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3章 龍王国

第91話 お願い

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それぞれの移動手段お披露目や手合わせが終わった後、街に戻った俺達はそのまま宴会に突入した。
因みにシャルの地獄の特訓によってボロボロにされぐったりと横たわっていたグルフには回復魔法を掛けて動けるようにはしておいた。
ナレアさんがいたので全快と言うわけにはいかなかったけど......。

「乾杯なのじゃ!」

「「「乾杯!」」」

ナレアさんが音頭を取り宴会が始まる。
今日の会場はナレアさんのお勧めで料理大会には出ていなかったがこの街では有名な店らしい。
リィリさんは早速幸せそうに食事を進めている。

「今日は中々有意義な一日だったのじゃ。三人とも見事な腕前じゃ。」

「ナレアさんこそ凄かったです。魔術師の方はあんなに多彩な事が出来るのですね。」

「ほほ、奥の手はまだまだあるのじゃ。遺跡は危険が多いからのう、色々な手段を持っておかねばならぬのじゃ。」

「遺跡ですか......遺跡ってどんな所なのですか?」

「そういえばケイは遺跡に行ったことがないと言っておったな。ふむ......。」

そういってナレアさんがレギさんの方を見る。
レギさんは少し笑うと頷いて見せた。
これはあれかな......保護者に危険な場所の説明をしてもいいのか確認を取っている親戚の人的な......。
少し引っかかる所がないでもないけど、納得できる部分もあるから文句はない......。

「一応レギさんから......古い建物とだけ聞いてます......。」

でも少しだけ告げ口をしておこう。
ナレアさんが半眼でレギさんの方を見るとレギさんがすっと目を逸らす。

「まぁ俺も遺跡はあまり詳しくなくてな......。」

最初にレギさんから遺跡の話を聞いた後、デリータさんに聞いてみようと思って忘れてたな。
ナレアさんがため息をついてからこちらに向きなおる。

「全く......遺跡程面白い場所はないというのに......遺跡とは古代に滅んだ文明の建造物の事でな、朽ち果てている場所が多いのじゃが、当時の重要施設は頑丈に作られていて今でもかなり原型が残っておるのじゃ。」

「どのくらい昔のものなんですか?」

「新しいもので二千年程前、古いものだと四千年程前のものじゃ。」

「四千年ですか......。」

神域が出来た頃のものもあるってことかな?
確かにその頃の魔道具だったら魔術式無しの魔法が込められた物があってもおかしくはないかもしれない。

「四千年前と言われているものは流石に殆ど見つからないのじゃ。地上ではまず見つからないしのう、ごく稀に地下施設が見つかることもあるが入り口が潰れているものが殆どじゃな。崩落などで偶然見つかる感じじゃ。」

「なるほど......。」

「遺跡の中も劣化が激しく出土する物も学術的な価値以外は殆どないものが多いのう。逆に比較的新しい遺跡ではまだ使える魔道具が良く出ることが多い。冒険者に人気があるのは新しい遺跡の方じゃな。学者連中にとってはどの年代のものでも垂涎物じゃが。」

「ナレアさんはどうなんですか?」

「妾はどの年代のものも大好きじゃ。魔道具も好きじゃが歴史を知るのも好きなのじゃ。」

「へぇ......確かに面白そうですね。僕も歴史とか大好きです。」

「ほほ、ならば今度一緒に遺跡に行ってみるかの?探索済みのものでも歴史の探求と言う意味では何の問題もないのじゃ。」

「機会があったら是非お願いします。」

「うむ。楽しみにしておくのじゃ。探索済みのものなら殆ど危険はないしのう。」

「そういえば遺跡もダンジョン並みに危険な場所なのでしたっけ?」

「そうじゃな。魔物が偶に入り込んで繁殖していたり、アンデッド系の魔物がみっちり詰まっていたりすることもあるのじゃが......。」

みっちり詰まったアンデッド......絶対に見たくないな......いや、時間が立ちすぎて全部腐り落ちて残っているのは骨だけって可能性もあるか?

「物凄い腐臭で気絶しかけたこともあったのう......。」

あ、これついてる......みっちり詰まって肉も残っている......。

「まぁ、本当に危険なのは魔物よりも罠とか警備じゃな。」

「罠はともかく警備ですか?」

「うむ、比較的新しい遺跡にはゴーレムと呼ばれるものが配置されていることがあってのう。これが実にいろいろな種類がおってのう。しかも魔物よりもはるかに強い個体が多いのじゃ。」

ゴーレム......きっと俺たちの世界で有名な弱点はないんだろうな......しかも魔物より強いのか......。
でも警備をするってことなら魔物の襲撃があるこの世界なら魔物より強くないと意味がないか。

