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4章 遺跡
第146話 勿論ちゃんと考えていたのじゃよ?
しおりを挟むファラとマナスに一階部分のトラップや魔道具を全て調べて排除してもらった。
勿論、全てと言っても二人に見つけられたものだけではあるけど。
遺跡内を照らしていた照明の魔道具も無くなってしまったので少し不便ではあるけど......それが罠ではないとは言い切れない。
そこにあることが当たり前の物こそ罠を潜ませておくにはいい隠し場所だろうしね。
そんなわけで今度は明かりを持ち込みになっている。
まぁ強化魔法で真っ暗でも見えるようには皆なっているんだけど......騎士団の人達がいる手前、灯りをもってこないと不自然過ぎるからね。
「上層で魔道具が活動停止したことによって下層の警戒が上がるって可能性ありますかね?」
「ないとは言い切れぬのう。」
「いきなり遺跡が吹飛んだりしないですよね?」
「流石にそこまで強力な魔道具は無いと思いたいのう。魔法が込められたものでもこの広さを吹き飛ばすのは無理じゃと思うのじゃが。」
「そうですね......出来て生き埋めとかでしょうか?」
「その場合は妾達が全力で魔法を使えば何とかなるかのう?」
「多分大丈夫だと思います。」
咄嗟に出来るかどうか分からないけど......。
「しかし、先遣隊がやられたのは罠で間違いないようじゃな。」
マナスとファラが発見した魔道具の中に部屋全体に電撃を一瞬走らせて中にいる人間を感電させるものがあった。
恐らくこの魔道具によって先遣隊は全員やられたのだと思う。
たとえ死ななくても行動不能になれば後はゴーレムに任せればいいのだから。
広範囲を一気に制圧するなら効率的だろう......罠は他にも落とし穴とか釣り天井とかあったらしい。
自分たちが使う施設に罠を置きすぎじゃないですかね?
昔の人達はどれだけ防諜に力を入れていたのだろうか?
ここは龍王国が出来るきっかけとなった大戦の頃の遺跡なのだろうか?
「罠と言いゴーレムと言い、この遺跡殺る気満々過ぎませんか?」
「そうじゃな。この遺跡は比較的新しい物に間違いないと思うが、状態がいいからと言うのもあるのじゃろうな。遺跡はどこもそれなりに危険はあるが、そもそも崩れているのが普通じゃからな。ここのように綺麗な形で残っている......機能が生きている遺跡は珍しいのじゃ。もしかすると他の遺跡も機能が完全に生きておったらこんな感じなのかも知れぬのう。」
「相当貴重な遺跡だったと思うが、良かったのか?魔道具を殆ど潰しちまったんだろ?」
周囲を警戒していたレギさんが話に加わって来る。
「そうじゃな......トラップ以外の魔道具も潰してしまったのはかなりの損失じゃ。じゃがまぁ、そこは地図と魔術式の写しで勘弁してもらうしかないのう。」
「それで大丈夫なのか?」
自分から提案したことではあるけど、確かにその辺の配慮は全然していなかったな......。
「うむ。妾の方は問題ないし、龍王国には元々写しを出すだけで良かったからのう。歴史的価値のある物まで潰してしまっておるが......やはり安全には代えがたいのじゃ。国の研究機関もこれ以上の犠牲は望まぬじゃろうが......これほどの状態かつ高い防衛力を持つ遺跡じゃ、奥にはもっと価値がある物があるかもしれぬ。そう考えると放置は出来ないじゃろうし、東側や他国が狙ってこないとも限らぬ。それならば無力化してしまって、魔術式だけでも回収できれば文句はなかろう。」
「なるほどな......情報公開して冒険者を送り込んでも犠牲が増えるだけだろうし。そう考えると潰しちまった方が安定には繋がるか。」
「まぁ、この辺は国が考えることじゃがのう。受けた依頼は遺品回収じゃしな。それに妾に教えた時点でこの遺跡は食い散らかされるのは覚悟しておるじゃろ。」
ナレアさんには中々アレな二つ名もついていますしね......。
でも俺の提案に対してそこまで色々な事に考えを巡らせていたんだな。
ただ自分が魔道具を調べられなくなるから渋っていたわけじゃないのか......。
