62 / 528
2章 ダンジョン
第61話 やりたい事
しおりを挟む祭り開催中の二日間、色々と面白い食べ物を見つけることは出来たがわたあめを発見することは出来なかった。
非常に残念だったが、商人ギルドで砂糖の産地は教えてもらったのでその内行ってみるのもいいだろう。
それとナレアさんには再会することは出来なかった。
初日に後ろの方で聞こえた悲鳴が最後だ......あれが別人の悲鳴だったらそれはそれで面白いけど......。
非常に惜しい気もしたがこれも縁という奴だろう、それに何となくではあるがナレアさんにはまた会えそうな気もするしね。
とりあえず祭りの間はレギさん達と一緒にぶらぶらと催し物や出店を見学して回った。
殆どが食べ物の屋台だったが......この世界は娯楽が少ないのかな?
遊戯の様なものは殆ど見られず、土産物か食べ物といった感じのものばかりだった。
なんか玩具とか作ったら売れるかな......?
玩具屋か......ありかもしれないな......まぁ定住するわけじゃないからその内だな。
まぁそれはさておき、今は料理に集中しよう。
「ハーネルさんのおすすめのお店は外れがないですね。」
この街に滞在して三週間、晩御飯はハーネルさんのお勧めの店で食べているのだがどこも非常に美味しい。
値段もリーズナブルだし、非常にいい人にお店を紹介してもらえたな。
「あぁ、見た目に似合わず中々のグルメだな。」
なんか失礼なことをレギさんが言っている様だが、なんとなく同意してしまうな......。
ごめんなさい、ハーネルさん。
「レギにぃ失礼だよ。おかげでおいしいご飯が食べられているんだからもっと感謝するべきよ。」
「当然、感謝はしている。なぁケイ?」
「えぇ、当然です。」
俺とレギさんは二人で感謝感謝と言いながら食事を進める。
「祭りは終わりましたし、明日はギルドに朝の内に挨拶に行ってから帰りますか?」
「そうだな、特に急ぐ必要もないが。早い内に街を出る方ががいいだろうな。」
「帰りも送ってくれるのかしら?」
「一応そう聞いている、祭りの翌日に帰ることも伝えてあるから用意はしてくれているだろう。」
そういったレギさんは一拍置いてから俺の方に向きなおる。
「ケイ。宿に戻ったら話があるんだが、いいか?」
「えぇ、大丈夫ですよ?」
レギさんは真面目な表情をしている。
何か深刻な話かな......?
「じゃぁ後で部屋にいく。飲み物なんかはこっちで用意して持っていくから適当に待っといてくれ。」
「わかりました。」
食事が終われば後は特に用事はない、レギさんが来るまでシャルのブラッシングでもしながら待っているとしよう。
宿に戻ってシャルにブラシをかけているとドアがノックされた。
レギさんが来ることは聞いているのでドアを開けるとそこには酒瓶やコップを抱えたレギさんとつまみになる物をもったリィリさんがいた。
レギさんだけじゃなかったのか。
「いらっしゃい。レギさん、リィリさん。どうぞ、中へ。」
二人も招き入れベッド横のサイドボードを部屋の中央に引っ張り出す。
部屋にある小さなテーブルだけじゃつまみの置き場が足り無さそうだ。
「おう、すまねぇな。あれもこれもと持ってきちまった。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
お酒を注いで全員がコップを持ったところでレギさんが音頭をとる。
「ダンジョン攻略に関しては何度も乾杯してるからな......今日は、リィリの下級冒険者昇格に。乾杯。」
「「乾杯。」」
軽くコップを打ち合わせてリィリさんにお祝いを言う。
「それにしても随分早いペースで仕事を受けていましたね。」
「えぇ、ちょっと早めに昇格しておきたかったのよ。」
「何かあるんですか?」
「初級だとギルド証に有効期限があって自由に動くのが難しいからね。下級になってしまえばそれもなくなるでしょ?」
確かに有効期限はあったけど半年くらい猶予なかったっけ?
そこまで急ぐ必要はなかったような......?
「まぁ、その辺は今日話に来たことにも関係あるんだわ。」
レギさんが頭を掻きながら苦笑している。
「何か問題が起きたんですか?」
リィリさんがアンデッドということはうまく隠せているはずだ......デリータさんにも問題ないとお墨付きも貰った。
そもそもこの世界は魔物にも忌避感は特になく人と共存している魔物も少なくはない。
なので万が一バレても何とかなるんじゃないだろうかって軽い感じだったけど......。
「いや、そういうわけじゃない。なぁ、ケイ。初めて会った時に別の国でも使える身分証が欲しいから冒険者になるって言ってたよな?」
「えぇ。」
「普通、そんな理由で冒険者になるやつはいねぇからな......だからな、何か目的があるんじゃないかと思ってな?」
「そうですね、冒険者になったのは僕にとっては行き掛けの駄賃と言いますか......レギさん達には悪いと思いますが......身分証と当面の生活費の為です。僕の目的は......んー結構色々あるんですよねぇ。」
「そうか......。」
......なんだろう?
