30 / 48
第三章 幽霊との日常
30話 俺が勤める会社にはもしかしたらまともな奴がいないのかもしれない。
しおりを挟む
それから先輩と俺の間では特に会話もなく、黙々と昼飯を食べていた。
配分間違えたからご飯と汁物だけの質素な感じになってしまった。
いや、先輩とずっと昼飯の間会話をしろなんて高難易度クエスト俺にクリアできるはずがないからね?
あれだけ会話ができたのも奇跡みたいなもんだからね。
「じゃあ私はお先に失礼するよ」
「あ、はい。お疲れ様です」
「午後も残っているからな?」
先輩は俺の返事に軽く笑いながら返すと、席を立って歩いて行った。
うーん、俺も食べ終わってるから食堂を出れるんだけど、先に失礼するって言われた手前、一緒に出ちゃうとなんか気まずい感じになるよなあ。
ちょっと時間空けて出るか。
「お疲れ様です!ご一緒します!失礼します!」
「ごちそうさまでした」
「え、先輩待ってください!これ見てくれませんか!超かっこいいんですよ!」
うるさい、声でかい。周りの人見てるから。
それに若い、明るい、元気すぎる。
やめて俺のHPはもうゼロよ!
現実逃避はやめて俺の横に座ってきた人の方に目を向ける。
まあ予想通り俺と同じ部署の後輩である。
そして俺の方に突き付けてきているスマホの画面に映っているのは、間違いようがなく東京タワーだった。
「かっこいい……?」
「いやーかっこいいですよねえ。こんな角度からでもかっこいいなんてすごすぎません?」
後輩はご飯をつつきながらスマホの画面をうっとりとした画面を眺めている。
お行儀が悪いから食事中にスマホはしまいなさい。
まあこの食堂にそんなルールはないからわざわざ口に出しては言わないけど。
まあこの通り後輩は今日も元気である。
何やら建造物のフォルムフェチというちょっと変わった趣味を持っている。
まあそれ自体は別に個人の自由だしいいんだけど、彼女は明るく元気に辺り構わずそれを公言しているのである。
あまりの元気の良さに誰もお近づきにならない。
まあ簡単に言ってしまうと残念系美人だな。
特に何をした覚えはないんだけど、俺は彼女になつかれている感がある。
そして食堂から逃げようとして華麗に俺は失敗した。
「そういえば食事来るの遅かったんだな」
「はい、東京タワーの一番かっこいい角度を探してたら遅くなっちゃいました」
なんじゃそりゃ。
再度チラ見して彼女のスマホの画面を見るが、俺からすればどこから見てもただの東京タワーである。
どうやったらかっこよく見えるのか気になるところではあるが、それを聞くと間違いなく午後の業務に遅れるので俺は絶対に質問はしない。
「あー、どこかにエッフェル塔みたいな人いないかなあ」
何それ、どういう意味、そんな人見たことないけど。
「君エッフェル塔に似てるねー」って言われてうれしい人なんてどこにいるの?
エッフェル塔に似てるって言われる人ってどんな人なんだろう。めちゃくちゃ背が高いとか? 顔がパリ系の美形男子とか?
何それ、結局ただのイケメンじゃないですか。イケメンは世界を救うってか。
というか君は東京タワーの話をしてたんじゃないの?どうして急にエッフェル塔が出てくるわけ?
これだから最近の若い子の話はテンポが速くてついていけん。
まあ2歳しか歳の差かわらないんですけど。
ともかくここは話を合わせるべきか?
「自由の女神とかはきれいって感じするよな」
実物は見たことないし、写真くらいでしか見たことないけどまあ無難な有名どころだろう。
「先輩、何言ってるんですか。あれは人ですよ」
いや君こそ何言ってるの?
人ではないでしょ。あれを人と認めちゃったら大体の物が人になっちゃうけど。
え、どうしてそんな冷たい目で俺を見てくるわけ?俺なんか間違ってる?
