召喚魔法の正しいつかいかた

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3章 召喚魔法使い、同郷を見つける

第84話 調査結果

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「分かりました。今の感じであれば、倍くらいに拠点数を増やしても捌くことが出来そうですし、隣国辺りから手を伸ばしていきましょう。ラーリッシュ王国は仕入れ的にあまり旨みがありませんが……輸出するにはいい相手ですしな」

 センが物流システムの拠点を増やしたいと言う話をライオネルに告げると、異論は何もないと言った感じでライオネルが頷く。
 センは今ハルキア王都にあるライオネル邸でライオネルと打ち合わせをしている。
 既に本日分の輸送用の箱の召喚は終わっており、ライオネルはその成果に機嫌の良さが全身からにじみ出ていた。

「ラーリッシュ王国は、ハルキアの東の小国でしたね?特産品とか無いのですか?」

「特にありませんね……農業も工業もぱっとしませんし……鉱山資源も可もなく不可もなく……まぁ、東に進む足掛かり程度にはなりますが。それよりもさらに東にある獣王国に拠点を作りたいですな。あそこは農業大国ですし、珍しい食材が沢山ありますよ」

「それは楽しみですね。色々と探している食材もありますし……大国に拠点があるのは私としても助かります」

 センがそう言って笑うと、同じくライオネルも豪快な様子で笑う。

「移動用の拠点だけはどんどん増やしていますぞ?今後は観光も思いのままですな!」

「それも楽しみですが……密入国になったりしませんか?」

「商業許可証がありますからな。戦争時でもなければ関所等の入国手続きは基本的に省くことが出来ます。勿論税金の支払い義務はありますが、商会として後で纏めてと言った感じですね。勿論セン殿達の分の許可証も発行しておきますので、その辺は心配しなくて大丈夫ですぞ」

「よろしいのですか?」

「構いませんとも!目標は全ての国に自由に出入り出来るようになることですな!」

 実に楽しそうにしているライオネルは立ち上がると、執務机に近づき、髪の束を手に取って戻ってくる。

「セン殿、話は変わりますが……これはサリエナに頼まれておりましてな。本来であれば自分で説明したいと言っておりましたが……今日はどうしても外せない商談があるとかで、申し訳ありません」

「いえ、構いませんよ。サリエナ殿からという事は、例の玩具の件ですね?」

「えぇ、おっしゃる通りです。実は私も資料を見るのは初めてでして……おぉ、これは凄いですな」

 三枚程の資料をテーブルの上に並べたライオネルが、センと同じく資料を覗き込みながら感嘆の声を上げる。
 資料には、玩具を売り始めてから今日までの売り上げ推移が書かれているが、日に日に売り上げ数が増えて行っているのが分かる。

「ふむ……ある時を境に突然売り上げが増えていますな」

「これは、仕掛けていた宣伝がこのタイミングで花開いたと言った感じですね。私が考えた遊びではありませんが、提案したものが安定して売れているようでほっとしましたよ」

 センがそう言って笑顔を見せるとライオネルが呵々大笑と言った笑いを見せる。

「いやいや!セン殿!この売上数は安定して売れているとかいう話ではありませんぞ!?これは完全に流行を作りましたな……生産が追い付かなくなってきている様ですぞ。今は商店の一区画だけでの販売ですが……専門店を立ち上げるのもありですな……」

「今はまだ玩具が五種類しかないですからね……専門店にするならもう少し種類があった方がいいのではないですか?」

「……それもそうですな……こういった玩具の開発部門でも立ち上げますかな?どうです?セン殿、特別顧問として就任して頂けませんか?」

「商会の人間として入国出来るように取り計らって貰っているのに申し訳ありませんが、今はまだそう言った役職に就くのは厳しいですね……」

「ふむ……そうですか……残念ですな」

 顎を撫でながら本当に残念そうにライオネルは言う。

「まぁ、何か思いついたらエミリさんにアイディアを渡しますので、当面はそれで勘弁してください」

「セン殿と言いハーケル殿と言い、どうしても欲しい人材は中々首を縦に振ってくれませんなぁ」

 悔しそうにしているライオネルにセンは苦笑しながら謝る。

「申し訳ありません……そういえば、ハーケル殿の所に弟子となる人物を紹介出来たのですか?」

「えぇ。うちで働いている薬の製造部門の人間が、ようやくハーケル殿のお眼鏡に叶いまして……今必死で学んでもらっている所です」

「それは良かったですね」

「えぇ……ですが流石に時間がかかるでしょうからな……」

「ハーケル殿は、御父上の残された店から離れられないとのことでしたしね」

「セン殿もご存知でしたか……店に居ながら開発の手伝いをして貰えないかと提案したこともあったのですが……」

「ハーケル殿は誠実な方ですからね。そう言った協力の仕方は不義理であると考えておられるのかもしれません」

(俺は不誠実だから所属せずにがんがん口出しをしているが……)

「いやいや!セン殿はどんどん口出ししてくれて構わないですぞ?寧ろしてくれればしてくれるだけ利益になっているのですからな!」

 センの考えを読み取ったライオネルが、もっとどうぞと勢い込む。確かに、今の所センの提案はライオネルに利益しかもたらしていない。
 勿論ライオネルとしても盲信するつもりはサラサラないし、寧ろかなり慎重に判断していると考えている。
 だがそれでも提案を断ると言った結論になった事は無い。

「ご歓談中失礼します。旦那様、今よろしいでしょうか?」

 扉からノックが聞こえ、次いでハウエンの声が聞こえてくる。
 ライオネルがセンの方に伺うような視線を向けたので、頷いて見せると扉の外にいるハウエンに入室の許可を出した。

「失礼いたします、旦那様、セン様。奥様から今こちらが届きました、お二人に見せる様に言付かっております」

「サリエナから?ふむ……なるほど」

 ハウエンから受け取った書簡を確認したライオネルが一言呟き、すぐにセンに渡す。

「なるほど……これは有難い」

 サリエナが届けてくれた書簡の内容は、とある調査内容にだった。

「やはり商人が多いですね……」

「まぁ、当然ですな。商人であれば気にならない方がおかしいと言えましょう」

 二人が見ている調査結果……それは、王都で売り出した玩具について、開発者を探ろうとした人物の一覧だった。
 玩具の販売権をエミリが交渉した時にセンが提示した条件……センが同郷の者を見つける為の仕掛けである。

「これ……追調査をしたい場合、ライオネル殿の方で受けて頂けますか?」

「ふむ?セン殿の頼みとあらば如何様にも致しますが……全員ですか?」

「いえ、私が気になった人物だけで構いません。この人物達の裏に、開発者ではなく私個人を探る人物が隠れていないかを確認しておきたいのです」

「なるほど……今は名前と簡単な職業くらいしか分かっていませんが……気になる相手がいるのですか?」

「まずは商人の方、それと貴族の方以外ですね。考案した者の名前を知る必要がない人達ですし」

「分かりました。少し難しい内容ではありますが……まずはどうして考案者の事を知ろうとしたのかを調査させましょう。そこに不自然さがあればさらにと言った感じで」

「お手数おかけします。お約束通り経費は私への報酬から差し引いてください……おや?」

 センがライオネルと話しながら二枚目の紙に目を向けた瞬間、動きを止める。
 そこには一人の人物の名前しか書いていなかったが、一枚目の人物には書かれていなかった備考が書かれていた。

「トランプか……」

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