全能少女、VRMMOをほのぼの無双する~外れスキル【雑用】がチートスキル【全能】に進化した私の適正ジョブは全部です~

メルメア

文字の大きさ
上 下
20 / 41

第20話 ほのぼのしてる場合じゃない

しおりを挟む
 隠しダンジョンは、何か特定の条件を満たしたときに出現する特別なダンジョンだ。
 通常のダンジョンに比べて、モンスターが強く報酬が豪華なのが特徴である。

「おっと、分かれ道か」

 ダンジョンを少し進んだところで、道が2つに分かれている。
 どちらの道も先は暗くなっていて、何があるのかは見えない。

「どちらかが正解で、どちらかが行き止まりってのが可能性高いか?」
「あるいは、先の方で繋がってるっていう可能性もあるわね」

 こういう時に頼りになるのは、ベテランゲーマーのサクラとリュウだ。
 のの花と花音は、どうしたらいいのか見当がつかない。
 結局、二手に分かれて進むことになった。
 右の通路に花音・サクラ・リュウ。左側がのの花だ。
 人数的には差があるが、戦力的にはバランスが取れている。
 のの花には【連鎖分身】があるため、艦隊と化した時はのの花の方が強いくらいだ。

「【連鎖分身】は時間制限とクールタイムがあるから、使いどころを気を付けてね」
「分かりました」

 サクラに最後のアドバイスをもらって、のの花は1人左の道へ踏み出した。
 するとガシャンという音とともに、シャッターが下りてくる。
 左側の道がふさがれた。
 慌てて花音が駆け寄り、シャッターを叩く。

「だめだ…硬い。ユノ、大丈夫⁉」
「大丈夫だよ~」

 思いのほか、のんきな声が返ってきた。

「びっくりしたけど、シャッターが落ちてから明るくなったし近くに危険はなさそう~」
「そう、なら良かった。じゃ、あとでね」
「は~い」

 シャッターの中には、今まで歩いてきたのと変わらず道が続いている。
 のの花は大盾を構えながら、のんびりと歩いていた。

「モンスター出てこないなぁ」

 出現した時にものすごい落下ダメージを受けた割に、ダンジョン内にはモンスターが少ない。
 花音たちと別れてからは、1体も目にしていなかった。

「まあ、気持ち悪いのが出てくるのよりはいいけど」

 てくてく進んでいくと、気付けば目の前に石の扉がある。
 ゴブリンのいたダンジョンと同じ扉だ。
 どうやら、この先がボス部屋らしい。

「ええ?分かれ道からモンスターを1体も倒さないうちに、もうボスなの?」

 のの花は驚きながらも、石の扉を力いっぱい押す。
 しかし、どれだけ力を入れても扉が開かない。

「おかしいな…って、ここに取手あるじゃん」

 PUSHではなくPULLだったことに気付き、のの花が取手をつかんで力いっぱい引く。
 ギギギと音を立てて、石の扉が開く。
 そして…

「うわああああ!!」

 勢いよく水が流れ込んできた。
 尋常じゃない量。
 どうやら、ボス部屋全体が水で満たされているようだ。

「やばいやばい!!」

 水に触れることが直接ダメージになるわけではないが、溺れればもちろん死ぬ。
 のの花は必死に扉を閉めようとするが、水の勢いに押されて全く動かせない。

「こうなったら…」

 のの花は、扉を閉めるのではなく水を何とか処理する方向に考えを切り替えた。

「【太陽砲】!!」

 試しに大きな火の玉を撃ってみるが、水の量が多すぎて一部が蒸発するだけにとどまった。

「【氷柱の雨】!!」

 水を凍らせてボス部屋への入口を固めてみるも、勢いに押されてあっという間に決壊する。
 水はどんどんあふれ出して、とうとうのの花の腰の高さまで来た。
 シャッターのせいで、水が逃げていかないのだ。

「このままじゃ溺れ死んじゃうよ…」

 焦るのの花。
 すると入口から、触手がにゅっと伸びてきた。
 かなり大きい。びっしりと並んでいる吸盤が、のの花の顔より一回り大きいくらいだ。

「これは、タコ…?」

 のの花の顔がさあっと青ざめた。
 のの花の嫌いなものBEST5に間違いなく入るのが、タコという生物なのだ。
 小さい頃に顔面へ張り付かれて以来、ずっとトラウマなのである。

「【戦略的撤退】ぃぃぃぃ!!」

 即座に逃げるという判断をしたのの花だったが、水かさが増していく中で思うように動けない。
 タコの触手に足をからめとられ、バランスを崩した。

「んぶっ…ごぼっ…ごぼべぼ…」

 突然水の中に叩き付けられ、息ができない。
 のの花は苦しみながら斧を取り出すと、必死に振りまわした。
 何とかタコの触手を切断する。
 もう少し遅れていたら、ボス部屋まで引きずり込まれていた。

「危ない…」

 のの花が息を整えていると、タコの触手がにょきにょきと再生した。

「ええ⁉再生するの…」

 つまり、触手を斬るだけではダメージを与えられない。
 おそらくは頭の方に攻撃しなければいけないのだろう。

「でも…水中じゃ戦えないし…。このままじゃどのみち溺れちゃうし…」

 水かさはあばらの辺りまで高まっている。
 のの花、キングゴブリン戦以来のピンチを迎えた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

年下の地球人に脅されています

KUMANOMORI(くまのもり)
SF
 鵲盧杞(かささぎ ろき)は中学生の息子を育てるシングルマザーの宇宙人だ。  盧杞は、息子の玄有(けんゆう)を普通の地球人として育てなければいけないと思っている。  ある日、盧杞は後輩の社員・谷牧奨馬から、見覚えのないセクハラを訴えられる。  セクハラの件を不問にするかわりに、「自分と付き合って欲しい」という谷牧だったが、盧杞は元夫以外の地球人に興味がない。  さらに、盧杞は旅立ちの時期が近づいていて・・・    シュール系宇宙人ノベル。

戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ
SF
奇跡の保存状態で頭部だけが発見された戦国時代の武士、虎一郎は最新の技術でデータで復元され、VRゲームの世界に甦った。 しかし甦った虎一郎は何をして良いのか分からず、ゲーム会社の会長から「畑でも耕してみたら」と、おすすめされ畑を耕すことに。 農業、食堂、バトルのVRMMOコメディ! ※この小説はサラッと読めるように名前にルビを多めに振ってあります。

滅亡後の世界で目覚めた魔女、過去へ跳ぶ

kuma3
SF
滅びた世界の未来を変えるため、少女は過去へ跳ぶ。 かつて魔法が存在した世界。しかし、科学技術の発展と共に魔法は衰退し、やがて人類は自らの過ちで滅びを迎えた──。 眠りから目覚めたセレスティア・アークライトは、かつての世界に戻り、未来を変える旅に出る。 彼女を導くのは、お茶目な妖精・クロノ。 魔法を封じた科学至上主義者、そして隠された陰謀。 セレスティアは、この世界の運命を変えられるのか──。

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

処理中です...