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4章 遺跡

第140話 遺跡について語るのじゃ

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「とりあえず明日の方針はどうする?」

拠点の設営も終わって人心地着いた頃、レギさんの一言からミーティングが開始した。

「ふむ、とりあえず先遣隊の痕跡を探す必要があるじゃろうな。」

「危険を追いかける形になるな......。」

「他に情報がないからのう。まぁ無いとは思うがいきなり奥に向かっているようだったらとりあえず先遣隊は無視して入り口付近の探索を重点的に行うのじゃ。」

『少しよろしいでしょうか?』

レギさんとナレアさんが方針を話しているとファラが会話に入ってきた。

「今のは......ファラじゃな。どうしたのじゃ?」

『良ければ先行して偵察に行かせてもらえないでしょうか?』

「ふむ......しかし単独は危険じゃぞ?」

確かに一人で遺跡に入るのは危険だろうけど......普段から一人で遺跡探索をしているナレアさんが言うと説得力があるような無いような......。

『はい、承知しております。ですがネズミを狙っている罠の類は私には通じませんし、人を狙っているものなら作動しないと思います。』

「それは......確かにそうじゃな。」

『警備の類でも同じでしょう。ただ私では扉を開けるのに私は適していないのでマナスを連れて行きたいと思っています。』

俺の肩の上でマナスが弾む。
既に相談済みって感じだね。

「ふむ......ケイ。どうじゃろうか?彼等を先行させてもいいじゃろうか?」

「ナレアさんが気にされないのでしたら僕は構いませんよ。二人ともとても頼りになりますし、いざという時も逃げることくらいは出来ると思います。」

「妾は別に一番乗りがいいと言う訳ではないからのう、偵察して情報を集めてくれるならそれに越したことはないのじゃ。ではファラ、マナス。先行偵察を頼むのじゃ。」

『承知いたしました。明日の日の出頃までには戻ります。』

「宜しくね、ファラ、マナス。でも無理は駄目だよ?危険だと思ったら必ず退いてね。少なくともこの遺跡には先遣隊を全滅させた何かがあるはずだからね。」

『畏まりました。けしてケイ様の御心に背くようなことは致しません。』

肩の上でマナスも了解と言うように弾む。
二人とも約束してくれた感じだから大丈夫だろう。
俺達は遺跡に向かうファラ達を見送った後ミーティングに戻ったのだが......。

「明日の朝にファラ達が情報を持ってきてくれるなら、打合せはそれからの方がよさそうだな。」

「そうじゃな。というかファラ達なら遺品の回収もしてくれそうじゃが......。」

「それは現場保存に努めそうな気もするな......。」

「それもそうじゃな。」

打合せはここまでの様なので少し遺跡についてナレアさんに聞いておこうかな?

「ナレアさん、この遺跡と言う意味では無く一般的な遺跡について詳しく聞いてもいいですか?気を付けるべき事とか色々と。」

「ふむ、確かレギ殿やリィリも遺跡は初めてじゃったか?」

「おう。」

「うん、初めてだよ。」

「ならば基礎から説明するか。遺跡の何たるかは以前話したがそれは大丈夫じゃな?」

「およそ二千年前から四千年前の建築物で、魔物が入り込んでいる場合や当時造られたゴーレムが配置されていることもある、でしたっけ?」

「うむ、後は罠があったりじゃな。基本的にはそんなところじゃ。魔物に関しては二通り、どこかから入り込んで巣にしている場合と遺跡の中で発生したアンデッドがいる場合じゃ。まぁどちらも油断は出来ぬが、アンデッドの場合はかなり注意が必要じゃ。長い年月を経たアンデッドは強力な力を有することが多い。」

