全能少女、VRMMOをほのぼの無双する~外れスキル【雑用】がチートスキル【全能】に進化した私の適正ジョブは全部です~

メルメア

文字の大きさ
上 下
11 / 41

第11話 ほのぼのイベント開始!!

しおりを挟む
 イベント当日。
 街の中央にある広場に続々と集まってくるプレイヤーの中に、のの花と花音もいた。

「いよいよだね」
「だね。楽しみだけど、緊張してきた~」

 のの花はさっきから何度も深呼吸している。
 胸に手を当ててみると、心臓がバクバク鳴っているのがよく分かった。

「だけど、ユノはやばい装備手に入れたんでしょ?【全能】もあるし、本当に10位以内も夢じゃないね」
「うん、頑張ってみる。ユカもだいぶレベルあがったもんね」
「まあでも、今の私じゃきついかなぁ。できる限り頑張るけど」

 今回のイベントはバトルロワイヤル。
 制限時間は3時間で、プレイヤーを1人倒すごとにポイントが与えられる。
 逆に倒されると、デスペナルティとして減点。
 3時間経過時に一番多くのポイントを持ってしていた人が優勝だ。
 もしポイントで並んだ場合は、与ダメージから被ダメージを引いた値の大きい方が上位となる。
 サッカーなどの得失点差と同じようなルールだ。

「ふふ、2人とも出会った時はお手柔らかにね」

 いつの間にか、のの花たちの後ろにサクラが立っていた。

「あ、サクラさんおはようございます!!」
「おはようございます」
「おはよ~。お互い頑張ろうね」
「「はい!!」」

 サクラは「じゃ、またね」と手を振って人ごみの中へ消えていった。

「ど、ど、ど、ど、どうしよう⁉サクラさんと戦わなきゃダメなのかな⁉」
「ぶつかる可能性はあるよね、バトロワだし。というか落ち着け、ユノ」

 「はわわわ」状態になっているのの花に深呼吸させて、花音が言う。

「ま、いざとなったら本気でぶつかろうよ」
「うん、そうだよね。でも、やっぱり戦いたくないなぁ」
「まあね。あ、始まるみたいだよ」

 広場の上空がぱっと光り、その光がかわいらしい妖精の形に変化する。
 SSOの公式キャラクター、「美少女妖精アイリスちゃん」だ。

「は~いみんな~、第1回SSO大規模イベント!!『3時間ポイント制バトルロワイヤル』へようこそ~!!」
「うおおおお‼アイリスちゃ~ん!!」
「アイリス様ぁぁぁぁ!!尊い!!」

 一気にプレイヤーたちが沸き立った。
 アイリスちゃんはプレイヤー間でものすごく人気がある。
 バーチャル美少女配信者としても活動中だが、つい先日チャンネル登録者が100万人を超えたらしい。

 広場の熱気がどんどん高まっていく。
 上位を目指すガチ勢、そこそこでいいというエンジョイ勢など思惑は様々だが、みんな共通しているのは「このイベントを楽しんでやる!!」という気持ちだ。

「ルールブックを事前に配布してあるから、分からないことがあったらそれを読んでね!!じゃあ待ちきれない人たちもいるようだし、イベントを始めよう!!カウントダウンの準備はいい~⁉」
「「「「「おおおおおおお!!!!!」」」」」
「じゃあいくよ~‼10、9、8……」

 のの花と花音は向かい合って、ハイタッチを交わした。

「じゃあ、頑張ろう」
「うん!!頑張ろう!!」

 広場の熱気が最高潮に達する。

「「「「「3、2、1、0!!!!!」」」」」

 プレイヤーが光に包まれ、イベント用のフィールドへ送り込まれた。



「ここが、イベント用のフィールドかぁ」

 のの花が飛ばされたのは、森の中のやや開けた場所。
 すぐ近くにプレイヤーはいないようだ。

「あ、このお花!!SPポーションになるやつじゃん!!」

 周りに生えていたのは、ポーションの材料になる花だった。
 早速摘んで、ポーションを作り始める。
 無駄に動き回るより、体力を温存してやってきた敵を迎え撃つというスタンスだ。

「いや~、ラッキーラッキー。SPポーションはいくらあってもいいからね」

 のの花がせっせとポーションを作っていると、後ろから足音がした。
 続いて男の声。

「おいおい、ポーション作ってる嬢ちゃんがいるぜ。見たところ初心者装備だし、市民職はバトルイベント向きじゃねぇぞ」

 のの花が振り返ると、男性プレイヤーが3人立っている。
 長剣、大盾、弓矢とバランスの良い組み合わせだ。
 パーティーは組めないためお互いにバフを掛けたり回復したりはできないが、それでも数がいれば倒せる敵も多くなる。
 知り合い同士で一緒に行動しているのだろう。

