84 / 160
3章 召喚魔法使い、同郷を見つける
第84話 調査結果
しおりを挟む「分かりました。今の感じであれば、倍くらいに拠点数を増やしても捌くことが出来そうですし、隣国辺りから手を伸ばしていきましょう。ラーリッシュ王国は仕入れ的にあまり旨みがありませんが……輸出するにはいい相手ですしな」
センが物流システムの拠点を増やしたいと言う話をライオネルに告げると、異論は何もないと言った感じでライオネルが頷く。
センは今ハルキア王都にあるライオネル邸でライオネルと打ち合わせをしている。
既に本日分の輸送用の箱の召喚は終わっており、ライオネルはその成果に機嫌の良さが全身からにじみ出ていた。
「ラーリッシュ王国は、ハルキアの東の小国でしたね?特産品とか無いのですか?」
「特にありませんね……農業も工業もぱっとしませんし……鉱山資源も可もなく不可もなく……まぁ、東に進む足掛かり程度にはなりますが。それよりもさらに東にある獣王国に拠点を作りたいですな。あそこは農業大国ですし、珍しい食材が沢山ありますよ」
「それは楽しみですね。色々と探している食材もありますし……大国に拠点があるのは私としても助かります」
センがそう言って笑うと、同じくライオネルも豪快な様子で笑う。
「移動用の拠点だけはどんどん増やしていますぞ?今後は観光も思いのままですな!」
「それも楽しみですが……密入国になったりしませんか?」
「商業許可証がありますからな。戦争時でもなければ関所等の入国手続きは基本的に省くことが出来ます。勿論税金の支払い義務はありますが、商会として後で纏めてと言った感じですね。勿論セン殿達の分の許可証も発行しておきますので、その辺は心配しなくて大丈夫ですぞ」
「よろしいのですか?」
「構いませんとも!目標は全ての国に自由に出入り出来るようになることですな!」
実に楽しそうにしているライオネルは立ち上がると、執務机に近づき、髪の束を手に取って戻ってくる。
「セン殿、話は変わりますが……これはサリエナに頼まれておりましてな。本来であれば自分で説明したいと言っておりましたが……今日はどうしても外せない商談があるとかで、申し訳ありません」
「いえ、構いませんよ。サリエナ殿からという事は、例の玩具の件ですね?」
「えぇ、おっしゃる通りです。実は私も資料を見るのは初めてでして……おぉ、これは凄いですな」
三枚程の資料をテーブルの上に並べたライオネルが、センと同じく資料を覗き込みながら感嘆の声を上げる。
資料には、玩具を売り始めてから今日までの売り上げ推移が書かれているが、日に日に売り上げ数が増えて行っているのが分かる。
「ふむ……ある時を境に突然売り上げが増えていますな」
「これは、仕掛けていた宣伝がこのタイミングで花開いたと言った感じですね。私が考えた遊びではありませんが、提案したものが安定して売れているようでほっとしましたよ」
センがそう言って笑顔を見せるとライオネルが呵々大笑と言った笑いを見せる。
「いやいや!セン殿!この売上数は安定して売れているとかいう話ではありませんぞ!?これは完全に流行を作りましたな……生産が追い付かなくなってきている様ですぞ。今は商店の一区画だけでの販売ですが……専門店を立ち上げるのもありですな……」
「今はまだ玩具が五種類しかないですからね……専門店にするならもう少し種類があった方がいいのではないですか?」
「……それもそうですな……こういった玩具の開発部門でも立ち上げますかな?どうです?セン殿、特別顧問として就任して頂けませんか?」
「商会の人間として入国出来るように取り計らって貰っているのに申し訳ありませんが、今はまだそう言った役職に就くのは厳しいですね……」
「ふむ……そうですか……残念ですな」
顎を撫でながら本当に残念そうにライオネルは言う。
「まぁ、何か思いついたらエミリさんにアイディアを渡しますので、当面はそれで勘弁してください」
「セン殿と言いハーケル殿と言い、どうしても欲しい人材は中々首を縦に振ってくれませんなぁ」
悔しそうにしているライオネルにセンは苦笑しながら謝る。
「申し訳ありません……そういえば、ハーケル殿の所に弟子となる人物を紹介出来たのですか?」
「えぇ。うちで働いている薬の製造部門の人間が、ようやくハーケル殿のお眼鏡に叶いまして……今必死で学んでもらっている所です」
「それは良かったですね」
「えぇ……ですが流石に時間がかかるでしょうからな……」
「ハーケル殿は、御父上の残された店から離れられないとのことでしたしね」
「セン殿もご存知でしたか……店に居ながら開発の手伝いをして貰えないかと提案したこともあったのですが……」
「ハーケル殿は誠実な方ですからね。そう言った協力の仕方は不義理であると考えておられるのかもしれません」
(俺は不誠実だから所属せずにがんがん口出しをしているが……)
「いやいや!セン殿はどんどん口出ししてくれて構わないですぞ?寧ろしてくれればしてくれるだけ利益になっているのですからな!」
