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第五章 幽霊とお出かけ
48話 質問:幽霊に反抗期ってあるんですか?
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レイは今現在すごく不機嫌そうである。
それがなぜか。俺にはまったく理由が思い当たらない。
着替え中だったようにも見えないし、そもそもレイが俺の古着以外着ているところを見たことがない。
だから着替えるような服も彼女は持ち合わせていないはず。
そういえばそんなに服を持っていないというもの女の子としてはどういう風にレイは考えているんだろうか。
やっぱりかわいい服とか自分で服を選んで買いたいとかそういう願望はあるんだろうか。
それなら服も買ってあげる必要があるよなあ。
そもそもどういう原理で俺の服を着ているのかすら想像がつかないんだけど、
だってレイって透けてるんだよ? そうするとあのレイが着ている服も透けてるってことになるよね。
俺物体がすり抜ける服とか買ったことないんですけど。ていうかそんな服どこに売ってるんだよ。
「まだ返事してないのに」
「へ?」
絶賛考えが逸れにそれているときに、レイはボソッと抗議するような口調で俺に話しかけてきた。
……もしかしてノックをして返事を聞く前に入ってきたことに怒ってるの?
そんなので今まで怒ったことなかったし、別にノックせずに入っても体育座りしてマンガ読んでるか、アイス棒ジェンガを崩して悶えてる場面にしか遭遇したことがないんですが。
「何か問題でもあったか?」
「……乙女にはいろいろあるの」
これまた衝撃である。
レイからまさか乙女なんていう単語が飛び出してくるなんて。
だって俺が見ているのにいきなり風呂場で素っ裸になるような子だよ?
そんな子に何を恥じらうことがあるというのか。
しかし今のレイの発言を聞いて俺は一つの結論にたどり着いた。
これはあれだ。最近読んでいる漫画の影響を受けているんだ。
冷静になってみればレイは不機嫌そうな顔をしているものの、その発言に一つも怒っているような感情が込められている様子はないし、なにより彼女から冷気が発せられていない!
なんだよ、レイのやつ全然怒ってないじゃんか。
ちょっと反抗期になったのかなとか心配した俺の気持ちを返してくれよ。
きっと今のセリフだって最近読んでいる漫画で使われているところがあったのだろう。
それをレイは使いたくなってみただけなんだ。
だってレイが本当に怒っているんだとしたら俺は冷気に耐えられず、こんなにじっとしていられるはずがないからな!
「そんなことよりもレイ、言いたいことがあるんだ」
「そんなこと……」
なんかちょっと冷気が流れてきて鳥肌が立ったけど、俺の心は平常運転に戻った。
もう惑わされない。俺は今日こそレイに物申しに来たんだ。
「この『ほしいものリスト』についてなんだが」
「買ってきてくれた?」
きょとんと首をかしげながらキラキラさせた目でこちらを見つめてくるレイ。
俺はそんな彼女の純粋な瞳にあてられて、思わず身じろぎしてしまう。
「いや、それはその……今日はコンビニの調子が悪かったというか、俺の具合が悪かったというか、財布のひもが固かったというか……」
「つまり?」
「…………忘れた」
その瞬間今までの比にならないほどの冷気が俺の全身に襲い掛かる。
「悪かった! 明日はちゃんと買ってくるから! というか俺用に買ってきたショートケーキ食べてもいいから! だから落ち着いてくれ!」
こんなの説教どころではない。説教をしていたら俺の命がいくらあっても足りない。
なんか全身から鳥肌と一緒に心臓が飛び出してくる!
「くるくるの気分だったのに……」
そんなことを言いながらも冷気が弱まったところを見ると、どうやらそれで納得してくれたらしい。
くるくるの気分だったっていうことは書かれている内容を見れば一目瞭然だったけど、俺はそういう気分じゃなかったってことだよ。許してくれ。
というかくるくるの気分ってなんだよ。ぷるぷるの気分のときとかもあるのかよ。
くるくるとかぷるぷるとかレイが言うとちょっとかわいい。
なんで俺はモンブランを買ってこなかったんだろう。
くるくるするレイをちょっと見たかった気もする。
「これ明日のやつ」
レイは部屋を出ていくすれ違いざまに俺に一枚の紙を押し付けてくる。
うーん、やっぱりこれは少しまずい気がするな。俺が買ってくるのがまるで当然のような感じになっているじゃないか。
やっぱり一言くらい言っておいた方がいい気がする。今なら俺の心臓も一個あれば足りそうだし。
「あのなレイ」
「さとる?」
「お、おう?」
未だにレイに名前を呼ばれるのは慣れない。
そんな可愛い小さな口からささやくように少し甘い声で名前を呼ばれると、鳥肌とは違ったぞわぞわ感が背中に走る。しかしそれは気持ち悪いものじゃなくてこう、体の内側があったかくなるような心地いい感触。
俺がそんな感覚を味わっていると、レイは俺の方に向きその細くて長い人差し指を俺の下半身に向けていた。
「さっきからうるさい」
なに!? 俺の下半身が暴発していたのか!?
