上 下
143 / 528
4章 遺跡

第142話 では突入しようか

しおりを挟む


「すまなかったのじゃ、ファラが作ってくれた地図があまりにも見事だったので色々と想像が膨らんでしまってな。目の前に本物の遺跡があるというのに思慮に耽ってしまったのじゃ。」

「いや、俺達もちょっと体を動かしていたからな、お互い様だ。」

ナレアさんが我に返り、どことなくボロボロになったレギさんとリィリさんが戻ってきた。
ナレアさんはともかく、レギさん達はこれから遺跡に突入するというのに随分と激しい攻防を繰り広げていたようだ。
少し離れた位置に居る騎士団の人達が驚いたような感心したような表情を浮かべているのが見える。

「それでは打合せを再開して、それから遺跡へと向かうのじゃ。ファラよ、先ほどまでの話以外に注意事項はなにかあるかの?」

『いえ、大体話しました。細かい点は地図の方に記載しております。』

「うむ。では方針じゃが、妾達は一階から調べていく。ゴーレムは全て排除していくが一階層ずつじゃ。妾達が遺跡の中に入ることによって警備状態が変わる可能性があるので、ファラは先行して二階への階段を見張っておいてくれ。増援が来たら教えて欲しいのじゃ。」

『承知いたしました。』

「一階のゴーレムは六体、巡回三の階段前に三じゃな。まずは巡回しているものを排除、階段前のゴーレムが動かぬようなら調査に移る。階段の見張りにマナスの分体を置いて、ファラとマナス本体は地下二階で変化がないか偵察を頼むのじゃ。妾達は一階を隈なく調査、先遣隊の遺品は一先ず外に運び出して騎士団に預けておくのじゃ。」

ナレアさんが方針を決め俺たちは頷く。

「恐らく予想通り何かの研究施設で間違いないと思うのじゃ。警備も厳重で遺跡の状態もかなり良い。相応の危険が予想されるのじゃ、皆警戒は最大限にしておいてくれ。何か質問はあるかの?」

「ゴーレムには弱点はないのか?」

「ゴーレムは体がかなり固い、ケイやリィリの武器では細い部分や関節を狙わないと有効な損傷を与えるのは難しいじゃろう。一撃で行動不能にするなら体に埋め込まれている魔道具を狙うのが一番じゃ。破壊は難しいと思うが、体から離せば動けなくなる。」

「狙うなら魔道具ってことだな......なら俺が正面を押さえる間に側面から頼む。」

ナレアさんの説明を聞いてレギさんが戦闘方針を決める。

「ダンジョンの、ボスの時のやり方ですね......それなりに広い場所じゃないと厳しいと思いますが。」

「通路では無理じゃな......部屋の中でもそこまで広い場所は一階には無さそうじゃ。階段前は広いがゴーレムが警備している所じゃからおびき寄せるには向いて無いのう。」

「巡回しているゴーレムに関してはこの位置で戦ってはどうでしょうか?」

そう言って俺は地図の一点を指す。

「ふむ、出口に陣取ればこちらは通路を使って三方から攻撃を仕掛けられるな。その一方で相手は一匹ずつしか出てこられないというわけじゃな。」

俺が示したのは巡回ルート上にある部屋の出入り口の一つだ。
比較的広い通路だからゴーレムが出てくる所に待ち構えればこちらが有利に戦える。

「そうだな、その場所がいいだろう。それで相手の強さも計れるだろうしな。」

「ならば、まずはそこを目指すのじゃ。皆、十分注意するのじゃ。」

ナレアさんの声に従い遺跡探索が始まる。
魔法系の魔道具が見つかると嬉しいけど......ゴーレムがいるってことは比較的新しい遺跡みたいだから望み薄かな?
まぁそれはともかく、犠牲もかなり出ている遺跡だ。
油断せずに行こう。
ナレアさんを先頭に俺たちは初めての遺跡へと突入した。



ファラの書いてくれた地図によると、遺跡の一階部分はそこまで広くない。
俺達はあらかじめ決めていた巡回しているゴーレムの迎撃地点を目指して移動している。
遺跡に足を踏み込むと同時に遺跡内の照明が点灯したので視界は良好だ。
人の出入りを感知して自動で照明を点けるか......日本の住宅みたいな感じだな......。
夜、人の家の前を通ると突然明かりがついてびっくりするんだよな......。
それにしても作られてから二千年以上も経っている動作しているのはすごいね......家電はそんなに持たないからこっちの方が便利かもしれない。
まぁ二千年も持たなくていいけど......。

「よし、ここじゃな。レギ殿正面を頼む。」

「おう。」

しょうもない事を考えている内に迎撃地点に到着した。
勿論油断はしていない、ちゃんと警戒はしつつ余計な事を考えていた......はずだ。

「......どんな性能なのか楽しみなのじゃ。」

ボソっと呟いたナレアさんの表情はお気に入りのおもちゃを見つけた子供のように目を輝かせていた。
そしてナレアさんの歓喜に答えるようにゴーレムが姿を現した。



「これは予想以上の力だな!」

部屋の出口から姿を現した重装のゴーレムが正面に立ちふさがるレギさんを狙い攻撃を仕掛ける。
その重い一撃を受け止めたレギさんが声を上げた。
そのままレギさんは自ら攻撃を仕掛けることをせず、相手の動きを止めることに注力している。
攻撃を仕掛けるのは相手の側面に布陣している俺とリィリさんの役目だ。