「っしゃ、まずは1ポイント頂きだぜ!!」

 長剣の男が、勝利を確信してのの花に斬りかかる。
 彼はのの花のことを、薬剤師か何かの市民職だと思っているのだろう。
 ただ残念なことに、のの花は全能だった。

「おりゃ!!」
「えいっ!!」

 男の長剣を、のの花が大盾で防ぐ。
 圧倒的にパワーのありそうな男の方が、よろけて尻もちをついた。

「は?何で俺の攻撃が初期装備の盾に防がれるんだ……?」

 のの花が使っているのはもちろん初期装備ではなく、ユニークセット《初心者の皮を被った熟練戦士》の『初心者装備のような大盾』。
 武器スキル【攻撃的盾使い】は、『攻撃を防ぐと20秒に1度の割合でノックバックを発生させる』だ。

「ふっふっふ~。こっちの番ですよ!!」

 のの花は不敵に笑うと、長剣を取り出した。
 もちろんこれも《初心者の皮を被った熟練戦士》の装備である。

「おいおい、盾使いは短剣以外の武器は使えないはずだろ……?てかお前、市民職じゃないのかよ……?」

 のの花と関わる人は、みんな何がなんだか分からないという顔をする。
 この男性プレイヤーも、例外ではなかった。

「えいっ!!」

 尻もちをついたまま混乱しているところに、のの花が長剣を振り下ろす。

「おかしいだろぉぉぉぉ!!」

 悲痛な声を上げながら、男性プレイヤーは光となって消えた。
 後ろにいた2人は「ひっ」と声を上げて逃げようとする。

「逃がさないよ!!」

 のの花は長剣を弓矢に持ち帰ると、走り去ろうとする2人の背中に向けて放つ。
 矢が2本になり、一瞬消え……

「はぁぁぁぁ⁉」
「何で弓矢も使えるんだ⁉」

 スキルをバリバリに発動させながら、驚く男たちを射抜いた。
 彼らもまた、光となって消えていく。

「やったぁ!!3ポイント!!よし、ポーション作り再開っと」

 のの花は再び、周りの花を摘み始めた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

年下の地球人に脅されています

KUMANOMORI(くまのもり)
SF
 鵲盧杞(かささぎ ろき)は中学生の息子を育てるシングルマザーの宇宙人だ。  盧杞は、息子の玄有(けんゆう)を普通の地球人として育てなければいけないと思っている。  ある日、盧杞は後輩の社員・谷牧奨馬から、見覚えのないセクハラを訴えられる。  セクハラの件を不問にするかわりに、「自分と付き合って欲しい」という谷牧だったが、盧杞は元夫以外の地球人に興味がない。  さらに、盧杞は旅立ちの時期が近づいていて・・・    シュール系宇宙人ノベル。

戦国時代の武士、VRゲームで食堂を開く

オイシイオコメ
SF
奇跡の保存状態で頭部だけが発見された戦国時代の武士、虎一郎は最新の技術でデータで復元され、VRゲームの世界に甦った。 しかし甦った虎一郎は何をして良いのか分からず、ゲーム会社の会長から「畑でも耕してみたら」と、おすすめされ畑を耕すことに。 農業、食堂、バトルのVRMMOコメディ! ※この小説はサラッと読めるように名前にルビを多めに振ってあります。

滅亡後の世界で目覚めた魔女、過去へ跳ぶ

kuma3
SF
滅びた世界の未来を変えるため、少女は過去へ跳ぶ。 かつて魔法が存在した世界。しかし、科学技術の発展と共に魔法は衰退し、やがて人類は自らの過ちで滅びを迎えた──。 眠りから目覚めたセレスティア・アークライトは、かつての世界に戻り、未来を変える旅に出る。 彼女を導くのは、お茶目な妖精・クロノ。 魔法を封じた科学至上主義者、そして隠された陰謀。 セレスティアは、この世界の運命を変えられるのか──。

New Life

basi
SF
なろうに掲載したものをカクヨム・アルファポにて掲載しています。改稿バージョンです。  待ちに待ったVRMMO《new life》  自分の行動でステータスの変化するアビリティシステム。追求されるリアリティ。そんなゲームの中の『新しい人生』に惹かれていくユルと仲間たち。  ゲームを進め、ある条件を満たしたために行われたアップデート。しかし、それは一部の人々にゲームを終わらせ、新たな人生を歩ませた。  第二部? むしろ本編? 始まりそうです。  主人公は美少女風美青年?

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

処理中です...