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第26話 ほのぼのナルシ剣士
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「ゴガァァァァ!!」
最後に一声上げて、雪竜は光になり消えていった。
飛び上がっていたグレンが、雪の上にふわりと着地する。
そして、素早くシロの腕の中へ飛び込んできた。
「さ、寒い」
がくがく震えている。
のの花は矢継ぎ早にグレンへ質問した。
「すごかったです!!今のってどんなスキルなんですか?どういう効果ですか?もしかしてURスキルですか?」
グレンはおもむろにフードを取ると、かっこよく微笑んで言った。
「スキルか。うん、スキルとは違うんだよね」
普段のか細さはどこへ行ったという、女性にしては低めの落ち着いた声。
そして何よりも自信に満ちた表情。
ほのかに漂うナルシストの気に、のの花の目が点になる。
アイリンがのの花に、こっそり耳打ちして教えてくれた。
「お姉ちゃんはね、戦闘時とそのあと30分くらいナルシストの王子様みたいになるの」
「それって、何かのスキル?」
「違うよ。アドレナリンでも出てるんじゃないかな。どのゲームやってもこうだから」
つまり、のの花が最初に見たモニターに映るグレンは、今のような王子様モードだったということか。
「実はね、ユノちゃん。僕は今」
「ぼ、僕?」
「あ、ユノちゃん。お姉ちゃんは王子様モードに入ると、一人称が僕になるの」
のの花が戸惑う度に、アイリンの耳元解説が入る。
「僕は今、スキルを全く使っていないんだ」
「スキルを……使ってない……?」
「そう。ただ単に、剣で2、3回斬っただけ」
のの花は、意味が分からないという風に瞬きを繰り返す。
グレンが少し声を小さくして、囁くようにもう一回言った。
「ただ単に、斬っただけ」
「お姉ちゃん、そのキャラウザい」
すかさずアイリンのツッコミが入る。
グレンは気にも留めずに、アイリンの肩を抱き寄せた。
「冷たいじゃないか、子猫ちゃん」
「子猫ちゃんじゃないし!!あなたのい・も・う・と!!」
のの花はついていけない。
グレンのキャラにも、その能力にも。
2、3回斬っただけで雪竜が倒せてしまうというのは、ATAが異常に高いということ。
「グレンさん……ステータスどうなってるんですか……」
のの花が聞くと、グレンはアイリンを抱いたまま答えた。
「そうだね。ステータスはバランスよく伸ばしているから、特にATAが高い訳ではないよ。それでも僕はレベルが高いから、スキルを使わなくても高い与ダメージを実現できるんだよ。今は確か、レベル70だったかな」
「な、な、70!?異常じゃないですか……」
あきれるのの花に、アイリンがツッコむ。
「まあ、お姉ちゃんはゲーム廃人だからね。でもユノちゃんも十分異常だからね?」
ゲーム廃人と言われて、グレンが心外だという表情をする。
しかしすぐに決め顔になり、「それはそうと」とのの花に言った。
「今は、雪煌石を採取するのが優先じゃないかい?」
「そ、そうでした!!」
雪竜は30分でリスポーンする。
それまでに、必要な量の雪煌石を採取しなければ。
「シロに石のところまで行ってもらって、一瞬で採ろうか」
「そうだね。じゃあ、アイリンちゃん指示をお願い」
「オッケー!!シロ、あの石が固まってるところへ行って!!」
「くう~ん」
シロが石のまとまってきらめいている場所で止まると、のの花はつるはしを取り出した。
ピンク色の木の柄に、ぼんやりと青く光る金属製の頭部がついている。
全体的にパステルカラーで、何ともファンシーなつるはしだ。
「ユノちゃん、それは?」
「これは鍛冶師が鉱石を掘る時に使うつるはしだよ~。これを使うと、普通より短時間で鉱石を採れるんだ~」
「それって、鍛冶師の人が使うと得られる補正じゃないの?」
「そうだよ」
「え?」
「ん?」
きょとんとするアイリンに、のの花は「あれ、言ってなかったっけ?」という顔をする。
「まさかだけどさ、ユノちゃん」
「ん?」
「鍛冶師、出来るの?」
「うん!!【全能】は全能だからね」
「あ~、なるほど……ね」
掲示板でものの花の話は盛んにされているため、大体の人がのの花はなぜか冒険職の全ジョブがこなせると知っている。
しかし、市民職までこなせると知っているのは、サクラとリュウと花音と運営くらいだ。
そこに新しく、グレンとアイリンが加わった。
