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第5章 幼女、ギルド対抗戦地区大会に参戦する

幼女、シエルを紹介する

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「たっだいま~」

元気よくギルドホームに帰ったものの、あいにく中には誰もいなかった。
みんな訓練なり依頼なりで出かけてるみたいだ。

「お邪魔します」
「入って入って~」

シエルをギルドホームの中に案内して、とりあえず食卓の席に座ってもらう。
2人でジュースでも飲みながら、のんびりみんなの帰りを待つことにした。

「それで、研究はその後どう?」
「そうね……。図書館にあった暗号文字の手記に関しては、もう新たな研究はなされないと思うわ。でも謎はいくらでも残ってる。研究テーマがある限り、学者たちの挑戦は終わらないわ。もちろん私も」
「そうだね。シエルはこの先、どんなテーマを研究するの?」
「うーん、まだ未定かしらね。ひとまず暗号文字に関して、解読が容易になるように対応表を作る仕事を任されたの。ようやくコツが掴めてきて、少しずつ前に進んでるわ」

初めて王都で会った時は、暗号文字という言葉を聞くだけでげっそりしていたシエル。
でも元が優秀なだけあって、だいぶ対応できるようになったみたいだ。
ここは下手に手助けしない方が良さそうだね。

その後もとりとめのない会話をしていると、みんなが一斉にギルドホームへ帰ってきた。

「ただいま~」
「あれ? みんなで出かけてたの?」
「ううん。たまたま玄関でばったり会って。……ってあれ? シエルがいる」

イリナが私の隣に座るシエルを見て、思わず目を丸くする。
リリスもびっくりした表情で、他のみんなは誰だろって感じだ。

「イリナ、リリス、久しぶりね。他のみなさんは初めまして。王都で学者をしているシエルといいます」
「わー! 久しぶりっ!」

リリスが駆け寄ってシエルと握手を交わす。
王都から帰ってきた後、そこであったことはギルドメンバーのみんなに話してある。
だから職業と名前を聴けば、みんなシエルのことが分かったみたいだ。

「ようこそラーオンへ」
「初めまして~」

一通りの挨拶が終わると、みんなで食卓を囲んで座った。
私はシエルがここへ来た理由について、簡単にみんなへ話す。

「前に王都であったことはみんなにも話したでしょ? そのことに関して、追加の調査が必要になったの。それでシエルがわざわざ私のことを迎えに来てくれたんだ~」
「ということは……ついにミリアさんの正体が王国全体に広まるってことですね!?」

マインの質問に、私は深く頷く。
何も問題なく事が進めば、私がリスターニャの生まれ変わりであると証明することは難しくないはずだ。
もちろん転生した大賢者だと知られていた方が良いこともあれば、知られていない方が都合が良い時もある。
でも状況が状況だけに、ここは公式に正体を明かすのが良いと考え着いた。
曖昧なうわさが広がるのが一番良くないもんね。

「とりあえず今夜はシエルにギルドホームに泊まってもらって、明日の朝に出発する予定。度々ギルドに穴を開けちゃってごめんね」
「大丈夫だよ。気にしないで行ってきな」

イリナがそう言って、優しく笑ってくれる。
みんなも頷いてくれるから、私としても少し気が楽になった。

「私がいない間、ギルド対抗戦に向けたみんなの訓練はリリスがお願い」
「うん! 任されたっ!」

元気よく、リリスがない胸を張る。
リリスには人間のスキルについての知識も少しずつ伝えてあるし、そもそもスキルは緑光森精フェリシエラなどを基にした技だから、監督役は十分に務まるはずだ。

「というわけなので……。あ、フィナ、夕食も一人分追加できる?」
「任せて」
「フィナの料理は絶品なんだよ」
「まあ、それは楽しみね」
「よーし。じゃあみんな、夜ご飯に向けて準備しようか」

イリナの掛け声で、みんなが一斉に動き出す。
そんな中で、シエルがぼそっと呟いた。

「ギルド対抗戦か……」
「どうかしたの?」
「あ、いえ。ミリアちゃんも参加するのよね?」
「うん! この仲間と一緒にね」
「そう……」

少しシエルの表情に曇りが見える。

「何か心配事?」
「……ううん。やっぱり何でもないわ」
「そっか」

何かしら、シエルの心の中で引っかかってることはありそうだ。
でも彼女が言わないならと、私もそれ以上は追及しないのだった。
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