レギさんから妙なプレッシャーを感じるというか......。
「......。」
黙り込んでこちらを睨んでいるレギさん......冒険者になる動機が気に入らなかったのだろうか......でも前にも言ったことあったような気がするけど、その時は普通だったような......。
「レギにぃ......何緊張してるのよ。」
レギさんはお酒を呷ると大きく息を吐く。
「......そうだな。柄にもない。ケイ、お前の目的を聞かせてもらってもいいだろうか?」
「僕の目的ですか?それは別に構いませんが......何故でしょうか?」
「ケイの事だからな。不思議な目的であったとしても悪辣なものだとは思わないが......聞いておきたくてな。」
なんかちょっとはぐらかされている気がするけど......不思議って......。
「うーん、簡単に言うと......母の知人に手紙を配達、連絡を取りたい人達がいるから連絡方法の模索。後は母からある物を盗んだ奴を懲らしめる。そんな感じです。」
「取り返すじゃなくって懲らしめるなのか?」
「えぇ、消耗品ですからね......母は全然気にしていませんでしたが......個人的に一発くらいは殴ってやろうかと思ってます。」
ただ手掛かりが何もないんだよね......母さんも心当たりがないって言っていたし。
「なんかどれも些細なものだな......他にはないのか?」
「うーん、後は色々と世界を巡ってみるくらいですかね?土産話は多いほうがいいので。」
「なるほど......。」
レギさんは考えるそぶりを見せた後、リィリさんを見る。
リィリさんはレギさんに微笑みながら軽く頷く。
「ケイ、俺たちを......いや、お前の目的を手伝わせてくれないか?」
「僕の目的を......?さっきレギさんも言っていましたが些細なものですよ?」
「俺はお前に手伝ってもらっただろ?なら今度は手伝いたいんだ。」
「えっと......些細なものではありますけど、手紙の配達はかなり色々な場所を巡らないといけないですし、他の二つはかなり当てもない感じなんですけど。」
「正直に言おう。俺はお前に言葉では言い表せない程感謝している。返しきれないほどの恩があると思っている。」
返しきれないほどの恩を感じているのは僕の方なんですが......。
目を丸くする俺にレギさんは言葉を続ける。
「俺はお前のお蔭で、十年近く果たすことのできなかった誓いを果たし......二度と会えないと思っていた大切な人に再会することが出来た......。」
「それは......。」
確かに手伝いはしましたけど......トラウマを乗り越えてダンジョンに足を踏み込んだのはレギさんの力ですし、レギさんだったら俺がいなくてもいつかは......。
「あの時レギにぃ達がダンジョンに来ていなかったら......そう遠くないうちに私はまた死んでいたと思う。死ぬって表現が正しいかどうか分からないけれどね。」
俺の表情から言いたいことを察したのかリィリさんが言葉を重ねる。
「勿論、押し付けるつもりはない。ケイには魔法って言う俺達にはない力があるし、仲間も頼りになるやつらばかりだ。寧ろ足手まといかもしれない。」
「そんなことはありません!レギさんもリィリさんもとても頼りになります!」
「頼りにしてくれるのは嬉しいが、力不足は事実だぜ?」
おどけたように言うレギさんだがその目は力強くこちらを見ている。
「どれだけ時間がかかるか分からないですよ?」
「俺は今の所他にやりたいことがないんだ。」
「私は今こうしているだけで幸せよ。だから、恩返しに時間を使えるのはとても有意義なことだわ。」
俺の忠告の様なものにレギさんとリィリさんは迷いなく返してくる。
正直、レギさん達が手伝ってくれるのはとても助かる。
この世界についての情報はかなり不足していると思う。
母さんから聞いていることや、シャルの知識もあるが......今現在の知識については少し心もとない。
それに......俺はレギさん達の事を信頼している。
まだ一緒にいたいと思っている。
ならば......。
「シャル、二人に全部伝えようと思うけど......いいかな?」
隠し事はするべきではないだろう......。
『はい。私はケイ様が望む結果を得るための牙です。ケイ様のなされることに否はありません。』
......丸投げ?
いや、違うか......信頼と、何があっても力になってくれるって言ってくれているのか......。
『勿論、間違っていると思った時はちゃんと忠告しますよ。』
少しだけ、感じてしまったプレッシャーにシャルがフォローを入れてくれる。
何というか、まだまだ頼りないね......もっとしっかりしよう。
「うん、ありがとう。」
シャルにお礼を言ってからレギさん達に向きなおる。
「少し長くなるかもしれませんが、これからお二人に話しておきたいことがあります。」
俺の全てを二人に話そう。
2
お気に入りに追加
1,718
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
俺とシロ
マネキネコ
ファンタジー
【完結済】(全面改稿いたしました)
俺とシロの異世界物語
『大好きなご主人様、最後まで守ってあげたかった』
ゲンが飼っていた犬のシロ。生涯を終えてからはゲンの守護霊の一位(いちい)として彼をずっと傍で見守っていた。そんなある日、ゲンは交通事故に遭い亡くなってしまう。そうして、悔いを残したまま役目を終えてしまったシロ。その無垢(むく)で穢(けが)れのない魂を異世界の女神はそっと見つめていた。『聖獣フェンリル』として申し分のない魂。ぜひ、スカウトしようとシロの魂を自分の世界へ呼び寄せた。そして、女神からフェンリルへと転生するようにお願いされたシロであったが。それならば、転生に応じる条件として元の飼い主であったゲンも一緒に転生させて欲しいと女神に願い出たのだった。この世界でなら、また会える、また共に生きていける。そして、『今度こそは、ぜったい最後まで守り抜くんだ!』 シロは決意を固めるのであった。
シロは大好きなご主人様と一緒に、異世界でどんな活躍をしていくのか?
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界なんて救ってやらねぇ
千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部)
想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。
結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。
色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部)
期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。
平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。
果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。
その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部)
【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】
【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-
ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!!
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。
しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。
え、鑑定サーチてなに?
ストレージで収納防御て?
お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。
スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。
※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。
またカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる