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第二章 幽霊の成長
20話 レイの大切な物、俺の大事な物。それは人それぞれ……人?
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気づけば俺はストーカーのように、レイの後ろについて一緒に部屋の中に入っていた。
まあもとをただせば俺の部屋なわけだし別についていっても何も問題はないはずだ。
最近は俺自身もレイの部屋って認識しかけているけど、そんなことはまったくもってそんなことはないはずだ。そうだよね?
「この部屋の片づけをしよう!そうだそれがいい!俺は相変わらず頭がいいな!」
そういっては見たものの、普段全く使わない部屋だ。ごみなんて落ちているはずがない。
自分の住んでいる家で使っていない部屋があるっていうのもおかしな話だが、しょせん一人暮らしだ。正直一部屋あれば十分なのだ。
なのでレイがほぼ自室にしてしまっているこの部屋にあるものといえば、読み終わった本を並べている本だなとか、ネット注文したときにできた段ボールの山とかである。
段ボールって捨てるタイミング難しいんだよね。そんな言い訳をして放置をしていたらいつの間にか山ができていた。
俺の方が片付けできてないかもしれない。
「そうだな……。例えばこのアイスの棒とか本来ごみなわけだろ?」
レイはなぜか遊び道具に昇格させてるけど。
俺が丸机の上にジェンガ風に積まれているアイス棒を一本取ると、レイに見せるようにゆっくりとごみ袋の中に捨てる。
いや、そんなつらそうな寂しそうな顔で捨てられるアイス棒を見ないでほしいんだけど。
なに、そんなにこのアイス棒に愛着がわいてたの?
なんか俺が悪いことしてるみたいじゃん。なんかごめん。
「アリとかつくだろ。このまま放置してたら。だから仕方なくだよ、仕方なく」
なんでただごみを捨ててるだけの俺が言い訳をしてるんだろう。
アリがつくとか言ってみたものの、机の上に積まれているアイス棒は一切汚れていないし、べたついてもいない。
この間ジェンガもどきゲームをしてた時も思ったけど、いったいどういう食べ方をすればこんなきれいなアイス棒ができるんだろう。
そもそもこの棒にアイスなんてついてなかったんじゃないかってくらいつるつるなんだよな。
だから正直別に捨てなくても問題はない。というかこれ以上アイス棒を捨てるとレイが何してくるかわからないから、もう捨てたくない。
何ならごみ袋に捨てたアイス棒も元の場所に戻した。
「ともかくこういう感じでいらなくなったもの……ちょっと違うか。必要ないもの?を捨てるって感じだな!」
俺がひきつった笑顔を見せながらそういうと突然レイははっとしたような顔をして、本棚の方に走っていった。
なにかひらめいたのか? パッと見た感じそこらへんにごみなんてなさそうだけど。
レイは本棚に置いていた漫画を何冊か取り出すとそれを両腕に抱えて俺の方に近寄ってくる。
そして何の躊躇もなくそれをごみ袋の中に入れた。
「……なにやってんの?」
『もう読んだから』
もう読んだからいらないってこと? ていうかレイ漫画とか読んでたの?
……てそういうことじゃなくて!!
「漫画は捨てるもんじゃないだろ!そもそも本は大事にしないと!」
俺はあわててレイが入れた漫画を袋から取り出す。
よかった、折り目とかはついてないみたいだ。
「レイ、これは捨てるもんじゃないの。俺にとっては必要なもんなの」
『でももう読んだよ?』
ああ、確かに俺もこの漫画は読んだ。何回も何回も読んだ。
この部屋の本棚に置いてある本は全部そうだ。少なくとも一回は読んでいる本ばかりだ。
それでも決して必要ないものなんかじゃないし、いらなくなったものなんて一つもない。
何回読んでも面白い本があれば、本の中に俺の思い入れも詰まっている。なんなら好きすぎて実家から持ってきた本だってあるぐらいだ。
別にいつもそれを読み返すわけではないけれど、なんか想い出が詰まっているから捨てられないし、売れない。
もし本当にもう読まないなって本があったとしても俺は捨てることはしない。
その本を売りに行って、次に買ってくれる誰かがその本を気に入ってくれればいいなと思う。
それくらいに俺にとって本とは俺の人生とは切っても切り離せないものなのだ。
こう見えて俺は読書家なのだ。
「とにかく、これは俺にとって大切なものだから捨てません。OK?」
『わかった』
本当に理解してくれたかどうかはわからないが、俺が言い聞かせるように話しながらレイに本を渡すと、今度はごみ袋に入れることなくじっと手に持った本を見つめていた。
……そうか、俺がアイス棒を捨てたときもこんな感覚だったのか。
俺にとっては必要ないものに見えても、相手にとってそれは大切なものなのかもしれない。物の価値なんてその人によって全然違うもんなんだよな。
幽霊と接してそれに気づくとか俺ほんとに人間がなってないんだなあ。
ここ数年仕事以外でまともに人と接していない弊害?いやいや俺にだって友達くらいいますから。そんなことないよ。
最近連絡とってるのはゲーム誘ってくるあいつしかいないけど、俺はそう信じている。
まあレイには悪いことしちまったな。今度ハー〇ンダッツでも買って来てやろう。
いや、棒アイスの方がいいか?
「しかしそう考えるとほんとこの部屋にごみなんてないな……」
しょうがない。こうなったら俺の部屋のごみ捨ても手伝ってもらおう!
そう考えて漫画を持ったままのレイを俺の部屋に招き入れたわけだが、その後も俺のゲームソフトとか、ゲーム機を捨てようとするもんだから、結局一つずつ俺にとって必要なものを教え込んでいたら気づけば深夜になっていて俺の掃除講座は惜しくも中断となった。
そもそもゲームソフトとかは不燃物だから可燃物と一緒に捨てられないからね?
不燃物とかいうな! 俺の大事な思い出だろうが!!
……仕事終わりでそのままレイとハチャメチャやってたからテンションがおかしくなってるな。
ちなみにレイはというと、俺が大事だといった本やらゲームソフトを全部抱えて自分の部屋に戻っていった。
何考えているのかいまいちわからなかったけど、抱えた本とかを見つめる彼女の目は、俺が言ったことを理解しようとしてくれているような、そんな気がした。
ゲーム機はさすがに止めたけどね?普通に今も俺が使ってるし、持っていかれると俺ゲームできないし。
そんなこんなで結局レイに掃除という家事を教えられなかった俺だが、頭をフル回転させてこんなものを用意してみたら、レイはごみ捨てがちょっとできるようになった。
『捨てなくていいものリスト』俺が必要だといったもの。レイが必要だと思うもの
書いてくれ→『ぼう』『本』『げーむ』
『捨てていいものリスト』デザートの空き容器、紙切れ、紙くず。それに準ずるもの。(ただしレイが使えると思ったものは除く)
レイのやつ、アイス棒を一体どれだけ貯めるつもりなのだろうか。あと俺が食べたやつに関しては、渡しても受け取ってくれないので普通に捨てている。
やっぱりべとべとしてるからか? いやべとべとするのが当たり前だからね!
それにしても一人暮らしの家でこんなリストを貼ってる俺……。
何度も思うけど俺はいったい何をやってるんだろう。
まあもとをただせば俺の部屋なわけだし別についていっても何も問題はないはずだ。
最近は俺自身もレイの部屋って認識しかけているけど、そんなことはまったくもってそんなことはないはずだ。そうだよね?
「この部屋の片づけをしよう!そうだそれがいい!俺は相変わらず頭がいいな!」
そういっては見たものの、普段全く使わない部屋だ。ごみなんて落ちているはずがない。
自分の住んでいる家で使っていない部屋があるっていうのもおかしな話だが、しょせん一人暮らしだ。正直一部屋あれば十分なのだ。
なのでレイがほぼ自室にしてしまっているこの部屋にあるものといえば、読み終わった本を並べている本だなとか、ネット注文したときにできた段ボールの山とかである。
段ボールって捨てるタイミング難しいんだよね。そんな言い訳をして放置をしていたらいつの間にか山ができていた。
俺の方が片付けできてないかもしれない。
「そうだな……。例えばこのアイスの棒とか本来ごみなわけだろ?」
レイはなぜか遊び道具に昇格させてるけど。
俺が丸机の上にジェンガ風に積まれているアイス棒を一本取ると、レイに見せるようにゆっくりとごみ袋の中に捨てる。
いや、そんなつらそうな寂しそうな顔で捨てられるアイス棒を見ないでほしいんだけど。
なに、そんなにこのアイス棒に愛着がわいてたの?
なんか俺が悪いことしてるみたいじゃん。なんかごめん。
「アリとかつくだろ。このまま放置してたら。だから仕方なくだよ、仕方なく」
なんでただごみを捨ててるだけの俺が言い訳をしてるんだろう。
アリがつくとか言ってみたものの、机の上に積まれているアイス棒は一切汚れていないし、べたついてもいない。
この間ジェンガもどきゲームをしてた時も思ったけど、いったいどういう食べ方をすればこんなきれいなアイス棒ができるんだろう。
そもそもこの棒にアイスなんてついてなかったんじゃないかってくらいつるつるなんだよな。
だから正直別に捨てなくても問題はない。というかこれ以上アイス棒を捨てるとレイが何してくるかわからないから、もう捨てたくない。
何ならごみ袋に捨てたアイス棒も元の場所に戻した。
「ともかくこういう感じでいらなくなったもの……ちょっと違うか。必要ないもの?を捨てるって感じだな!」
俺がひきつった笑顔を見せながらそういうと突然レイははっとしたような顔をして、本棚の方に走っていった。
なにかひらめいたのか? パッと見た感じそこらへんにごみなんてなさそうだけど。
レイは本棚に置いていた漫画を何冊か取り出すとそれを両腕に抱えて俺の方に近寄ってくる。
そして何の躊躇もなくそれをごみ袋の中に入れた。
「……なにやってんの?」
『もう読んだから』
もう読んだからいらないってこと? ていうかレイ漫画とか読んでたの?