そんなことを考えているとナレアさんと目が合ったのだがスッと逸らされてしまった。
この目の逸らし方はやましい所がありますと言わんばかりだが......まぁポーズだけだよね。
とりあえず尊敬の眼差しでも送っておこう。
何故か苦虫を嚙み潰したような表情をしながら首ごとあっちを向いてしまった。
「ファラちゃん達が地図の何処に魔道具があったかも追記してくれたから、これがあれば魔道具の事は一目瞭然だね。」
「うむ、正直このレベルの地図をヘネイに渡すのは考え物じゃな......分かりやす過ぎて、今後余計な依頼が増えそうじゃ。」
確かに、以前ダンジョンに行くときに冒険者ギルドで買った地図に比べるとチラシ裏の地図とG○○gleマップくらい差がある。
当然冒険者ギルドの方がチラシ裏だ。
「その辺はもう少し簡略化した物を渡せばいいのではないですか?」
「ふむ......それもそうじゃな。ならば、折角じゃからケイがマッピングでもしてみるかの?」
「流石に完全に素人の僕が書いたものを国の研究機関に渡すのは不味いと思いますが。」
「まぁ良いではないか。ファラ達の作った極上品があるのじゃ。正しいかどうかはすぐに分かるじゃろ。」
「......それもそうですね。では折角ですから挑戦してみます。」
こうしてナレアさんの調査や遺品回収をしながらマッピングをすることになった俺は、レギさん達にアドバイスを貰いながら遺跡の一階を地図に起こして行った。
「さて、一階も残すところは階段前のゴーレムだけになりましたね。」
「早いものじゃ。とても始めてくる遺跡の探索速度ではないのじゃ。」
階段を守護するゴーレムは巡回していたゴーレムのように一体ずつおびき寄せて戦うということは難しい。
階段前はエレベーターホールのように広くなっていてゴーレム三体が横並びになってもまだ余裕がかなりある広さになっている。
「マナスよ、分体であっても魔道具を初期化して読み取ることは可能かの?」
ナレアさんの問いにマナスが弾んで答える。
現在マナスの本体はファラと一緒に先行して地下二階を探索している。
ここに残っているマナスは緊急連絡用の分体だ。
「問題は無さそうですね。」
「うむ......ではマナスよ、恐らく一番後ろに陣取るであろう狙撃型ゴーレムの魔道具を奪ってくれるかのう?頭と胸にあるはずじゃ、全部で四個じゃな。」
マナスはナレアさんの頼みを聞き俺から離れて壁を登っていく。
恐らく戦闘が始まれば天井から忍び寄って一気に後方の陣取る一体を制圧してくれるだろう。
「僕たちはどうしますか?」
「ここは場所的に相手も連携がしやすいじゃろうな。」
「なら連携させないように立ち回るか。前回も真後ろから射撃してくるってだけで厄介だったからな。本格的な連携はさせないように戦うべきだろう。」
レギさんがそう言うとナレアさんは少し残念そうな顔をする。
これはゴーレムが連携している所を見たかったって感じだな。
「では、レギさんとナレアさんで重装を押さえてください。僕とリィリさんで軽装を相手します。」
俺の提案にレギさん達が頷く。
レギさんは重装タイプを抑えるのに必須だしナレアさんの近接は格闘だ。
全身刃物の軽装タイプとは相性があまり良くないだろう。
俺とリィリさんなら速さ重視で軽装タイプを抑えられる。
攻撃のパターンが最初に戦った相手と変わらなければ二人で手早く制圧できるはずだ。
「俺の強化をもう少し強めにしてもらっていいか?重装のゴーレムを横に弾き飛ばせるくらいに。最初だけでいい。それで相手の陣形を崩せば後はこっちのものだろう。」
「わかりました。陣形を崩した後の強化は以前ゴーレムと戦った時くらいでいいですか?」
「あぁ、あのくらいなら問題なく動ける。今後、戦闘中はあの程度の強化をしてもらっても大丈夫そうだ。」
「了解です。」
俺自身の強化魔法ももう少し上げていこう。
普段から使っている魔法ではあるが日常生活では上げ過ぎると色々危険だしね。
こういう機会に戦闘時に使える標準、それから最大出力は試しておいたほうが良い。
訓練である程度把握していても実戦とはやっぱり感覚が違うからね。
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