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1章 初級冒険者

第7話 惚れそうだ

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「へぇ、今日この街に着いたばかりなのか。」

「はい、今まで田舎にいたのでこんな大きな街があるとは思っていませんでした。」

「ははっ、そうだな。この辺でも一番でかい街だからな。俺も初めて門の前に立った時は呆けたもんだぜ。」

「レギさんも他所から来たんですか?」

「あぁ、でももう10年くらい前の話だからな。すっかり地元って感じよ。」

レギさんの知り合いの魔法使いさんのところへ案内してもらう道すがら世間話をしていた。
初めて色々なことを聞ける機会だから情報収集を兼ねて質問を矢継ぎ早にしていた。

「魔力が使えない人っていうのは珍しいのですか?」

「あ、あぁ、そうだな。魔力を持たない奴は数万人に一人とか言われてたかな?いや、ほんとうにすまねぇ。」

「大丈夫ですって。それに僕は魔力自体はあるみたいなので。ただ使い方というか感覚がわからないので。」

「それも不思議な感じだな。普通は誰に教えてもらうでもなく自然と出来るもんだからなぁ。」

母さんも自然とできることだからこそ教えるのが難しいって言ってたな。

「なるほど......魔力......魔力......。やっぱりわからないですね......。」

目を瞑り何かが感じられないかと感覚を向けてみるものの、やはり何も感じない......。

「まぁ上手くいきゃぁ今から紹介するやつがなんとかしてくれると思うぜ!気を落とすなよ!」

「はい、田舎では学ぶことが出来なかったので楽しみです。」

「おう!後、困ったことがあったら何でも言ってくれ。出来る限り力になるからよ!」

「ありがとうございます。」

最初は絡まれてびびったけどレギさんは話してみるとすごくいい人だった。
どうやら見た目のいかつさもあってギルドから新人に絡む仕事をやらされていたらしい。
なるほど、テンプレって仕事だったんだ......。

「あ、さっそく頼らせてもらいたいことが......。」

「おう!なんだ?」

「今夜、というか当面の宿なのですが。あまり高くないところで治安も悪くないところってご存じないですか?」

「宿か......。それなら俺が使っている場所はどうだ?冒険者が複数利用していてガラがいいとはお世辞にも言えねぇが料理はうまい。利用しているやつらも顔見知りだし物取りなんか返討ちになるからな、防犯面も悪くないと思うぜ。1日銅貨50枚で飯は1品サービスだ。」

「値段的にも暫く泊まれそうなので、その宿屋教えて頂いてもいいですか?」

「おう!じゃぁそうだな。これから知り合いのところに連れていくが、魔力操作について色々話したりするだろ?その間に一つ仕事に行ってくるからそこで待っていてもらえるか?日が暮れる前には迎えに行くからよ。」

「そのお知り合いの方のご迷惑にならないでしょうか?」

「あぁ大丈夫だろ!どうせ年がら年中閑古鳥が鳴いてる店だ。商売する気もないのか自分の店でずっと本を読んでいるような奴だからな。客もほとんどこないし問題ないだろ!」

これから行くのは店なのか、長時間滞在って邪魔だと思うけど大丈夫かな......?

「うーん、わかりました。お店の方の許可が取れたらそこで待たせてもらいます。許可が出なかった場合は、ギルドとかで待たせてもらっても大丈夫ですか?」

「おう、その時は俺の名前で待ち合わせしているって受付でいってくれ。」

「わかりました。......あ、そうだ。その宿、この子も部屋に上げて大丈夫でしょうか?」

肩に乗っているシャルを示すとシャルの耳がピンと立つ。

「おぉ、そのくらいの大きさなら大丈夫だぜ。粗相とかしたら別料金取られるとは思うがな。しかしこの犬っころはなんだ?さっきギルドでケイに絡んだ時に今にも飛びかかってきそうだったんだが。」

犬っころと言われた瞬間シャルの体に力が入る。
まって!シャル!
慌ててシャルの頭を撫でてシャルを紹介する。

「この子はシャルといいます。僕の護衛をしてくれているのでレギさんに絡まれた時は警戒していたんですよ。」

「そうか、それは悪かった。お前のご主人に無体をしちまったな。詫びとして後で肉をおごらせてもらうぜ。」

そういいながらレギさんはシャルの頭を撫でる。
少し不満そうではあったがシャルは避けることもなく撫でられていた。

「っとここだ。デリータ邪魔するぜ。」

そういうとレギさんはなんだかごちゃごちゃした店に入っていく。
続いて店内に入ると薄暗い店の奥にカウンターがあり、そこでレギさんが女性に話しかけていた。
店の中に置いてあるものに興味は引かれるがまずはレギさんの傍に行くとしよう。

「レギ?特に依頼はしてなかったと思うけど。」

「あぁ、今日は仕事じゃねぇんだわ。ちょっと頼みたいことがあってよ。」

カウンターに近づいていくとレギさんと話していた女性が俺に気づく。

「あら?お客さんかしら?レギ、そのでかい体が邪魔だわ。どきなさい。」

「一言余計だ。こいつは俺のツレでケイ。」

「初めまして。ケイと申します。」

俺は軽く頭を下げて女性に挨拶をする。

「レギの知り合いにしては随分と丁寧な子ね。私はデリータよ。見ての通りこの店の店主をしているわ。」

デリータさんは20代半ばといった所だろうか?
切れ目の目に長い髪、顔立ちは、うん、とても綺麗な人だ。
所謂魔法使いといったイメージのローブを着ているが、そこよりも目を奪われたのはすべての指にしている指輪だった。
けして派手なものではないがデザインはバラバラでちぐはぐな感じがする。
全ての指輪に宝石がはめ込まれていて宝石内部で何かが光っているような気がする。

「あら?私より魔道具が気になるのかしら?」

「あ、すみません。初めて見るものでしたので見入ってしまいました。」

「別にいいのよ、でもそんな珍しいものでもないと思うけれど。」

デリータさんは不思議そうに言うとレギさんの方を見る。

「あぁ、こいつは田舎の出でな。今日この街に着いたばかりなんだ。んでよ、頼みたい事ってのはこいつの事なんだ。」

「なにかしら?」

「実は僕は魔力操作が出来ないんです。」

デリータさんが興味深そうに目の色を変える。

「そこで相談できる相手を探していたのですが、レギさんから腕のいい魔法使いであるデリータさんを紹介してもらえるとのことで伺った次第です。」

「......なるほど、魔力操作が出来ない、ね。」

「すまねぇが相談に乗ってやってくれるか?俺はちょっと仕事があるからよ。終わり次第迎えに来るからそれまで頼むわ。」

「まぁ、いいわよ。レギには色々と手伝ってもらっているしね。」

「ありがとな。じゃぁケイ後で迎えに来るから色々話をきいてみてくれ。」

「ありがとうございます。レギさん。お仕事がんばってください。」

おうと手を上げてレギさんは店から出ていく。
さっきも思ったけどレギさんは凄くいい人だ。
頼りがいもある、惚れそうだ。

「さて、カウンターを挟んでじゃぁ話しにくいわね。こちら側へいらっしゃい。奥で話しましょう。」

そういうとデリータさんは立ち上がりカウンターの奥に置いてあるテーブルの方へ移動する。
俺はカウンターの裏に回り込みながらシャルに話しかける。

「楽しみだ。魔法使えるようになるといいな......。」

『そうですね。ケイ様の望みが叶うよう私も全力でサポートいたします!』

ワクワクしながらデリータさんの向かいの椅子に腰を掛ける。
あぁドキドキする、やっぱり魔法はロマンだよね!

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