センの考えを読み取ったライオネルが、もっとどうぞと勢い込む。確かに、今の所センの提案はライオネルに利益しかもたらしていない。
勿論ライオネルとしても盲信するつもりはサラサラないし、寧ろかなり慎重に判断していると考えている。
だがそれでも提案を断ると言った結論になった事は無い。
「ご歓談中失礼します。旦那様、今よろしいでしょうか?」
扉からノックが聞こえ、次いでハウエンの声が聞こえてくる。
ライオネルがセンの方に伺うような視線を向けたので、頷いて見せると扉の外にいるハウエンに入室の許可を出した。
「失礼いたします、旦那様、セン様。奥様から今こちらが届きました、お二人に見せる様に言付かっております」
「サリエナから?ふむ……なるほど」
ハウエンから受け取った書簡を確認したライオネルが一言呟き、すぐにセンに渡す。
「なるほど……これは有難い」
サリエナが届けてくれた書簡の内容は、とある調査内容にだった。
「やはり商人が多いですね……」
「まぁ、当然ですな。商人であれば気にならない方がおかしいと言えましょう」
二人が見ている調査結果……それは、王都で売り出した玩具について、開発者を探ろうとした人物の一覧だった。
玩具の販売権をエミリが交渉した時にセンが提示した条件……センが同郷の者を見つける為の仕掛けである。
「これ……追調査をしたい場合、ライオネル殿の方で受けて頂けますか?」
「ふむ?セン殿の頼みとあらば如何様にも致しますが……全員ですか?」
「いえ、私が気になった人物だけで構いません。この人物達の裏に、開発者ではなく私個人を探る人物が隠れていないかを確認しておきたいのです」
「なるほど……今は名前と簡単な職業くらいしか分かっていませんが……気になる相手がいるのですか?」
「まずは商人の方、それと貴族の方以外ですね。考案した者の名前を知る必要がない人達ですし」
「分かりました。少し難しい内容ではありますが……まずはどうして考案者の事を知ろうとしたのかを調査させましょう。そこに不自然さがあればさらにと言った感じで」
「お手数おかけします。お約束通り経費は私への報酬から差し引いてください……おや?」
センがライオネルと話しながら二枚目の紙に目を向けた瞬間、動きを止める。
そこには一人の人物の名前しか書いていなかったが、一枚目の人物には書かれていなかった備考が書かれていた。
「トランプか……」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
なろう380000PV感謝! 遍歴の雇われ勇者は日々旅にして旅を住処とす
大森天呑
ファンタジー
〜 報酬は未定・リスクは不明? のんきな雇われ勇者は旅の日々を送る 〜
魔獣や魔物を討伐する専門のハンター『破邪』として遍歴修行の旅を続けていた青年、ライノ・クライスは、ある日ふたりの大精霊と出会った。
大精霊は、この世界を支える力の源泉であり、止まること無く世界を巡り続けている『魔力の奔流』が徐々に乱れつつあることを彼に教え、同時に、そのバランスを補正すべく『勇者』の役割を請け負うよう求める。
それも破邪の役目の延長と考え、気軽に『勇者の仕事』を引き受けたライノは、エルフの少女として顕現した大精霊の一人と共に魔力の乱れの原因を辿って旅を続けていくうちに、そこに思いも寄らぬ背景が潜んでいることに気づく・・・
ひょんなことから勇者になった青年の、ちょっと冒険っぽい旅の日々。
< 小説家になろう・カクヨム・エブリスタでも同名義、同タイトルで連載中です >

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
元Sランクパーティーのサポーターは引退後に英雄学園の講師に就職した。〜教え子達は見た目は美少女だが、能力は残念な子達だった。〜
アノマロカリス
ファンタジー
主人公のテルパは、Sランク冒険者パーティーの有能なサポーターだった。
だが、そんな彼は…?
Sランクパーティーから役立たずとして追い出された…訳ではなく、災害級の魔獣にパーティーが挑み…
パーティーの半数に多大なる被害が出て、活動が出来なくなった。
その後パーティーリーダーが解散を言い渡し、メンバー達はそれぞれの道を進む事になった。
テルパは有能なサポーターで、中級までの攻撃魔法や回復魔法に補助魔法が使えていた。
いざという時の為に攻撃する手段も兼ね揃えていた。
そんな有能なテルパなら、他の冒険者から引っ張りだこになるかと思いきや?
ギルドマスターからの依頼で、魔王を討伐する為の養成学園の新人講師に選ばれたのだった。
そんなテルパの受け持つ生徒達だが…?
サポーターという仕事を馬鹿にして舐め切っていた。
態度やプライドばかり高くて、手に余る5人のアブノーマルな女の子達だった。
テルパは果たして、教え子達と打ち解けてから、立派に育つのだろうか?
【題名通りの女の子達は、第二章から登場します。】
今回もHOTランキングは、最高6位でした。
皆様、有り難う御座います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる