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第二章 幽霊の成長
13話 すごい今更な気もするけど、やっぱり妄想じゃなくて現実みたいです(前編)
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仕事から帰ってきて珍しくその日のうちにコンビニで買ってきたモンブランをほおばりながら、俺はレイについて考えていた。
もちろんレイも今俺の目の前で、俺を見下ろす形で机の上で正座をして俺が買ってきたプリンを幸せそうに食べている。
ちゃんと皿の上にプッチンしているから、レイもプッチンプリンのこの食べ方がお気に召したようだ。
まあそのプリンも別にレイのために買ってきたわけではなく、夜小腹が空いたときとか明日食べようとか考えてたわけなんですけど、そんなのは甘い考えでしたね。
スイーツだけに。
「……はあ。ギャグにセンスのかけらも感じられない」
モンブランを食べながらため息をついている俺の姿を、レイは小首をかしげながら見つめてくる。
俺のセンスのなさをレイは気づかなくてもいいんだよ。そのまま何も知らない純粋に育ってくれ。そして俺のギャグで笑ってくれていいんだよ。
だから俺が食べているモンブランをかすめ取ろうとしないでね?
モンブランはおいしくいただくから。そんな獲物を狙うような目線で冷気をこっちに飛ばしてこないで。モンブラン凍っちゃうから。
このモンブラン、新発売と書いていたから買ってみたんだが、コンビニスイーツなのにこのフワフワの栗クリームが口の中でほどけるんですよ。
ほんとにコンビニ侮るなかれ。たまに外れもあるけど、大体それは冒険心が強い商品だから許容範囲内。
そんなふわふわクリームのモンブランを口の端につけているレイの様子を見て、思考を元に戻す。
当然一瞬でものをかすめ取る技術を持ち合わせているレイさんに、俺が抗うすべなんてなかった。
まあおいしそうに食べてるからいいんだけどね。
そんなレイだが、結局何者なんだろうか。
一番可能性があるのは俺の妄想、イマジナリーフレンドっていう線。
一人暮らし生活が寂しすぎて、一人で暮らすにはあまりに広すぎるこの家で知らず知らずのうちに、架空の人物を妄想して実体化させてしまっているのだろうか。
レイが食べていると思っているプリンとかモンブランとかは実はしっかり俺が食べていて、扉が勝手に開け閉めされているとか、別の部屋の物音とかも俺が無意識のうちにそういう行動をとっているとか、妄想で鳴ってる気がしているだけでレイがやっている気になってるとか……。
そういう行動をとっているかもしれないって自覚しているのに、病院に行こうとしていないこの事実が一番やばいんじゃないか?
まあ一つ気になることがあるとすれば、この間のボールペン争奪戦の時のレイの笑い声がお隣さんに聞こえていたらしいから、俺が裏声で笑ってない限り他人にもレイが出す物音や、笑い声は聞こえてるってこと。
「ほな、妄想とちゃうかー」
自分にギャグセンスがないから最近有名なお笑いグランプリで優勝した漫才師のギャグを引っ張ってきてしまう始末。
……なんかシリアルコーン食べたくなってきたな。
あとレイさん、冷蔵庫開けても今日はもうデザート入ってないからね。
どれだけ食い意地張ってんだよ。今度普通のご飯も用意してみようか。
二つ目の可能性はやっぱりこの家に住み着いた幽霊ってこと。
幽霊やもののけの類を信じていない俺である。
ただしここまで物音、物が宙に浮く、デザートの中身だけがなくなるといった定番のポルターガイストやら、体が透けてて普通に俺の体を通り抜けたり、彼女に触れたときの思わず背中が伸びてしまうそれは、ありふれた幽霊の特徴そのものだ。
俺が住む前からいるのか俺が住みだしてから現れたのかはわからないが、ここにずっといて最近存在を示すようになってきた可能性。
まあ信ぴょう性は高いが、 結局のところレイの姿を見ているのが俺しかいないから何とも言えないんだけど。
あーだめだ。何度かこういうことを考えてはいるけど、いつも同じループに入ってしまって結論が出ない。
まあなんだかんだレイが現れるようになってから生活に退屈はしてないし、別に困ってないからいいんだけど、気になるものは気になる。
ちなみに食後のデザート代だけはレイが現れる前より3倍ほど増えている。
なんでだろうね。
考えをリセットするために、俺は大きくその場で伸びをする。すると机の上に置いているスマホからメッセージが来たことを知らせる着信音が鳴る。
その音にびっくりしたのかレイは冷蔵庫を開けたままこちらに首だけ向けてびくっと震える。
いや絶対に曲がらない角度まで首が曲がってるレイの姿の方がびっくりするし、そろそろ冷蔵庫閉じてもらっていいかな。冷蔵庫の冷気とレイの寒気が合わさって俺の体が凍えそう。
俺がスマホを手に持つと警戒を解いたのか寒気は消えて首の向きも元に戻る。
冷蔵庫は相変わらず空いたままだ。今は三段目に突入している。
あれ、確か冷凍庫には保存食のアイスがあったような……。
『ゲームしようぜ』
冷凍庫の中身を思い出しながら届いたメッセージを確認すると、そんなメッセージとともにゲームのダウンロード先URLが貼り付けられていた。
もちろんレイも今俺の目の前で、俺を見下ろす形で机の上で正座をして俺が買ってきたプリンを幸せそうに食べている。
ちゃんと皿の上にプッチンしているから、レイもプッチンプリンのこの食べ方がお気に召したようだ。
まあそのプリンも別にレイのために買ってきたわけではなく、夜小腹が空いたときとか明日食べようとか考えてたわけなんですけど、そんなのは甘い考えでしたね。
スイーツだけに。
「……はあ。ギャグにセンスのかけらも感じられない」
モンブランを食べながらため息をついている俺の姿を、レイは小首をかしげながら見つめてくる。
俺のセンスのなさをレイは気づかなくてもいいんだよ。そのまま何も知らない純粋に育ってくれ。そして俺のギャグで笑ってくれていいんだよ。
だから俺が食べているモンブランをかすめ取ろうとしないでね?