強力なアンデッドか......そう言えばみっちりアンデッドが詰まっている遺跡があったとか言っていたっけ......?
絶対に見たくない......。

「後、これは一度実際にあった遺跡の話じゃ。古代の魔物が生き残っていたことがあったらしくてな、その時の被害はとんでもない物であったと聞く。」

「それは聞いたことがあるな。確か国が一つか二つ滅んだとか。」

「うむ。妾が調べたところによると小国が二つ滅んだようじゃ。遺跡から解き放たれ散々暴れ回ったその魔物は、何が原因かは分からぬが死んでいたそうだ。環境が合わなかったとか古代の実験によって短命だったとか言われておるが......まぁ全て推測じゃな。」

「遺跡ってダンジョンより危険ではないですか......?」

「ダンジョンも遺跡も場所によりけりじゃな。」

今の所、遺跡には恐ろしいイメージしかありませんが......安全が確保された遺跡の方が浪漫はあるな......うん。

「後はゴーレムじゃな。遺跡の警備をしておる魔道具なんじゃが、まぁ中々に強力な兵器じゃな。動きの速い物や力の強い物、とにかく頑丈な物と様々な種類がおるが総じて強い。倒すと魔道具としての効果が無くなる為、調べて再現することも出来ない厄介な奴じゃ。」

ゴーレムか......弱体魔法は効かなさそうだよね......。

「拠点防衛をさせるには打って付けじゃろうな。命令には忠実、食事も睡眠も必要としない。捕虜にされても何も喋らない。鹵獲されても解析されない。理想的じゃな。攻略する側からすれば厄介な事この上ないがのう。」

「本当に厄介ですね......僕の戦い方とは相性が悪そうです。」

「痛みとかは感じないだろうしな。相手を削る戦い方より一気に叩き潰すってやり方の方が良さそうだな。」

「うむ、レギ殿の言う通りじゃ。この遺跡に何かがいるのは間違いないが......ゴーレムの可能性はかなり高いな。この辺には他に遺跡は発見されておらぬし別の入り口から魔物が入ったとは考えにくい。場所的にも研究施設と目をつけておるし、そういう場所には強力なゴーレムが配備されていることが多いのでな。」

みっちりアンデッドよりはいいけど......戦い方は考えないとな......。

「地下の遺跡じゃ。気を付けないとあっさり崩落する可能性もある。迂闊な攻撃は仕掛けるでないぞ?」

そっか......いつもと違ってそういうのにも気を付けないといけないのか......。
横でレギさんも難しい顔をしている。
これはレギさんも失念していた感じだね。

「聞けば聞くほど厄介だな......。」

「その上罠もあったりするんだよね?」

「罠はこちらを捕獲するようなものが多いのう。まぁ偶に即死するような罠もあるから油断は禁物なのじゃ。」

「......ナレアさんは良く一人で遺跡に潜って無事でいられましたね。」

「まだダンジョンでずっと一人でいた私の方が楽だったんじゃないかな......?」

いや、流石にリィリさんのそれは相当過酷だったと思いますよ......?

「何事も経験じゃ。慣れてくれば罠はある程度見つけられるしのう。罠を見つけるには罠を仕掛けた奴の事をよく考えるのじゃ。意味もなく罠を仕掛けるやつはおらんからのう。」

「なるほど......研究施設であれば、侵入経路には捕獲や警報用の罠。研究成果の近くには強力な罠って感じですかね?」

「そんな感じじゃな。まぁ遺跡の持ち主が変人じゃとかなり大変じゃったりするがのう。どの時代にも変な奴は少なくないのじゃ。」

思っていた以上に遺跡は難しい場所だな......。
ダンジョンの方が素直な感じがして楽そうだ。
やっぱり人間が一番怖いってことかな......。

「基本的な事はこんな所じゃな。後は、妾が今までに潜った遺跡の話をするとしよう。愉快な遺跡から二度と行きたくないような遺跡までより取り見取りじゃ。」

そう言ってナレアさんは楽しそうに笑う。
俺は現時点でかなり遺跡に対して恐怖を覚えているので、愉快な遺跡とやらの話を聞きたいところだけど......ナレアさんの愉快だからなあ......。

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