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3章 召喚魔法使い、同郷を見つける
第95話 本当に死んでいるのか?
しおりを挟む「フジワラはどんな奴だった?」
センの質問にナツキが微妙に視線を宙に泳がせる……今までと違い、明らかに言葉を選んでいる節がある。
「えっと……あまり元気なタイプじゃなかったわね」
「……錬金術の勉強に本が欲しいと言っていました」
(既に亡くなっている人物相手だからな……ハルカはともかく、ナツキから正直な感想が出にくいな……)
そう考えたセンは少しだけ話の方向を変える。
「フジワラの遺体について、トキトウやケンザキは他に何か言っていたか?」
「二人からは特に何も……特にケンザキさんの方は何かを話すような余裕はありませんでしたし」
「……フジワラは本当に死んでいたのか?」
センの言葉にナツミは首を傾げ、ハルカは少し眉を顰める。
(ナツキはともかく、ハルカはその可能性も考えていたか……)
「……少なくともあそこに一人分の遺体があったことは間違いありません。部屋に戻った時、上半身に布をかぶせられていましたが……それは私達も確認しています。遺体を調べたのはトキトウさんだけですが……その間、ケンザキさんも遺体のあった部屋に居ました」
「なるほど……つまりその遺体がフジワラの物かどうかは不明ということだな?」
「……はい。服はフジワラさんの着ていた物でしたが……トキトウさんも断定は避けていました。ただ、外から誰かが入った痕跡もありませんでしたし……犯人は五人の中に居ると結論付けて、その場で別れることに」
「別れることを決めたのはトキトウか?」
センの問いにかぶりを振ったハルカが、当時を思い出すようにしながら続きを話す。
「……いえ、どちらかと言うとトキトウさんは別れない様にしようとしていました。でも私も姉も……ケンザキさんもお互いを信じられないという事になり……」
「なるほどな……」
「今になって考えれば、冷静さを欠いていたと思います。他に方法はいくらでもあったかもしれないと……」
「……いや、普通は他殺体なんて見ることはないだろうし、自分達が寝ている間にそんな状況になれば落ち着いて話が出来る筈もない。しかもお互い全く知らない間柄だ、信用なんて出来るはずないからな。自分達の身の安全を確保するのが最優先だ」
センがそれは間違っていなかったと力強く言うと、二人の表情が少し和らぐ。
「まぁ、話を聞いた限りじゃ、フジワラとやらが生きていて、何故か自分の死を偽装したって可能性もありそうだ。だからもう一度フジワラがどんな奴だったのか、二人の主観で良いから話してくれないか?」
再びフジワラについて質問をしたセンに、ナツキが頷きもう一度フジワラについて話始める。
「あまり積極的に私達と会話をしようとしてなかったけど……でも才能の話や魔法の話になるとかなり楽しそうに話に加わって来てた」
「……自分の才能は錬金術だけど、最初は魔法の才能を選ぼうか迷っていたと言っていました。でも自身で戦うよりも研究の方が向いているから錬金術を選んだと」
「なるほど……ナツキ達よりも先にフジワラが才能を選んだみたいだな。俺の時は選ぶ前に魔法の才能は無理だと言われたし……」
あの女と会った時の会話を思い出しつつセンが言うと、何故かナツキが自慢げな表情になる。
「ふふん、早いもの勝ちだからね!でも魔法の才能を選ばなくても魔法は使えるみたいだし、センも勉強してみたら?」
「そうだな、その時はハルカに手伝ってもらうとしよう」
「……は、はい。頑張ってお手伝いします」
「あぁ、よろしく頼む……すまん、話を脱線させたな。続きを頼む」
「あ、うん。っていっても私からはこのくらいかなぁ?」
センの言葉に少しだけ考えるようなそぶりを見せたナツキが、少し笑いながら答える。
「……私もそのくらいでしょうか……あ、そう言えば、才能を貰っていなくても魔法は使えるみたいだから、良い魔法を作ったら教えて欲しいって言われたことがあります」
「なるほど……魔法に関心が結構あったのに選んだ才能は錬金術か……錬金術はどちらかと言うと学問って感じがするが……」
少し考え込むようにするセンに向かって、ナツキが明るい口調で話しかける。
「あれじゃない?センみたいにお金を稼ごうと思って……錬金術で金を作って売ろうとか、そんな感じで考えていたんじゃない?」
「……なるほど」
(ハーケル殿が以前錬金術の事を少し話していたが……どちらかと言うと薬学とか化学とか……そっち方面の学問って感じだった。冊子にも確かそんな感じで書いてあったし……魔法に興味があるなら、わざわざ選ばないと思うが……)