「特に遺跡がしっかり残っていれば残っている程、強力な個体や危険度の高い罠が残っているのじゃ。」

「遺跡がしっかり残っているほど頑丈に造られた重要な施設である可能性が高く、警備も厚いってことですね?」

「うむ。妾も未発見の遺跡を見つけて喜び勇んで飛び込んだ時は死にかけたもんじゃ。」

「......無茶苦茶してますね......。」

「目の前に誰も足を踏み入れたことのない遺跡があったのじゃ......とりあえず突っ込むじゃろ。」

「気持ちは分からないでもないですけど......。」

「ダンジョンには必要がない限りあまり足を踏み入れることはないが、遺跡は浪漫の塊じゃからのう。同じように危険度が高いのなら断然遺跡にいくべきじゃ。まぁ早い所処理しないといけないようなダンジョンであれば話は別じゃがのう。」

「なるほど......。」

並々ならぬ情熱を遺跡に向けているけれどそればかりを優先するわけじゃないってことか......。

「古い時代の遺跡にある魔道具は今使われている魔道具とは全くの別物じゃ。魔力が少なければ発動させることが出来ないという点以外にも......効果や機能が凄すぎるのじゃ。」

ナレアさんの言う古い時代の遺跡にある魔道具ってのは魔法を封じ込めた魔晶石を使った魔道具の事だろう。

「ナレアさんが使っているフロートボードみたいな魔道具ってことですよね?」

「うむ、その通りじゃ。まぁその魔道具を使いながらレギ殿達には負けて、リィリ殿にもぎりぎりじゃったしのう......。」

「まぁ所詮は模擬戦だからな。実戦で戦っていたら俺は確実に負けているさ。」

レギさんの言う通り多分もっと威力の高い魔道具もナレアさんは持っているはずだ。
怪我をさせないような魔道具を選んで使っていたに違いない。
剣なんかと違って手加減が難しそうだしね......。

「それもどうかのう......。」

ナレアさんはコップに残っていた酒を一気に飲み干す。

「話は変わるのじゃが......実は、お主らに相談があるんじゃが......。」

そう言ってナレアさんは居住まいを正す。

「相談?」

レギさんがナレアさんに先を促す。

「うむ、妾は遺跡専門の冒険者と言っても過言がなくてな。通常の冒険者が受けるような依頼は、ランクを上げるのに必要な分しか受けたことがないのじゃ。」

ナレアさんは一息ついて続ける。

「前に少しだけ話したと思うが、今回龍王国に来たのは知り合いに呼ばれたからなのじゃ......それで内容はまだ詳しく聞いていないのじゃが、どうやら厄介ごとの解決をして欲しいというような話でな......。」

「なるほどな......。」

「遺跡絡みであれば何とでもできるとは思うのじゃが......どうやらそうではないらしくてな......出来れば腕の立つ仲間を連れて来て欲しいと言われておるのじゃ。」

レギさんが俺の方を見て顎で先を促すようにジェスチャーをしてくる。
今レギさん達には俺の用事に付き合ってもらっている状態だ。
俺に任せるってことだろう。

「何故僕たちなのですか?」

「恥ずかしながら、あまり冒険者の知り合いがおらなんだ。ダンジョン攻略者であるケイ達なら実力は十分じゃし、手合わせをしてもらってしっかり確認させてもらったしのう。人柄についてはまだ付き合いも短いが......妾は信頼出来る者達だと思っておる。」

「そうですか......。」

「ケイはいやらしい所があるがのう。」

「さて、話は以上ですね。じゃぁそろそろお開きにしましょうか。」

席を立とうとした俺をナレアさんが引き留める。

「待つのじゃ!ちょっとしたおちゃめではないか!」

まぁこちらも冗談ですけどね......。
なんでちょこちょこ余計な一言を挟んでくるんですかね......。

「......わかりました。少し皆で相談させてもらってもいいですか?明日の朝には返答します。」

「うむ、いきなりこんな話をして済まなかったのじゃ。後これはちょっとお願いなのじゃが......この話を受けなかったとしても......王都までの道中一緒に行かぬか?」

「えぇ、喜んで。」

少しだけ目線を逸らしながらもじもじしていたナレアさんだったが、俺が返事をすると笑顔になってこちらを見た。

「感謝するのじゃ。では妾は先に引き上げさせてもらうとしよう。レギ殿、リィリまた明日なのじゃ。」

「おう、また明日な。」

「うん、また明日ね!ナレアちゃん!」

ナレアさんが挨拶をして席を立つ。
その後ろ姿を見送った後、俺はレギさん達に切り出した。

「どう思いますか?」

「俺は別に構わないと思うぞ?」

「うん、ナレアちゃんの手伝いなら別にいいんじゃないかな?ケイ君も手伝ってあげたいんでしょ?」

「まぁ......そうですね。僕の用事なんて急ぐものでもないですから。じゃぁナレアさんの手伝いをすると言うことで。」

あっさりと決まってしまった。
ナレアさんに時間を貰った意味殆どなかったな......。

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