気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。

葵 悠静

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第一章 幽霊との遭遇

2話 幽霊ですか、強盗ですか。トイレに行きたいです。

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「ただいまー。ふいーー、疲れたーー」

 

 一人暮らしが長くなればなるほど独り言が多くなる。

 これは案外一人暮らしあるあるなのではないだろうか。

 

ガラガラガラ……ボトン!

 

 今日はトイレかー。何の音だろう。あとで確認しとこ。

 

 あと特に返してくれる人もいないのに「ただいま」を帰るたびに言う。

 あーあ俺もアニメみたいに「おかえりなさい。ご飯にする?お風呂にする?それとも……」みたいなべたべたなセリフ言われたいなー。

 

 しょうもないこと考えてないでさっさと飯食ってyutubeでも見るか。

 

……ボトン。

 

 今日は主張が激しい日かー。ちゃんと夜寝れるかなあ。

 ……ああ、最近物音に関しては慣れてきて普通になんとも思わなくなってきた。

 何がとは言わないけど、今日もやってるねーくらいの感覚である。

 慣れってすごいよね。

 

「ん?」

 

 しかし俺はここでトイレに違和感を覚える。別にいつもと変わらず、扉は閉まっているのだが、感覚的に何かがおかしいのだ。

 

「なんだ?」

 

 音がするところには基本近づかない。これ俺の最近の家でのマイルール。

 一人暮らしでこの家は全部俺のもののはずなのに近づけないとかほんとわけわかんないよね。

 

 しかし一度気になってしまうと確かめたくなるのが、人間の性というもの。

 このままでは晩御飯もおいしく食べることができない。どうせ冷凍食品なんだけど。

 

 決心して恐る恐るトイレの方に忍び足で近寄る。

 トイレの中から聞こえていた物音は全く聞こえなくなっていた。

 

 妙な緊張感に襲われながら、トイレのドアノブに手をかける。

 

 ……ガチャ。

 

「……は?」

 

 ……ガチャガチャガチャ

 

 ……鍵、かかってるんですが。

 その事実をようやく頭が理解した瞬間に全身に寒気が走り、鳥肌が立つのを感じる。

 勢いよくドアノブから手を離すと思わず数歩後ずさりをする。

 しかしそんなに広さはない我が家すぐにダイニングキッチンへとつながる扉に背中がついてしまう。

 

 いや、おかしいでしょ。なんでトイレのカギが閉まってるの?

 俺は今帰ってきたばっかり。そしてトイレは外側から鍵は閉めれない。

 いや外側から鍵の開閉ができるトイレとか聞いたことないし、実際にあったとしてもだれも使わないだろうけど。

 何、最近の幽霊はトイレするの? トイレの時にプライバシーとか気にするの。

 恥じらいとか覚えちゃうタイプなの?

 

 ……いや、ちょっと待て。俺は最近の物音現象からそういう幽霊の類に関連付けて考えてしまう傾向にいる。

 幽霊なんて信じてないんだけどね。まあうちにはいるかもしれないね。

 でも冷静に考えてみれば、一般的な常識として幽霊は存在しないものだ。むしろ最近の現代社会では娯楽として提供されているほどだ。

 

 じゃあほかに何が考えられる? 俺が帰ってきてしまっているトイレのカギ……。

 強盗……とか?

 俺の家に盗みに入ったはいいもののろくなものは置いていないうえに、タイミング悪く家主の俺が帰ってきた。

 とっさに隠れた場所がトイレだとしたら……。

 

「どっちにしろ怖いわ!」

 

 思わず声をあげてしまった後にあわてて両手で口を押える。

 恐る恐るトイレの方に目を向けるが、特にアクションがあるわけではない。

 

 とりあえず突然トイレが開いて襲われるっていう展開はなさそうだ。

 口から手を離すとほっと一息つく。

 

 ただし問題が解決したわけじゃない。このままでは俺は家のトイレをずっと使えないわけだし、いつ襲われるかもわからないから満足に眠ることすらできない。

 

 トイレ立てこもり犯VS家主ってか。

 面白い、やってやろうじゃねえか!

 

 ちなみに今震えてるのはムネアツ展開による武者震いだからね。

 決して怖いから震えてるんじゃないからね。ほんとだよ?

 

 あーーー楽しいなあ!
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