モンブランはおいしくいただくから。そんな獲物を狙うような目線で冷気をこっちに飛ばしてこないで。モンブラン凍っちゃうから。
このモンブラン、新発売と書いていたから買ってみたんだが、コンビニスイーツなのにこのフワフワの栗クリームが口の中でほどけるんですよ。
ほんとにコンビニ侮るなかれ。たまに外れもあるけど、大体それは冒険心が強い商品だから許容範囲内。
そんなふわふわクリームのモンブランを口の端につけているレイの様子を見て、思考を元に戻す。
当然一瞬でものをかすめ取る技術を持ち合わせているレイさんに、俺が抗うすべなんてなかった。
まあおいしそうに食べてるからいいんだけどね。
そんなレイだが、結局何者なんだろうか。
一番可能性があるのは俺の妄想、イマジナリーフレンドっていう線。
一人暮らし生活が寂しすぎて、一人で暮らすにはあまりに広すぎるこの家で知らず知らずのうちに、架空の人物を妄想して実体化させてしまっているのだろうか。
レイが食べていると思っているプリンとかモンブランとかは実はしっかり俺が食べていて、扉が勝手に開け閉めされているとか、別の部屋の物音とかも俺が無意識のうちにそういう行動をとっているとか、妄想で鳴ってる気がしているだけでレイがやっている気になってるとか……。
そういう行動をとっているかもしれないって自覚しているのに、病院に行こうとしていないこの事実が一番やばいんじゃないか?
まあ一つ気になることがあるとすれば、この間のボールペン争奪戦の時のレイの笑い声がお隣さんに聞こえていたらしいから、俺が裏声で笑ってない限り他人にもレイが出す物音や、笑い声は聞こえてるってこと。
「ほな、妄想とちゃうかー」
自分にギャグセンスがないから最近有名なお笑いグランプリで優勝した漫才師のギャグを引っ張ってきてしまう始末。
……なんかシリアルコーン食べたくなってきたな。
あとレイさん、冷蔵庫開けても今日はもうデザート入ってないからね。
どれだけ食い意地張ってんだよ。今度普通のご飯も用意してみようか。
二つ目の可能性はやっぱりこの家に住み着いた幽霊ってこと。
幽霊やもののけの類を信じていない俺である。
ただしここまで物音、物が宙に浮く、デザートの中身だけがなくなるといった定番のポルターガイストやら、体が透けてて普通に俺の体を通り抜けたり、彼女に触れたときの思わず背中が伸びてしまうそれは、ありふれた幽霊の特徴そのものだ。
俺が住む前からいるのか俺が住みだしてから現れたのかはわからないが、ここにずっといて最近存在を示すようになってきた可能性。
まあ信ぴょう性は高いが、 結局のところレイの姿を見ているのが俺しかいないから何とも言えないんだけど。
あーだめだ。何度かこういうことを考えてはいるけど、いつも同じループに入ってしまって結論が出ない。
まあなんだかんだレイが現れるようになってから生活に退屈はしてないし、別に困ってないからいいんだけど、気になるものは気になる。
ちなみに食後のデザート代だけはレイが現れる前より3倍ほど増えている。
なんでだろうね。
考えをリセットするために、俺は大きくその場で伸びをする。すると机の上に置いているスマホからメッセージが来たことを知らせる着信音が鳴る。
その音にびっくりしたのかレイは冷蔵庫を開けたままこちらに首だけ向けてびくっと震える。
いや絶対に曲がらない角度まで首が曲がってるレイの姿の方がびっくりするし、そろそろ冷蔵庫閉じてもらっていいかな。冷蔵庫の冷気とレイの寒気が合わさって俺の体が凍えそう。
俺がスマホを手に持つと警戒を解いたのか寒気は消えて首の向きも元に戻る。
冷蔵庫は相変わらず空いたままだ。今は三段目に突入している。
あれ、確か冷凍庫には保存食のアイスがあったような……。
『ゲームしようぜ』
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