あれ、もしかして俺の倫理観が間違ってる?なんかすいません。
「自由の女神より東京タワーの方が100倍美しいですもん!」
はい、アメリカに向かって土下座しなさい。
最近流行りのドラマ顔負けの勢いで今すぐニューヨークの方角に向かって、土下座しなさい。
倍返しといわず100倍返しで頭を地面にこすりつけなさい。
いや、そもそもこれは俺が間違えていたな。俺がわからない価値観を持っている相手に向かって、相手のフィールドに不用心にボールを投げてしまった俺が悪い。
自分のボールが返ってきてマッチポンプデッドボールになっちゃってるから。
「先輩は東京タワー派ですか? スカイツリー派ですか?」
後輩がふいにまじめな目線でこっちを見つめてくると思ったら、そんなことを聞いてきた。
何、今日はそういう日なの。派閥争いをいやでも勃発させたい日なのか?
それにしてもこれは先輩の時よりも難易度が高い。
相手は建造物ガチ勢だ。
下手に答えてしまえばバッドエンド確定。
何かいい逃げ道はないか……。
いや後輩の視線が怖すぎてまともに顔見れないんですけど。
視線をきょろきょろさせているとふと時間が目に入る。
……筋道は見えた!!
「そ、そんなことより時間は大丈夫か?」
時刻は昼休み終了10分を切っている。
「げ、やばっ!」
後輩もそんな俺の言葉を聞いて自分の腕時計に目を向けて、急いでクリーム入り麻婆豆腐をかきこんでいた。
あれ、君もそれ食べてるの?何案外おいしいとかそんなパターン?
先輩とかは涙目になってたけど後輩はなんか普通に食べてるし、逆に気になってきたんだけど。
今度メニューに出てたら買ってみようかな。
「じゃ、俺は先に戻るから」
「ふぁい!」
口に物を入れたまま喋らない。
ま、ともかく何とか質問に答えずに逃げることができた俺は一安心だ。
……なんかうちの会社、ていうか部署おかしな人しかいないんじゃないか?
い、いやあの二人が、特に後輩が目立って仕方ないだけだよな!
俺はいたって普通だしな!
配分間違えたからご飯と汁物だけの質素な感じになってしまった。
いや、先輩とずっと昼飯の間会話をしろなんて高難易度クエスト俺にクリアできるはずがないからね?
あれだけ会話ができたのも奇跡みたいなもんだからね。
「じゃあ私はお先に失礼するよ」
「あ、はい。お疲れ様です」
「午後も残っているからな?」
先輩は俺の返事に軽く笑いながら返すと、席を立って歩いて行った。
うーん、俺も食べ終わってるから食堂を出れるんだけど、先に失礼するって言われた手前、一緒に出ちゃうとなんか気まずい感じになるよなあ。
ちょっと時間空けて出るか。
「お疲れ様です!ご一緒します!失礼します!」
「ごちそうさまでした」
「え、先輩待ってください!これ見てくれませんか!超かっこいいんですよ!」
うるさい、声でかい。周りの人見てるから。
それに若い、明るい、元気すぎる。
やめて俺のHPはもうゼロよ!
現実逃避はやめて俺の横に座ってきた人の方に目を向ける。
まあ予想通り俺と同じ部署の後輩である。
そして俺の方に突き付けてきているスマホの画面に映っているのは、間違いようがなく東京タワーだった。
「かっこいい……?」
「いやーかっこいいですよねえ。こんな角度からでもかっこいいなんてすごすぎません?」
後輩はご飯をつつきながらスマホの画面をうっとりとした画面を眺めている。
お行儀が悪いから食事中にスマホはしまいなさい。
まあこの食堂にそんなルールはないからわざわざ口に出しては言わないけど。
まあこの通り後輩は今日も元気である。
何やら建造物のフォルムフェチというちょっと変わった趣味を持っている。
まあそれ自体は別に個人の自由だしいいんだけど、彼女は明るく元気に辺り構わずそれを公言しているのである。
あまりの元気の良さに誰もお近づきにならない。
まあ簡単に言ってしまうと残念系美人だな。
特に何をした覚えはないんだけど、俺は彼女になつかれている感がある。
そして食堂から逃げようとして華麗に俺は失敗した。
「そういえば食事来るの遅かったんだな」
「はい、東京タワーの一番かっこいい角度を探してたら遅くなっちゃいました」
なんじゃそりゃ。
再度チラ見して彼女のスマホの画面を見るが、俺からすればどこから見てもただの東京タワーである。
どうやったらかっこよく見えるのか気になるところではあるが、それを聞くと間違いなく午後の業務に遅れるので俺は絶対に質問はしない。
「あー、どこかにエッフェル塔みたいな人いないかなあ」
何それ、どういう意味、そんな人見たことないけど。
「君エッフェル塔に似てるねー」って言われてうれしい人なんてどこにいるの?
