召喚魔法の正しいつかいかた

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2章 召喚魔法使い、ダンジョンの街へ行く

第48話 役割分担

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 センの購入した家は二階建てで、部屋の数は一階に四部屋、二階に三部屋。
 浴室が無いのがセンとしては残念だったが、水道の発達していないこの世界で風呂に入るのは中々難しい物があった。しかし、家のすぐ傍に井戸があるので、それを使い外に五右衛門風呂でも用意しようとセンは考えている。
 街の中心部からは少し離れていて、木々に囲まれているが家の傍は少し開けた空間になっている。
 簡単な畑くらいなら作ることが出来そうだが……センは別に土いじりが好きなタイプではないので、子供達がやりたいと言わない限り手入れも適当になるだろう。
 セン達は家の中を一通り見て回った後、家の周りを少し時間をかけて探索し、安全確認およびご近所へのあいさつ回りをした。
 ご近所と言ってもお互い敷地が広く家までの距離があり、そこまで密に付き合いをすると言った感じにはならなそうだった。
 その後、セン達は一階にあるリビングに集まりお茶を飲みながら話をすることにした。

「さて、とりあえず部屋割りだが……今いる部屋は食事をしたり寛いだりする部屋にしよう。それと一階にある部屋の一つは応接室として使う。お客さんが来た時に使う部屋だ。それと俺が仕事をする部屋も一階に、寝室は二階にするけど、三人はどの部屋を使いたい?」

「えっと……私達が部屋を使うのですか?」

「あぁ、一人一部屋使っても大丈夫だぞ?丁度二階は四部屋あるしな」

 センがそう言うと三人は困ったような表情になる。

「えっと……宿を使っていた時みたいに四人で寝るのは……」

「流石にベッドを四つも置ける程広い部屋はないな……」

(しかし……三人は俺の所に来る前から一緒に寝ていた訳だし、寝室は分けない方がいいのか?)

 センは複雑な表情をしている三人を見て口を開く。

「まぁ、いきなり別々に寝るってのも慣れないか……三人は一緒に寝るか?」

(小さめのベッドなら……多分三つ置けるよな?寝る以外出来ない部屋になりそうだが……部屋全体がベッドってのありかな?)

 そんなことを考えていると、センの隣に座っているトリスが口を開いた。

「トリスは兄様と一緒がいい」

「ん?俺と一緒に寝たいのか?」

(ふむ、二人ずつで寝るってのもありか……でもそれなら俺とニコルが一緒の方が良いよな?)

 センがそんなことを考えながらニコルの方を見る。
 見られたニコルは首を傾げたが、すぐにセンの意図に気付いたらしく口を開いた。

「僕も兄さんと一緒に寝たいな」

 ニコルがそう言うと、何故か隣に座っているラーニャが目を丸くしてニコルの顔を見た後、慌てたように口を開いた。

「わ、私もセンさんと一緒がいいです!」

(……いや、そうじゃないラーニャ。話が一周して元に戻っているじゃないか)

 口に出さずに会話を誘導しようとした結果、完全に最初の状態に戻ってしまったので、センは仕方なく自ら提案することにした。

「二人で一部屋なら多少他にも家具が置けそうだな。着替えなんかも必要だし、俺とニコルで一部屋、ラーニャとトリスで一部屋使おう。今後一人部屋が欲しくなったらその時は余っている部屋を使ったりすればいいし、最悪増築してもいいしな」

 センの決定に二人がしょんぼりと、一人がニコニコとしながら頷く。

「二人で一部屋を使うと言うのは分かりましたが……増築ってどういうことですか?」

「大工に頼んで家を広くしてもらうんだよ。幸い敷地にはかなり余裕があるしな。それはそうと、どの部屋を寝室にしたいか希望はあるか?三人で決めてくれていいぞ?」

 ニコルの質問に答え三人に寝室を決めてもらう傍ら、センは一階の部屋割りと今後どうするかを考えて行く。

(必要かどうかは分らんが……一応ゲストルームを用意しておくか。リビング、応接間、仕事部屋、ゲストルーム。一階はこれでいい……後はどの部屋をどれにするかと……入れる家具だな。この子達は今まで家具とか使っていなかったし……今度王都に行った時に一緒に選ぶか。必要な家具を書き出しておかないとな)

