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1章 初級冒険者

第35話 通路で戦いたくなかった

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リノちゃんをシャルに任せて前に出る。
分かれ道に伏せ、先にここに来るグループを奇襲で片づける。
まぁそんなうまく行くとは思ってないけど、出来る限り合流される前に数を減らしておきたい。
後は後ろに下がって魔物が合流したとしても挟まれないようにする、作戦とも呼べないような代物だが今はこの程度しか思いつかない。
大事なのは手早く倒すこと、長引けばこちらはどんどん不利になっていく。
最初の三匹が近づいてきた、曲がり角に姿を現した瞬間にケリをつける......。

『ケイ様、二匹はコボルト、一匹はコボルトリーダーです。前にコボルトが二匹、後ろにリーダーです。それと......恐らくもう気付かれています。』

......なるほど、獣っぽいし気付かれても不思議じゃないね......。
......いきなり作戦失敗かよ!?
まぁそれは仕方ないとして、相手がコボルトなのはいいニュースだ。
後ろに控えているコボルトリーダーは一息でとは行かないけど、残りの2匹は不意を突かなくても十分圧倒できるはずだ。
耳を澄ますも既に足音が止まっている。
こちらの位置はバレているし警戒してこれ以上前に出てこないだろう......。
一つため息を吐いて角を飛び出し一気に駆け出す!
既に剣先を伸ばしているナイフで左の一匹に向かい軽く斬りかかる。
後ろに下がるように避けたコボルトを蹴り飛ばしコボルトリーダーにぶつけ、その反動で後ろに下がり右から襲い掛かってくるコボルトの爪を避ける。
左爪を大振りで振ったためこちらに背中を見せているコボルトの首にナイフを叩きこむ。
しかしこちらも体勢が不十分で首半ばで刃が止まってしまう。
辛うじて息があるのかコボルトの体はまだ魔力に還らない、しかし重症には違いなくそのまま崩れ落ちていくコボルト。
ナイフから手を放しコボルトの体を無理やり起こすように顎を蹴り上げる。
そこでこと切れたか魔力が霧散し、空中にナイフだけが残された。
それをつかみ取り先ほど蹴り飛ばしたコボルトへ距離を詰める。
コボルトリーダーは体勢を崩したコボルトが邪魔でまだ前に出られない。
手放したことで元の長さに戻っているナイフでコボルトの喉を引き裂く。
致命傷ではあると思うがすぐに魔力に還らない、その隙に一気に後方へ飛び分かれ道の手前まで戻る。
もう一方の道から走ってくる音が聞こえてくる。
やっぱり来るよね......姿は確認できなかったが多分そこまで距離は離れていない。

『もう一方の通路から三匹接近中です!おそらく十数秒で接敵します!お気を付けください!』

十秒でコボルトリーダーを倒すのはきつい、さっきの広間みたいに広ければ動きで翻弄して隙を作って倒せるけど、ここは狭すぎる。
真正面からやり合うしかない......一直線に吹き飛ばせるような魔法が使えたらなぁ......ってまたない物ねだりしてるぞ、落ち着け......。
壁とか天井を蹴って立体機動みたいなことが出来れば隙を作れると思うけど、いきなりそんなこと出来るわけがない......出来たらかっこいいし今度練習してみようかな......。

