激しくないな。相手の攻撃の直後に飛び込めば、体勢を整える余裕位はありそうだ。」
「それは僥倖じゃな。」
「俺が最初に飛び込むから俺の合図で一人ずつ入ってきてくれ。」
「了解じゃ。マナスよ、妾達がゴーレムの中に突入する事をケイ達に伝えておいてくれ。」
妾が頼むと肩の上でマナスが弾む。
妾ではマナスと詳細な会話は出来ぬが向こうにはシャルがおるし、ちゃんと伝えてくれたはずじゃ。
ケイの方を見てみるが、流石に距離があるのでその表情は分からない。
まだ慣れていない応龍の魔法を使っておるからのう、もしかしたら他に気を回す余裕はないかもしれぬな。
手を振ってみるが残念ながらケイから特に反応はない。
うむ、やはりかなり負担をかけておる様じゃな......すまぬな、ケイ。
視線をレギ殿に戻すと丁度ゴーレムの中に飛び降りる所じゃった。
いかんな......集中せねば。
「次は私が行くね。」
「うむ、気を付けるのじゃぞ。」
「今だ!降りてこい!」
レギ殿から声がかかり、リィリが飛び降りていく。
さて......大詰めじゃな。
ケイの力が借りられないのは少し心許ないが......何、リィリやレギ殿がおる。
一人で遺跡に潜ることに比べれば何と心強い事よ。
「よし!ナレア、来い!」
「うむ!」
妾は扉から飛び降りる。
未だかつて見たことがないほど巨大なゴーレムのその中へ。
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