トキトウだけでなく、フジワラの選んだ才能にも違和感を覚えるセン。
(フジワラは生きている……そのつもりで考えておいた方が良さそうだな。ナツキやハルカはもとより、ケンザキって奴も他人を殺す様なタイプではなさそうだ。トキトウは怪しいが……今の所犯人と考える根拠は薄い。フジワラが生きていて何らかの方法で死体を用意し、四人を騙した……その可能性が一番ありそうだ)
センは二人の話をある程度自分の中で整理してから口を開く。
「三人については大体分かった。ありがとう、助かった」
「あはは、いいよー仲間だからね!それで、これからどういう風にしていくの?」
「……俺は今まで通り、ライオネル商会への協力と、ダンジョンの調査、それとコネクション作りだな」
「うーん、あたしにはそんなの出来ないけど……あ、でもダンジョンって気になるな!どんなとこなの?」
「俺は知っての通り虚弱だからな、ダンジョンには行った事がない。だが……ナツキが調査に参加してくれるとありがたいな」
「え?やるやる!超楽しそう!」
鼻息を荒くしたナツキが身を乗り出しながら手を上げる。相変わらずその横ではハルカが苦笑しているが……センはそんな二人を見て、皮肉気に口元を吊り上げながら問いかける。
「やる気を出してくれるの有難いが……お前学府の学生……しかも士官コースの人間だろ?卒業まで後一年半くらいか……?その後は完全に軍属……自由なんかあるのか?」
「……いやぁ……正直魔法の勉強をしたかったから学府に入ったんだけどさ……教官にもう魔法に関して教える事は無いって、これからは士官教育として、歴史とか法律とか軍略なんかをメインに勉強させるって言われちゃって……正直辞めたいなぁと」
「なるほど……」
センの想像通りではあったが、ナツキはやはり軍に所属するつもりは無く、純粋に魔法の勉強をする為だけに学府に通っていたようであった。
「でもほら……エンリケさん……学府で勉強できるようにしてくれた人のこともあるし……困っているんだよね」
「確かハルキアの貴族だったな……話は通じる相手なのか?」
「え?大丈夫だと思うけど……」
センの問いに首を傾げるナツキから視線を外し、ハルカに問いかけるような視線を向けるセン。
「……流石に、お姉ちゃんが学府を辞めたいって言っても、そう簡単にはいかないと思うよ?武術大会で優勝して注目されているし……成績も上位だから……エンリケさんも紹介した手前いい顔はしないだろうし……」
「……そうだよねぇ……」
「最悪、義理人情は捨てるしかないかもな。正直二人の協力はすぐにでも欲しいし……ナツキが軍人として国に縛られてしまうのはかなり困る。どう考えても災厄に対して後手に回ってしまうからな」
(いつ災厄が発生するか分からない以上、ナツキが軍人として出世していくのを待つわけにはいかない……そもそもナツキが軍で出世していけるとは思えないしな。精々腕っぷしを買われて部隊長辺りが関の山だろう)
「うー」
ナツキが頭を抱えて下を向く……人の良さそうなナツキには、世話になった人物に義理を欠くのは中々耐え難いものがあるようだ。
「ハルカの方はどうなんだ?研究職と言っても国に属する形なんだろ?」
「はい。ですが私の方は姉のようにそこまで目立つ事はしていないですし、辞めることは問題ないと思います。勿論エンリケさんには申し訳ないと思いますが……」
「……金銭的な問題ではないと思うが、少なくともその貴族が二人の為に使った金額は、少し上乗せする形で俺の方で用意しよう。それをもって話を着けるといい、何だったら俺も話し合いに参加する。まぁ、似てはいないが……同じ黒目黒髪だし、兄妹が見つかったみたいな話を作ってもいいだろう。ただ、話に行くのは少し待ってくれ、少し準備が必要だ」
センの提案にハルカが驚いたような表情になる。
「……そこまでしていただいていいのですか?」
「勿論だ。俺達の目的は災厄から世界を救う事。その為に二人の協力は絶対に不可欠だ。金で解決できる問題なら出費は惜しくない」
「はー、お金持ちは凄いなー。どうやったらそんなにお金が貰えるようになるのか……あれ?そう言えばセンってなんの才能貰ったの?お金儲け?」
「その才能を貰ったとして……結局稼ぐには努力が必要で、上手くいくかどうかも運と努力次第だろ?意味が無さすぎる。俺の才能は……召喚魔法の才能だ」
センの言葉を聞き、ナツキがキョトンとした表情になった。
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