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1章 初級冒険者

第11話 過剰反応とは弱点の発露である

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「なんで入り口閉めてるんだ?なんかあったか?」

そういいながらレギさんが店の中に入ってきた。

「あら?意外と早かったわね?」

「そうか?もうそろそろ日が暮れ始めるぞ?」

「もうそんな時間なのね。気付かなかったわ。」

結構長いこと没頭していたらしい、4時間くらいたっていた感じだろうか。
目標だった魔力操作も出来るようになったし、魔術という新しいものを知ることが出来た。
でももう少し詳しく魔術についてデリータさんに聞いてみたいな。
魔法はなんというか力そのものって感じだが魔術は魔力を使った技術って感じだろうか
出来れば魔術を使えるようになってみたい、魔術式をかけるようになれば両親に連絡することが出来るかもしれない。

「あ、そのスライムはこっちに入れてくれるかしら?」

デリータさんが差し出してきたビーカーに手の上でぷるぷるしているスライムを入れた。
デリータさんはすぐに出てこようとするスライムを抑えてビーカーをひっくり返して重しを載せ閉じ込める。

「それでにーちゃん、どうだ?その、魔力についてなんかわかったか?」

「はい、魔力操作を出来るようになりました。レギさんにデリータさんを紹介していただいたおかげです。ありがとうございました!」

「おぉ!それは良かったな!元はと言えば俺が迷惑かけたんだ、気にしないでくれ!」

自分の事のように、嬉しそうに笑いながら俺の肩をバンバン叩くレギさん。
中々派手な音が鳴って衝撃を感じるが不思議と痛みはあまり感じない。
これは魔力操作が出来るようになったおかげなんだろうか?

「おし、じゃぁ話していた宿に行って飯にしようぜ!デリータお前も来るか?」

「いえ、今日はやめておくわ。色々やりたいことが出来たし。」

そういうとデリータさんはひっくり返したビーカーを嬉しそうに撫でた。
なんか少しマッドな雰囲気を感じる......。

「そうか?じゃぁ俺たちだけで行くとするか、世話になったなデリータ。礼はまた改めてな。」

「あ、レギちょっとまって!」

「お?」

店を出ていこうとドアを開けたレギさんをデリータさんが呼び止める。
きょとんといった表情を見せるレギさんはその見た目に反してどこか愛嬌を感じる......。

「大事なことを忘れていたわ。レギ、ドアを閉めて。少し話があるの。」

「ん?おぉ、どうした?深刻な話か?」

「あ、では僕は外に出ていますね。」

何かレギさんとデリータさんで話があるみたいだし俺は外に一度出ておこう。
二人の話が終わったらお礼の件を話さないといけない。
デリータさんに渡した魔晶石は結局俺の魔力を感じるために使ってしまったのだから。

「待ちなさい。ケイ、あなたの話よ。」

デリータさんに止められた俺は出口に向かおうとして踏みとどまる。

「僕の話ですか......?」

「えぇ。レギ、この子とは以前からの知り合いなのかしら?」

「いや、今日初めて会ったぜ?」

「そう、だったら仕方ないわね......。」

「どういうことだ?」

「単刀直入に言うけど、この子が持っている魔晶石とんでもない価値があるわ。しかもこの子自身がその価値について何も知らなかったの。」

「......なるほど、それでわざわざドアを......。」

「あれだけの魔力を内包した魔晶石、それを結構な数持っているわ。大袈裟に言わなくても国が動くレベルよ。」

「......分かった、暫く俺が面倒を見る。」

「えっと......?どういうことですか?」

二人の間で何やら話が進む。
しかも俺に関することのようだけど、どういうことかしら?

「気にするな!ちょっと危なっかしいから暫く一緒にいようぜってこった!」

またバンバンと俺の肩を叩きながらレギさんが笑みを浮かべる。

「流石に殺されたりしたら寝覚めが悪いからよろしくね。それとケイ、何か聞きたい事とかあったらいつでも来なさい。その時は少し頼み事もするかもしれないからよろしくね。」

「ははっ!気に入られたな!まぁ結構頼りになるやつだ!遠慮なく頼ってやれ!」

「はい、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!」

色々と教えてもらった上にまたいつでも来ていいと言ってくれる。
街に着いてすぐ親切な人たちに出会っている......恵まれすぎてるなぁ。
いやこの世界に来てからずっとそうか......出会いに恵まれている。

「あ、そうだ。デリータさん。今日のお礼なんですけど、迷惑でなければ魔晶石を受け取ってもらえませんか?」

そう言って俺は魔晶石を3個程デリータさんに差し出す。

「さっきも言ったけどそれは貰いすぎよ。......でも、そうね。折角だから貰っておくわ。ありがとう。」

そう言ってデリータさんは苦笑を浮かべながら魔晶石を受け取ってくれた。
正直言って腐るほどある魔晶石をお礼と言って渡すのはどうかと思うけれど、魔術師であるデリータさんにはとても貴重なものらしいので、勘弁してもらいたい。

「......なるほどなぁ、こりゃ危ねぇわ。」

「......でしょう?宜しくお願いするわ。なんだったら依頼として出してもいいのだけれど。」

「気に入られたもんだな。まぁいいさ、依頼は必要ねぇ。」

二人が苦笑しながら俺を見てくる。
えぇ、そうですね、危機管理がなってないって呆れられていますね。

「えっと......さすがにもう外で魔晶石は出しませんよ?」

「それに関しちゃ大丈夫かもしれねぇが......本当に大丈夫か?それに他にも似たようなことがないって言いきれるか?」

「そう言われると......。」

自信は全くありません。
母さんから教えてもらったのは遥か昔のことだし、しかも人目線じゃない。
今の常識と乖離しているのは何もおかしなことじゃないだろう。

「だろ?まぁ田舎から出て来たばかりなら色々と知らねぇのは仕方ねぇさ。俺も最初は苦労したがすぐに慣れた。気にすんな!とりあえず2、3日どうだ?街も案内してやるからよ。」

「それはとても助かりますけど......。」

確かに色々と詳しそうなレギさんに色々と教えてもらえるのは非常に助かる。
でもそこまで世話になるのは悪い気がするのだけど......。

「まぁ、今日あったばかりのいかついおっさんに親切にされても怪しいわな。」

「いえ、そんなことは......。」

ないとは言い切れないけど......。
いや、親切心から言ってくれているのは凄く分かるのだけど、そこまでしてもらえる理由がないからな......。

「ま、とりあえず飯にしようぜ。客はほぼ来ない店だが邪魔になるしな!」

「あら?禿散らかされたいのかしら?」

「俺は綺麗な丸刈りだ!」

「剃っているいる人は過剰反応しないものよ。」

思わずレギさんの綺麗な丸刈りをガン見してしまう。
見事な丸刈りだ、剃り残しは全く感じられない。

「にーちゃんもなんか言いたいことがあるのかなぁ?」

満面の笑みでこちらを見てくるレギさんに余裕を感じられなかった。

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