慌てて俺は自分の下半身に目を向けるが、特にそんなことはなかった。
ただスマホのバイブがずっとなっているだけだ。
レイの方を見ると少し彼女は膨れ面をしたまま指をさし続けている。
それは明らかにスマホが入っているズボンのポケットを指さしていた。
「……相手してやるか」
レイに言われたら仕方がない。
俺は諦めるようにため息をつくと、ポケットからスマホを取り出して画面を開いた。
それがなぜか。俺にはまったく理由が思い当たらない。
着替え中だったようにも見えないし、そもそもレイが俺の古着以外着ているところを見たことがない。
だから着替えるような服も彼女は持ち合わせていないはず。
そういえばそんなに服を持っていないというもの女の子としてはどういう風にレイは考えているんだろうか。
やっぱりかわいい服とか自分で服を選んで買いたいとかそういう願望はあるんだろうか。
それなら服も買ってあげる必要があるよなあ。
そもそもどういう原理で俺の服を着ているのかすら想像がつかないんだけど、
だってレイって透けてるんだよ? そうするとあのレイが着ている服も透けてるってことになるよね。
俺物体がすり抜ける服とか買ったことないんですけど。ていうかそんな服どこに売ってるんだよ。
「まだ返事してないのに」
「へ?」
絶賛考えが逸れにそれているときに、レイはボソッと抗議するような口調で俺に話しかけてきた。
……もしかしてノックをして返事を聞く前に入ってきたことに怒ってるの?
そんなので今まで怒ったことなかったし、別にノックせずに入っても体育座りしてマンガ読んでるか、アイス棒ジェンガを崩して悶えてる場面にしか遭遇したことがないんですが。
「何か問題でもあったか?」
「……乙女にはいろいろあるの」
これまた衝撃である。
レイからまさか乙女なんていう単語が飛び出してくるなんて。
だって俺が見ているのにいきなり風呂場で素っ裸になるような子だよ?
そんな子に何を恥じらうことがあるというのか。
しかし今のレイの発言を聞いて俺は一つの結論にたどり着いた。
これはあれだ。最近読んでいる漫画の影響を受けているんだ。
冷静になってみればレイは不機嫌そうな顔をしているものの、その発言に一つも怒っているような感情が込められている様子はないし、なにより彼女から冷気が発せられていない!
なんだよ、レイのやつ全然怒ってないじゃんか。
ちょっと反抗期になったのかなとか心配した俺の気持ちを返してくれよ。
きっと今のセリフだって最近読んでいる漫画で使われているところがあったのだろう。
それをレイは使いたくなってみただけなんだ。
だってレイが本当に怒っているんだとしたら俺は冷気に耐えられず、こんなにじっとしていられるはずがないからな!
「そんなことよりもレイ、言いたいことがあるんだ」
「そんなこと……」
なんかちょっと冷気が流れてきて鳥肌が立ったけど、俺の心は平常運転に戻った。
もう惑わされない。俺は今日こそレイに物申しに来たんだ。
「この『ほしいものリスト』についてなんだが」
「買ってきてくれた?」
きょとんと首をかしげながらキラキラさせた目でこちらを見つめてくるレイ。
俺はそんな彼女の純粋な瞳にあてられて、思わず身じろぎしてしまう。
「いや、それはその……今日はコンビニの調子が悪かったというか、俺の具合が悪かったというか、財布のひもが固かったというか……」
「つまり?」
「…………忘れた」
その瞬間今までの比にならないほどの冷気が俺の全身に襲い掛かる。
「悪かった! 明日はちゃんと買ってくるから! というか俺用に買ってきたショートケーキ食べてもいいから! だから落ち着いてくれ!」
こんなの説教どころではない。説教をしていたら俺の命がいくらあっても足りない。
なんか全身から鳥肌と一緒に心臓が飛び出してくる!
「くるくるの気分だったのに……」
そんなことを言いながらも冷気が弱まったところを見ると、どうやらそれで納得してくれたらしい。
くるくるの気分だったっていうことは書かれている内容を見れば一目瞭然だったけど、俺はそういう気分じゃなかったってことだよ。許してくれ。
というかくるくるの気分ってなんだよ。ぷるぷるの気分のときとかもあるのかよ。
くるくるとかぷるぷるとかレイが言うとちょっとかわいい。
なんで俺はモンブランを買ってこなかったんだろう。
くるくるするレイをちょっと見たかった気もする。
「これ明日のやつ」
レイは部屋を出ていくすれ違いざまに俺に一枚の紙を押し付けてくる。
うーん、やっぱりこれは少しまずい気がするな。俺が買ってくるのがまるで当然のような感じになっているじゃないか。
やっぱり一言くらい言っておいた方がいい気がする。今なら俺の心臓も一個あれば足りそうだし。
「あのなレイ」
「さとる?」
「お、おう?」
未だにレイに名前を呼ばれるのは慣れない。
そんな可愛い小さな口からささやくように少し甘い声で名前を呼ばれると、鳥肌とは違ったぞわぞわ感が背中に走る。しかしそれは気持ち悪いものじゃなくてこう、体の内側があったかくなるような心地いい感触。
俺がそんな感覚を味わっていると、レイは俺の方に向きその細くて長い人差し指を俺の下半身に向けていた。
「さっきからうるさい」
なに!? 俺の下半身が暴発していたのか!?
慌てて俺は自分の下半身に目を向けるが、特にそんなことはなかった。
ただスマホのバイブがずっとなっているだけだ。
レイの方を見ると少し彼女は膨れ面をしたまま指をさし続けている。
それは明らかにスマホが入っているズボンのポケットを指さしていた。
「……相手してやるか」
レイに言われたら仕方がない。
俺は諦めるようにため息をつくと、ポケットからスマホを取り出して画面を開いた。
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