「これすっごく硬いよ!」

レギさんを攻撃するために伸ばしたゴーレムの腕を愛用の双剣で攻撃したリィリさんから悲鳴のような声が上がるが......俺も同感だ。
ナレアさんのアドバイス通りに関節を狙ったのだがあっさりと弾かれてしまった。

「ケイ!すまん!強化魔法を少し強めにくれ!」

初めてレギさんから強化魔法の追加オーダーが来た。
今のレギさんの強化魔法は効果を少なめにしてあるが、それでも未強化に比べればかなりの差がある。

「了解です!強化直後は動きに気を付けてください!」

俺はレギさんの強化魔法を掛けなおすと同時に自分にも普段より強めに強化を掛け直す。
先程よりも余裕をもってゴーレムの攻撃を受け止めたレギさんがそのまま腕を跳ね上げる。
胴の部分ががら空きだけど......そこを斬る自信はない。
レギさんに跳ね上げられた腕を振り下ろし攻撃を仕掛けるゴーレムの腕関節を狙ってナイフで斬り上げる。
当然魔力は通して既に刃先は伸ばしてある。
ゴーレムの腕とナイフが交差した瞬間、かなりの負荷が腕にかかったが先ほどかけた強化魔法のお蔭で打ち負けることなくナイフを振りぬくことが出来た。
なんとかゴーレムの右腕を破壊することが出来たが、切り飛ばしたというより関節を砕いた感じになってしまった。

「これは......武器の方が先に参りそうですね......!」

幸い俺の武器は壊れる様子は見られないが、レギさんやリィリさんの武器は業物とはいえ普通の武器だ。
このまま戦闘を続けると先に武器の方が壊れてしまうだろう。

「リィリ交代じゃ!妾が前に出る!」

ゴーレムの左側ではリィリさんとナレアさんがポジションを代わるようだ。
遺跡の中で落とし穴作戦は使えないが......体勢を崩す程度ならいけるか?
ナレアさんの武器は魔道具に魔法......それと体術だ。
体術はゴーレムにはあまり効果的ではないと思うが......ナレアさんは普段どうやってゴーレムと戦っているんだ?

「ケイ!胸の装甲部分を剥がすのじゃ!おそらくそこに魔道具がある!」

「了解です!」

相手に近づくことでゴーレムの作りが把握できたのかナレアさんから指示が飛ぶ。
腰にナイフ戻して両手を自由にした俺は少し高い位置にあるゴーレムの胸部分に飛びかかる。
こちら側の腕は俺が破壊しているので簡単にとりつくことが出来た。
反対側の腕はナレアさんとレギさんが押しとどめてくれている。
強化魔法をかなり強めに腕に掛け、隙間に指を突き刺して一気に引きはがす!
装甲の下には三個の魔晶石がはめ込まれているのが見える。

「これ全部剥がしていいですか!?」

「すまん!初めて見る魔道具じゃ!一度離れてくれ!」

俺はすぐにゴーレムから飛びのく。
とことん想定外だね!

「レギ殿、すまぬ!少し時間を稼げるかの!?」

「あぁ!問題ねぇ!」

「頼むのじゃ!解析は流石に無理じゃが......!」

「ナレアちゃん少し下がって!私が前に出る!」

ナレアさんと入れ替わりリィリさんが相手の側面に立つ。
ナレアさんは少し離れた位置でゴーレムの観察を続ける。
しかし、リィリさんが前に出ると同時にゴーレムが後ろに下がった。

「なんじゃと!?」

下がったゴーレムと入れ替わるように軽装のゴーレムが部屋から出てくる。
ナレアさんが驚いたところを見るとゴーレムがそんな動きをするのは珍しいみたいだね......本当に厄介だね......!

しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

俺とシロ

マネキネコ
ファンタジー
【完結済】(全面改稿いたしました) 俺とシロの異世界物語 『大好きなご主人様、最後まで守ってあげたかった』 ゲンが飼っていた犬のシロ。生涯を終えてからはゲンの守護霊の一位(いちい)として彼をずっと傍で見守っていた。そんなある日、ゲンは交通事故に遭い亡くなってしまう。そうして、悔いを残したまま役目を終えてしまったシロ。その無垢(むく)で穢(けが)れのない魂を異世界の女神はそっと見つめていた。『聖獣フェンリル』として申し分のない魂。ぜひ、スカウトしようとシロの魂を自分の世界へ呼び寄せた。そして、女神からフェンリルへと転生するようにお願いされたシロであったが。それならば、転生に応じる条件として元の飼い主であったゲンも一緒に転生させて欲しいと女神に願い出たのだった。この世界でなら、また会える、また共に生きていける。そして、『今度こそは、ぜったい最後まで守り抜くんだ!』 シロは決意を固めるのであった。  シロは大好きなご主人様と一緒に、異世界でどんな活躍をしていくのか?

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...