「じゃ、いくよっ!!」
のの花は「ガスッ、ゴスッ」と音を立てながら石を削り始めた。
最後に一声上げて、雪竜は光になり消えていった。
飛び上がっていたグレンが、雪の上にふわりと着地する。
そして、素早くシロの腕の中へ飛び込んできた。
「さ、寒い」
がくがく震えている。
のの花は矢継ぎ早にグレンへ質問した。
「すごかったです!!今のってどんなスキルなんですか?どういう効果ですか?もしかしてURスキルですか?」
グレンはおもむろにフードを取ると、かっこよく微笑んで言った。
「スキルか。うん、スキルとは違うんだよね」
普段のか細さはどこへ行ったという、女性にしては低めの落ち着いた声。
そして何よりも自信に満ちた表情。
ほのかに漂うナルシストの気に、のの花の目が点になる。
アイリンがのの花に、こっそり耳打ちして教えてくれた。
「お姉ちゃんはね、戦闘時とそのあと30分くらいナルシストの王子様みたいになるの」
「それって、何かのスキル?」
「違うよ。アドレナリンでも出てるんじゃないかな。どのゲームやってもこうだから」
つまり、のの花が最初に見たモニターに映るグレンは、今のような王子様モードだったということか。
「実はね、ユノちゃん。僕は今」
「ぼ、僕?」
「あ、ユノちゃん。お姉ちゃんは王子様モードに入ると、一人称が僕になるの」
のの花が戸惑う度に、アイリンの耳元解説が入る。
「僕は今、スキルを全く使っていないんだ」
「スキルを……使ってない……?」
「そう。ただ単に、剣で2、3回斬っただけ」
のの花は、意味が分からないという風に瞬きを繰り返す。
グレンが少し声を小さくして、囁くようにもう一回言った。
「ただ単に、斬っただけ」
「お姉ちゃん、そのキャラウザい」
すかさずアイリンのツッコミが入る。
グレンは気にも留めずに、アイリンの肩を抱き寄せた。
「冷たいじゃないか、子猫ちゃん」
「子猫ちゃんじゃないし!!あなたのい・も・う・と!!」
のの花はついていけない。
グレンのキャラにも、その能力にも。
2、3回斬っただけで雪竜が倒せてしまうというのは、ATAが異常に高いということ。
「グレンさん……ステータスどうなってるんですか……」
のの花が聞くと、グレンはアイリンを抱いたまま答えた。
「そうだね。ステータスはバランスよく伸ばしているから、特にATAが高い訳ではないよ。それでも僕はレベルが高いから、スキルを使わなくても高い与ダメージを実現できるんだよ。今は確か、レベル70だったかな」
「な、な、70!?異常じゃないですか……」
あきれるのの花に、アイリンがツッコむ。
「まあ、お姉ちゃんはゲーム廃人だからね。でもユノちゃんも十分異常だからね?」
ゲーム廃人と言われて、グレンが心外だという表情をする。
しかしすぐに決め顔になり、「それはそうと」とのの花に言った。
「今は、雪煌石を採取するのが優先じゃないかい?」
「そ、そうでした!!」
雪竜は30分でリスポーンする。
それまでに、必要な量の雪煌石を採取しなければ。
「シロに石のところまで行ってもらって、一瞬で採ろうか」
「そうだね。じゃあ、アイリンちゃん指示をお願い」
「オッケー!!シロ、あの石が固まってるところへ行って!!」
「くう~ん」
シロが石のまとまってきらめいている場所で止まると、のの花はつるはしを取り出した。
ピンク色の木の柄に、ぼんやりと青く光る金属製の頭部がついている。
全体的にパステルカラーで、何ともファンシーなつるはしだ。
「ユノちゃん、それは?」
「これは鍛冶師が鉱石を掘る時に使うつるはしだよ~。これを使うと、普通より短時間で鉱石を採れるんだ~」
「それって、鍛冶師の人が使うと得られる補正じゃないの?」
「そうだよ」
「え?」
「ん?」
きょとんとするアイリンに、のの花は「あれ、言ってなかったっけ?」という顔をする。
「まさかだけどさ、ユノちゃん」
「ん?」
「鍛冶師、出来るの?」
「うん!!【全能】は全能だからね」
「あ~、なるほど……ね」
掲示板でものの花の話は盛んにされているため、大体の人がのの花はなぜか冒険職の全ジョブがこなせると知っている。
しかし、市民職までこなせると知っているのは、サクラとリュウと花音と運営くらいだ。
そこに新しく、グレンとアイリンが加わった。
「じゃ、いくよっ!!」
のの花は「ガスッ、ゴスッ」と音を立てながら石を削り始めた。
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