……てそういうことじゃなくて!!
「漫画は捨てるもんじゃないだろ!そもそも本は大事にしないと!」
俺はあわててレイが入れた漫画を袋から取り出す。
よかった、折り目とかはついてないみたいだ。
「レイ、これは捨てるもんじゃないの。俺にとっては必要なもんなの」
『でももう読んだよ?』
ああ、確かに俺もこの漫画は読んだ。何回も何回も読んだ。
この部屋の本棚に置いてある本は全部そうだ。少なくとも一回は読んでいる本ばかりだ。
それでも決して必要ないものなんかじゃないし、いらなくなったものなんて一つもない。
何回読んでも面白い本があれば、本の中に俺の思い入れも詰まっている。なんなら好きすぎて実家から持ってきた本だってあるぐらいだ。
別にいつもそれを読み返すわけではないけれど、なんか想い出が詰まっているから捨てられないし、売れない。
もし本当にもう読まないなって本があったとしても俺は捨てることはしない。
その本を売りに行って、次に買ってくれる誰かがその本を気に入ってくれればいいなと思う。
それくらいに俺にとって本とは俺の人生とは切っても切り離せないものなのだ。
こう見えて俺は読書家なのだ。
「とにかく、これは俺にとって大切なものだから捨てません。OK?」
『わかった』
本当に理解してくれたかどうかはわからないが、俺が言い聞かせるように話しながらレイに本を渡すと、今度はごみ袋に入れることなくじっと手に持った本を見つめていた。
……そうか、俺がアイス棒を捨てたときもこんな感覚だったのか。
俺にとっては必要ないものに見えても、相手にとってそれは大切なものなのかもしれない。物の価値なんてその人によって全然違うもんなんだよな。
幽霊と接してそれに気づくとか俺ほんとに人間がなってないんだなあ。
ここ数年仕事以外でまともに人と接していない弊害?いやいや俺にだって友達くらいいますから。そんなことないよ。
最近連絡とってるのはゲーム誘ってくるあいつしかいないけど、俺はそう信じている。
まあレイには悪いことしちまったな。今度ハー〇ンダッツでも買って来てやろう。
いや、棒アイスの方がいいか?
「しかしそう考えるとほんとこの部屋にごみなんてないな……」
しょうがない。こうなったら俺の部屋のごみ捨ても手伝ってもらおう!
そう考えて漫画を持ったままのレイを俺の部屋に招き入れたわけだが、その後も俺のゲームソフトとか、ゲーム機を捨てようとするもんだから、結局一つずつ俺にとって必要なものを教え込んでいたら気づけば深夜になっていて俺の掃除講座は惜しくも中断となった。
そもそもゲームソフトとかは不燃物だから可燃物と一緒に捨てられないからね?
不燃物とかいうな! 俺の大事な思い出だろうが!!
……仕事終わりでそのままレイとハチャメチャやってたからテンションがおかしくなってるな。
ちなみにレイはというと、俺が大事だといった本やらゲームソフトを全部抱えて自分の部屋に戻っていった。
何考えているのかいまいちわからなかったけど、抱えた本とかを見つめる彼女の目は、俺が言ったことを理解しようとしてくれているような、そんな気がした。
ゲーム機はさすがに止めたけどね?普通に今も俺が使ってるし、持っていかれると俺ゲームできないし。
そんなこんなで結局レイに掃除という家事を教えられなかった俺だが、頭をフル回転させてこんなものを用意してみたら、レイはごみ捨てがちょっとできるようになった。
『捨てなくていいものリスト』俺が必要だといったもの。レイが必要だと思うもの
書いてくれ→『ぼう』『本』『げーむ』
『捨てていいものリスト』デザートの空き容器、紙切れ、紙くず。それに準ずるもの。(ただしレイが使えると思ったものは除く)
レイのやつ、アイス棒を一体どれだけ貯めるつもりなのだろうか。あと俺が食べたやつに関しては、渡しても受け取ってくれないので普通に捨てている。
やっぱりべとべとしてるからか? いやべとべとするのが当たり前だからね!
それにしても一人暮らしの家でこんなリストを貼ってる俺……。
何度も思うけど俺はいったい何をやってるんだろう。
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