 センが思案にしている間に三人はどの部屋を寝室にするか相談をするが……若干ラーニャとトリスは不満気にしている。とはいえ、そう時間もかからずにそれぞれの寝室が決まった。
 二階の部屋には既に一つずつベッドが配置されていたので、寝室に決めた二部屋にベッドを移動させたのだが……センは完全に戦力外だった。
 ニコルとラーニャがさして力を入れた風でもなく、ひょいっと二人でベッドを持ち上げたのを見て、センは窓の外を遠い目で見る。
 一応ニコルたちが部屋にベッドを運び込んで来る前に、もとから部屋にあったベッドを隅に寄せようとしたのだが……部屋の中を数メートル移動させただけでセンの握力は死滅。その様子を見ていたトリスに、兄様無理しないでと、お年寄りを気遣うような台詞を言われてセンは色々と諦めた。



「よし、これで寝室は大丈夫だな。家具は徐々に増やしていくが、必要な物を思いついたら教えてくれ。後は……家事の分担を決めるか」

 ベッドを運び終えたセン達は一階に戻って来て一息入れた後、次の議題へと移る。

「家事ってどんなことをするんですか?」

 今まで家で暮らした事の無かったニコルが首を傾げる。当然ラーニャとトリスも同じ境遇だったのだから知らなくて当然だろう。

「そうだな……料理、洗濯、掃除……他にも色々あるが、大まかに言うとこんな感じだな」

「せ、センさん!私、料理やります!」

 センの言葉に若干食い気味にラーニャが挙手しながら言う。

「お?ラーニャ料理できるのか?」

 浮浪児であった彼らに自分達で調理する機会なんか殆どないと思っていたセンは、意外そうに問いかける。
 そんなセンの問いに自信満々とはいかない物の、真剣な表情でラーニャが頷いた。

「えっと、実は宿の親父さんに教えて貰ったり……後は王都でご飯を作ってくれる人たちに教えて貰ったりしていました」

「へぇ、そうだったのか。それは楽しみだ。俺も簡単な料理なら出来るから、料理は俺と二人でやるか。いきなり一人で全部やるのは難しいだろ?」

「そ、そうですね……いきなりは無理かもしれません。え、えへへ……二人で、料理」

 センの言葉に嬉しそうに小さく笑うラーニャだったが、その様子に気付かずにセンは言葉を続ける。

「調理器具も必要だな……これはこの街で買うとしよう。今日はまだバタバタするだろうし、料理するのは早くても明日からだな」

「あ、はい!わかりました!」

「後は掃除と洗濯……まぁ、掃除は定期的に全員ですればいいか。洗濯は……トリスとニコルの仕事にしていいか?やり方は宿でやっていたのと同じ感じでいいが、洗濯したものを干すのは外だな」

「洗濯をするのはいいですけど……外って、家の外に洗濯物を干すんですか?」

 センの言葉にニコルが首を傾げる。
 ニコルの疑問にセンは何かおかしな事を言っただろうかと考えるが、すぐに思い至り口を開く。

「あー、盗まれないかとかそういう話か?」

「はい。僕達の服は兄さんが用意してくれたもので……かなり綺麗ですし……あ、渇くまでずっと見張っておけば……」

「いや、それは時間の無駄だからしなくていい。しかし、人が多い所からは離れているしその辺は大丈夫だとは思うが……」

(いや、当面は大丈夫かもしれないが……目をつけられる可能性はあるか。一応ライオネル殿の所の守衛さんが見回りもしてくれるって話だが、少し離れているし用心しておくに越した事は無いか。それが切っ掛けで子供達に害が及ばないとも限らない、衣服の窃盗くらいなら別にいいが……いや、年頃の娘って事を考えるとそれだけでもマズいか)

「……そうだな。確かにニコルの言う通り外に干すのは少し不用心だったな。すまん。一先ず二階の空き部屋の窓を開けてそこに干すとしよう。それで……よし、やはり家を増築するか。バルコニーをつけてもらおう、洗濯物はそこに干せばいい」

 引っ越し初日にリフォームを決めるセン。そんなセンを見て三人は首を傾げた。

「センさん、バルコニーって何ですか?」

「あぁ、バルコニーってのは、二階の外壁に……」

 バルコニーの説明をすると三人がなるほどと言った感じに頷く。
 家事の担当を決めたら、次は買い出しと街の散策に出るかと考えながらセンはそれぞれの役割を決めて行った。

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