「ガアァァァァァァァ!」

余計なことを考えていた俺を現実に引き戻すようにコボルトリーダーが吠える。
それと同時に邪魔になっていたコボルトが魔力に還り、コボルトリーダーがこちらに向かって駆け出してきた。
あ、まずい!
二メートル以上の巨体の突進、あんなもの受け止められるはずがない!
距離を開ければ当然相手は距離を詰めてくるに決まってるじゃないか!
この戦闘始まってから全然上手いこといってないな......。
シャルから後で怒られそうだな......。
ちょっと気分的にへこみつつ壁を蹴り三角跳びの要領で高く跳ぶ。
そのまま身体強化を強めにかけた体でコボルトリーダーの横っ面に回し蹴りを叩きこむ!
次の瞬間相手の頭がはじけ飛び、次いで魔力へと還る......一瞬だけどグロでしたよ......。
あぁ、これもシャルの減点対象だよね......慌てると魔力操作が甘くなるな......いや、ここはポジティブに考えよう。
合流前に片方を殲滅出来たんだ、落ち着いて次のグループに対応出来る。
この位置からじゃ次のグループは曲がり角の向こうになるのでシャルから魔物の情報は貰えていない、今までの流れからしてコボルトだと思うけど面倒だったり強力なやつじゃないといいなぁ。
そんなことを考えていると角から飛び出してきたのはコボルト二匹。
視認と同時に一気に接近して近くにいた方の肩口をめがけてナイフを滑り込ませる、胴の半分まで刃がめり込んだところで霧散して消えるコボルト。
突然消えた相棒に驚いているのか動きが止まるもう一方のコボルトの腹にナイフをねじ込み捻る。
流している魔力を止めて元のサイズのナイフに戻すとコボルトは崩れ落ちる。
倒れたコボルトの傷口から血があふれ出し血だまりを作った。
本体が生きている間は血が流れるんだな......いや、ものすごくどうでもいいんだけど。
あまり距離を開けない程度に後ろに下がり体勢を整える。
最後の一匹が姿を現すと同時に倒れたコボルトが消える......。
しかし、何というか......でかっ!?
のそっと現れた最後の一匹はコボルトには違いなかったが、とにかく大きかった。
身長はコボルトリーダーと同じくらいだけど筋肉増し増しと言った感じだ。
重厚というか圧迫感が半端ない。

「これは......リーダーじゃないよね?」

『ケイ様!それはコボルトジェネラルです。コボルトリーダーより上位種で力は強いですが単体で戦う分には似たようなものです!』

「......なるほど。」

力が強いか......この狭さであの巨体は動きにくそうだ。
こちらも横の移動が殆ど出来ないとは言え、それ以上に相手の方がペナルティは大きいだろう。
まぁ、正直広い場所で戦いたいところだけど......。
俺の方を見るコボルトジェネラルは唸るばかりで近づいてこようとしない......。
こいつも慎重派か......コボルトは警戒心が強いのかな。

「早く倒したいこっちとしては面倒なことこの上ないんだけどね......。」

にらみ合っていても仕方ない......急ぎたいこちらから仕掛けるしかないか......。
こいつも間合いに入っても攻撃してこなかったら面倒だな。
そんなことを考えながら相手の間合いに入ろうとしたところでコボルトジェネラルが先制を仕掛けてきた!
油断していたつもりはなかったが機先を制された。
とっさの対応に遅れ後手に回る。
体が大きく腕を振り回すことが出来ない分突きが主体の攻撃だ......大丈夫、これなら捌ききれる。
突き出される爪を掻い潜り距離を詰めようとするが振り払うような一撃が放たれ、それを避けるためにまた距離を開ける。
距離を開けると追撃はしてこない......こいつ時間を稼いでいる......?

「ガアァァァァァァァ!」

突然吠えたコボルトジェネラル、うん、これ絶対仲間を呼んでるね......やばい!
もう一度間合いに踏み込み腕を斬り飛ばす......そのまま肉薄して相手の体制を崩して制圧......これでいくか......。
一歩間合いに踏み出すと牽制するような一撃を放ってくる。
その爪を狙ってナイフを振るうとあっさりと攻撃を止め、後ろに下がるコボルトジェネラル。
こいつ、でかい図体してる癖に相当慎重派だ......。
仲間が来るのを待って押しつぶせばいいとか考えてるな......ウザいったらないな!
でもここで焦って飛び出せば痛い目を見るだろうね。
まぁ行くんだけどね!
身体強化のレベルを引き上げて強引にぶっ飛ばす!
交通事故事案でもいいから今はこいつを手早く処理してここから離れないと!
そう考え、行動を移そうとした時だった。

「らあぁぁぁぁぁぁ!」

気合を込めた咆哮がコボルトジェネラルの後ろから聞こえてきた。
この声はレギさん!?

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