エッフェル塔に似てるって言われる人ってどんな人なんだろう。めちゃくちゃ背が高いとか? 顔がパリ系の美形男子とか?
何それ、結局ただのイケメンじゃないですか。イケメンは世界を救うってか。
というか君は東京タワーの話をしてたんじゃないの?どうして急にエッフェル塔が出てくるわけ?
これだから最近の若い子の話はテンポが速くてついていけん。
まあ2歳しか歳の差かわらないんですけど。
ともかくここは話を合わせるべきか?
「自由の女神とかはきれいって感じするよな」
実物は見たことないし、写真くらいでしか見たことないけどまあ無難な有名どころだろう。
「先輩、何言ってるんですか。あれは人ですよ」
いや君こそ何言ってるの?
人ではないでしょ。あれを人と認めちゃったら大体の物が人になっちゃうけど。
え、どうしてそんな冷たい目で俺を見てくるわけ?俺なんか間違ってる?
あれ、もしかして俺の倫理観が間違ってる?なんかすいません。
「自由の女神より東京タワーの方が100倍美しいですもん!」
はい、アメリカに向かって土下座しなさい。
最近流行りのドラマ顔負けの勢いで今すぐニューヨークの方角に向かって、土下座しなさい。
倍返しといわず100倍返しで頭を地面にこすりつけなさい。
いや、そもそもこれは俺が間違えていたな。俺がわからない価値観を持っている相手に向かって、相手のフィールドに不用心にボールを投げてしまった俺が悪い。
自分のボールが返ってきてマッチポンプデッドボールになっちゃってるから。
「先輩は東京タワー派ですか? スカイツリー派ですか?」
後輩がふいにまじめな目線でこっちを見つめてくると思ったら、そんなことを聞いてきた。
何、今日はそういう日なの。派閥争いをいやでも勃発させたい日なのか?
それにしてもこれは先輩の時よりも難易度が高い。
相手は建造物ガチ勢だ。
下手に答えてしまえばバッドエンド確定。
何かいい逃げ道はないか……。
いや後輩の視線が怖すぎてまともに顔見れないんですけど。
視線をきょろきょろさせているとふと時間が目に入る。
……筋道は見えた!!
「そ、そんなことより時間は大丈夫か?」
時刻は昼休み終了10分を切っている。
「げ、やばっ!」
後輩もそんな俺の言葉を聞いて自分の腕時計に目を向けて、急いでクリーム入り麻婆豆腐をかきこんでいた。
あれ、君もそれ食べてるの?何案外おいしいとかそんなパターン?
先輩とかは涙目になってたけど後輩はなんか普通に食べてるし、逆に気になってきたんだけど。
今度メニューに出てたら買ってみようかな。
「じゃ、俺は先に戻るから」
「ふぁい!」
口に物を入れたまま喋らない。
ま、ともかく何とか質問に答えずに逃げることができた俺は一安心だ。
……なんかうちの会社、ていうか部署おかしな人しかいないんじゃないか?
い、いやあの二人が、特に後輩が目立って仕方ないだけだよな!
俺はいたって普通だしな!
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる