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第4章 幼女、孤児院に恩返しする

幼女、かくれんぼをする

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「それでは、資金援助をさせていただくことは決定ということで。よろしいでしょうか?」

マルコが場にいる全員の顔を見回す。

「はい。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」

ニルとアリーヤがぺこりと頭を下げた。
決まりだね。

具体的な額に関してはまだ詰めないといけないけど、ひとまずマルコが資金を提供することは決まった。
それだけではなく、事業を成功させた経験を活かして、マルコには孤児院の運営も手伝ってもらう。
もちろん孤児院というジャンルに関してマルコは素人なので、ニルとアリーヤの意見をしっかり取り入れながらにはなるが、新しい角度からの意見が得られるというのは貴重だ。
これからこの孤児院は、新しくマルコを加えた3人体制で運営していくことになる。心強い。
もちろん、私もリリスも何かあれば助力は惜しまないよ。

「さーてと、私はちょっと外で遊んでこようかな~」

本来であれば、孤児院に恩返しのプレゼントをしつつ、みんなと遊ぶためにここへ来たんだ。
思わぬ大捕物になっちゃったけど、この目的を果たさなきゃ帰れない。

「私も外行く!」

私が席を立つと、リリスも元気よく立ち上がった。
2人並んで、建物の外へと出て行く。
するとそこには、子供たちが集まって出来た団子状態の何かができていた。
何だこれ。

「あ、ミリアた~ん。それにリリスたんも」

団子の中心部分から、エリーチェがスポンと顔を出す。
なるほど。
子供たちがエリーチェに群がって遊んでいたのか。

「ここは天国ぅ~」

そうひとことだけ言って、エリーチェはまた団子の中心へと戻っていく。
あ~うん、良かったね。うん。

「ミリアもリリスちゃんも、一緒に遊ぶ?」

私たちと同じように少し離れて団子を見守っていたレアナが、横に来て声を掛けてくれた。

「うん!」
「うん!」

私たちは元気よく答える。
すると彼女は、団子の子供たちに呼びかけた。

「みんな~! ミリアにリリスちゃんとかくれんぼしな~い!?」
「する~!」
「やる~!」
「私鬼がいい!」
「僕も鬼がいい!」
「僕は隠れたい!」

みんなが口々に集まってきて、とろけた顔をしたエリーチェだけが地面に残された。
もう、放っておこう。

「じゃあ~、鬼やりたい人!」
「はーい!」
「はーいはーい!」

何人かの子供たちが手を挙げる。
人数的にはちょうど良さそうだ。
レアナも手を挙げていることからして、彼女も鬼をやりたいらしい。
私とリリスは隠れる側だ。

「数えるよ~! 1、2、3……」

レアナと鬼の子供たちが、一斉にカウントダウンを始める。
私はリリスに笑いかけながら尋ねた。

「どうする? 一緒に隠れる?」
「一緒に隠れたら、見つかっちゃう可能性が高くなるよ」
「本気だねぇ。じゃあバラバラで!」
「うん!」

もうすでに、他の子供たちは隠れ場所へと駆けだしている。
少し遅れて、私とリリスもそれぞれ反対方向へと駆けだした。
私が向かったのは、建物の裏側にある茂みのなか。
ここ、意外と穴場なんだよね。
何回もみんなでかくれんぼをしたけど、1回も見つかったことがない。

「わー! 見つかったー!」
「見つけたー!」

子供たちがの楽しげな声が聞こえてくる。
楽しいな。
孤児院を離れてすごい年数がたったわけじゃないのに、何だか懐かしいな。

ふと、ガサガサと足音が聞こえてきた。
誰かが近くに来てる。
私は慌てて息をひそめた。
しかし数秒後、しゃがみこむ私の背後から声がかかる。

「見~つけた」

振り返ってみると、そこにいたのはレアナだった。

「見つかっちゃった」

私はちょっぴり悔しい気持ちと、不思議な安心感を抱えて笑う。
するとレアナは、茂みのなかに入ってきて私の隣にしゃがんだ。

「ねえねえ、ミリア」
「何?」
「実はミリアって、すごいんでしょ?」
「え?」
「私、お母さんたちとミリアたちが話してるの聞いちゃったんだ。ミリアは大賢者様の生まれ変わりなんだって」
「あ……」

どうしようと戸惑う私に、レアナは優しく微笑む。

「ありがとう、ミリア。ミリアのおかげでこの孤児院は助かったんだよね。難しいことは分からないけど、ありがとう」
「……。えへへ……うん。どういたしまして……かな?」

子供は時に、大人よりも感覚が敏感だという。
ニルやアリーヤは必死に隠し、心配させないようにしていたかもしれないけど、子供たちは子供たちなりに孤児院の危機を感じ取っていたのだろう。

「あーあ。ミリアは私のかわいい妹だと思ってたのにな。こんなすごかったなんて」
「妹だよ」

だってレアナは、私の大切なお姉ちゃんだから。

「前世が大賢者だろうと何だろうと、私はここで育ててもらったここの家族だよ。あなたはレアナ・ラルガン。私のお姉ちゃん。そしては私は……」

私はレアナに抱きついて、頬を擦り付けながら言った。

「ミリア・ラルガンだから」






※更新が遅くなってしまいすみません!
 第4章はこれにて完結です。
 物語は第5章のギルド対抗戦編へと続いていきます!
 できるだけ定期的に更新しますので、お付き合いよろしくお願いします!
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