56 / 57
第5章 幼女、ギルド対抗戦地区大会に参戦する
幼女、シエルを紹介する
しおりを挟む
「たっだいま~」
元気よくギルドホームに帰ったものの、あいにく中には誰もいなかった。
みんな訓練なり依頼なりで出かけてるみたいだ。
「お邪魔します」
「入って入って~」
シエルをギルドホームの中に案内して、とりあえず食卓の席に座ってもらう。
2人でジュースでも飲みながら、のんびりみんなの帰りを待つことにした。
「それで、研究はその後どう?」
「そうね……。図書館にあった暗号文字の手記に関しては、もう新たな研究はなされないと思うわ。でも謎はいくらでも残ってる。研究テーマがある限り、学者たちの挑戦は終わらないわ。もちろん私も」
「そうだね。シエルはこの先、どんなテーマを研究するの?」
「うーん、まだ未定かしらね。ひとまず暗号文字に関して、解読が容易になるように対応表を作る仕事を任されたの。ようやくコツが掴めてきて、少しずつ前に進んでるわ」
初めて王都で会った時は、暗号文字という言葉を聞くだけでげっそりしていたシエル。
でも元が優秀なだけあって、だいぶ対応できるようになったみたいだ。
ここは下手に手助けしない方が良さそうだね。
その後もとりとめのない会話をしていると、みんなが一斉にギルドホームへ帰ってきた。
「ただいま~」
「あれ? みんなで出かけてたの?」
「ううん。たまたま玄関でばったり会って。……ってあれ? シエルがいる」
イリナが私の隣に座るシエルを見て、思わず目を丸くする。
リリスもびっくりした表情で、他のみんなは誰だろって感じだ。
「イリナ、リリス、久しぶりね。他のみなさんは初めまして。王都で学者をしているシエルといいます」
「わー! 久しぶりっ!」
リリスが駆け寄ってシエルと握手を交わす。
王都から帰ってきた後、そこであったことはギルドメンバーのみんなに話してある。
だから職業と名前を聴けば、みんなシエルのことが分かったみたいだ。
「ようこそラーオンへ」
「初めまして~」
一通りの挨拶が終わると、みんなで食卓を囲んで座った。
私はシエルがここへ来た理由について、簡単にみんなへ話す。
「前に王都であったことはみんなにも話したでしょ? そのことに関して、追加の調査が必要になったの。それでシエルがわざわざ私のことを迎えに来てくれたんだ~」
「ということは……ついにミリアさんの正体が王国全体に広まるってことですね!?」
マインの質問に、私は深く頷く。
何も問題なく事が進めば、私がリスターニャの生まれ変わりであると証明することは難しくないはずだ。
もちろん転生した大賢者だと知られていた方が良いこともあれば、知られていない方が都合が良い時もある。
でも状況が状況だけに、ここは公式に正体を明かすのが良いと考え着いた。
曖昧なうわさが広がるのが一番良くないもんね。
「とりあえず今夜はシエルにギルドホームに泊まってもらって、明日の朝に出発する予定。度々ギルドに穴を開けちゃってごめんね」
「大丈夫だよ。気にしないで行ってきな」
イリナがそう言って、優しく笑ってくれる。
みんなも頷いてくれるから、私としても少し気が楽になった。
「私がいない間、ギルド対抗戦に向けたみんなの訓練はリリスがお願い」
「うん! 任されたっ!」
元気よく、リリスがない胸を張る。
リリスには人間のスキルについての知識も少しずつ伝えてあるし、そもそもスキルは緑光森精などを基にした技だから、監督役は十分に務まるはずだ。
「というわけなので……。あ、フィナ、夕食も一人分追加できる?」
「任せて」
「フィナの料理は絶品なんだよ」
「まあ、それは楽しみね」
「よーし。じゃあみんな、夜ご飯に向けて準備しようか」
イリナの掛け声で、みんなが一斉に動き出す。
そんな中で、シエルがぼそっと呟いた。
「ギルド対抗戦か……」
「どうかしたの?」
「あ、いえ。ミリアちゃんも参加するのよね?」
「うん! この仲間と一緒にね」
「そう……」
少しシエルの表情に曇りが見える。
「何か心配事?」
「……ううん。やっぱり何でもないわ」
「そっか」
何かしら、シエルの心の中で引っかかってることはありそうだ。
でも彼女が言わないならと、私もそれ以上は追及しないのだった。
元気よくギルドホームに帰ったものの、あいにく中には誰もいなかった。
みんな訓練なり依頼なりで出かけてるみたいだ。
「お邪魔します」
「入って入って~」
シエルをギルドホームの中に案内して、とりあえず食卓の席に座ってもらう。
2人でジュースでも飲みながら、のんびりみんなの帰りを待つことにした。
「それで、研究はその後どう?」
「そうね……。図書館にあった暗号文字の手記に関しては、もう新たな研究はなされないと思うわ。でも謎はいくらでも残ってる。研究テーマがある限り、学者たちの挑戦は終わらないわ。もちろん私も」
「そうだね。シエルはこの先、どんなテーマを研究するの?」
「うーん、まだ未定かしらね。ひとまず暗号文字に関して、解読が容易になるように対応表を作る仕事を任されたの。ようやくコツが掴めてきて、少しずつ前に進んでるわ」
初めて王都で会った時は、暗号文字という言葉を聞くだけでげっそりしていたシエル。
でも元が優秀なだけあって、だいぶ対応できるようになったみたいだ。
ここは下手に手助けしない方が良さそうだね。
その後もとりとめのない会話をしていると、みんなが一斉にギルドホームへ帰ってきた。
「ただいま~」
「あれ? みんなで出かけてたの?」
「ううん。たまたま玄関でばったり会って。……ってあれ? シエルがいる」
イリナが私の隣に座るシエルを見て、思わず目を丸くする。
リリスもびっくりした表情で、他のみんなは誰だろって感じだ。
「イリナ、リリス、久しぶりね。他のみなさんは初めまして。王都で学者をしているシエルといいます」
「わー! 久しぶりっ!」
リリスが駆け寄ってシエルと握手を交わす。
王都から帰ってきた後、そこであったことはギルドメンバーのみんなに話してある。
だから職業と名前を聴けば、みんなシエルのことが分かったみたいだ。
「ようこそラーオンへ」
「初めまして~」
一通りの挨拶が終わると、みんなで食卓を囲んで座った。
私はシエルがここへ来た理由について、簡単にみんなへ話す。
「前に王都であったことはみんなにも話したでしょ? そのことに関して、追加の調査が必要になったの。それでシエルがわざわざ私のことを迎えに来てくれたんだ~」
「ということは……ついにミリアさんの正体が王国全体に広まるってことですね!?」
マインの質問に、私は深く頷く。
何も問題なく事が進めば、私がリスターニャの生まれ変わりであると証明することは難しくないはずだ。
もちろん転生した大賢者だと知られていた方が良いこともあれば、知られていない方が都合が良い時もある。
でも状況が状況だけに、ここは公式に正体を明かすのが良いと考え着いた。
曖昧なうわさが広がるのが一番良くないもんね。
「とりあえず今夜はシエルにギルドホームに泊まってもらって、明日の朝に出発する予定。度々ギルドに穴を開けちゃってごめんね」
「大丈夫だよ。気にしないで行ってきな」
イリナがそう言って、優しく笑ってくれる。
みんなも頷いてくれるから、私としても少し気が楽になった。
「私がいない間、ギルド対抗戦に向けたみんなの訓練はリリスがお願い」
「うん! 任されたっ!」
元気よく、リリスがない胸を張る。
リリスには人間のスキルについての知識も少しずつ伝えてあるし、そもそもスキルは緑光森精などを基にした技だから、監督役は十分に務まるはずだ。
「というわけなので……。あ、フィナ、夕食も一人分追加できる?」
「任せて」
「フィナの料理は絶品なんだよ」
「まあ、それは楽しみね」
「よーし。じゃあみんな、夜ご飯に向けて準備しようか」
イリナの掛け声で、みんなが一斉に動き出す。
そんな中で、シエルがぼそっと呟いた。
「ギルド対抗戦か……」
「どうかしたの?」
「あ、いえ。ミリアちゃんも参加するのよね?」
「うん! この仲間と一緒にね」
「そう……」
少しシエルの表情に曇りが見える。
「何か心配事?」
「……ううん。やっぱり何でもないわ」
「そっか」
何かしら、シエルの心の中で引っかかってることはありそうだ。
でも彼女が言わないならと、私もそれ以上は追及しないのだった。
1
お気に入りに追加
3,619
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.
福留しゅん
恋愛
ヒロインに婚約者の王太子の心を奪われて嫉妬のあまりにいじめという名の悪意を振り撒きまくった公爵令嬢は突然ここが乙女ゲー『どきエデ』の世界だと思い出す。既にヒロインは全攻略対象者を虜にした逆ハーレムルート突入中で大団円まであと少し。婚約破棄まで残り二十四時間、『どきエデ』だったらとっくに詰みの状態じゃないですかやだも~! だったら残り一日で全部の破滅フラグへし折って逃げ切ってやる! あわよくば脳内ピンク色のヒロインと王太子に最大級のざまぁを……!
※Season 1,2:書籍版のみ公開中、Interlude 1:完結済(Season 1読了が前提)
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。