前世大賢者のつよかわ幼女、最強ちびっこ冒険者になる!

メルメア

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第4章 幼女、孤児院に恩返しする

幼女、プレゼントを買う

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「なるほど。原因は竜族だったのね」

 冒険者協会に帰った私たちの報告を、ララは興味深げに聞いて頷いた。

「相手が相手だけに、ミリアたちに任せて正解だったわ」

「そうだね。とりあえずこれで、地震の心配はなくなったよ」

「ありがとう。報酬を渡すわね」

 調査の報酬、原因特定の報酬、さらに問題解決の報酬と、たんまりお金をもらう。
 正直グレアからもらったお金で必要な分はあるのだが、もらえるものはしっかりもらっとくということで。

「復帰したところで申し訳ないんだけど」

「何かしら?」

「私とリリス、少しの間だけ出かけたいんだ。私、孤児院に何の挨拶もせず出てきちゃったから」

「なるほど……。どの辺りの孤児院だったかしら?」

「リスターニャのダンジョンから馬車で1時間くらいのところにある、ラルガンの孤児院だよ」

「分かったわ。長くは休まないでしょ?」

「うん。少しだけ」

「2人なら道中の心配もないし……。うん、楽しんできて」

「ありがとー」

 ララからオッケーが出たということで、心置きなく孤児院へ向かうことができる。
 でもその前に、プレゼントを選ばないといけない。
 私はリリスと一緒に冒険者協会を出て、街をそれとなく歩き始めた。

「何か、思ったよりすんなりと進んじゃったね」

「グレアからもらったこのお金が大きいよ。前世でアインガと仲良くなっといてよかった」

天地竜会議バルカレイソスだっけ。行くの?」

「今のところは行くつもり。リリスも行くでしょ?」

「行ってみよっかなー。竜族と交流なんてしたことないし」

「したことないならやってみなきゃね」

「そうだね。第二の人生だもん」

 転生者特有の会話を交わしながら歩いていると、たくさんの子供向け絵本が並んでいる店が目に留まった。
 せっかくなので入ってみると、優しそうな女性の店主が迎えてくれる。

「いらっしゃい。あら?ひょっとして冒険者協会のマスコット2人かしら?」

「あー、うん。多分」

 マスコットになった覚えはないけど、いつの間にかそう呼ばれているらしい。

「ねえ見て、ミリア!この本の絵、すごいかわいい!あ!これも!」

 リリスは目についた本をめくってみては、楽し気に絵を眺めている。
 確かエルフ族には森精歌アリュターヤという子供向けの歌があったが、絵本という文化はなかった。
 彼女にとっては初めて触れるものなのかもしれない。

「嬉しいわ。この店の本は、全部私が描いているの」

「え?全部を1人で?」

「そうよ。絵本を描くのってとっても楽しいし、それを見て喜んでもらえるとすごく嬉しいの」

「すごいなー。実は、子供たちに贈るプレゼントを探してて」

「あら、そうだったの。年代はどれくらい?」

「私よりちっちゃい子から、上は14歳くらいまで」

「予算は?」

「これくらい」

 私がお金を取り出してみせると、店主は少し驚いてから笑った。

「これだけあれば十分すぎるわよ。そうね……2人くらいの年代ならそこの棚のがおすすめ。もう少し小さい子にはこっちの棚かしら。上の子には、絵本より文字の本がいいかもね。それもそろってるわよ」

「ありがとう。選んでみる」

「ええ。ごゆっくりどうぞ」

 リリスはさっさと3冊の本を抱えている。
 絵が気に入ったそうで、これは自分用に買うらしい。

 それは別にして、2人でどんどん本を選んでいく。
 結構かさばるから、運ぶときは影にしまわないとだな。
 これまた店主の自作だという子供向け小説も買い、しめて35冊。
 孤児院にいる子供たちは30人だから、ちょうどいい量かな。
 本が好きな子が多く、図書室は人気の場所だったから、きっと喜んでもらえるはずだ。

「えっと……合計で20550Gよ。これだけ買ってもらえると、店としてもすごく助かるわ」

「こちらこそ素敵なプレゼントが買えたよ。ありがとう」

「私、この絵が気に入ったからミリアと一緒にまた来るね」

「ええ、楽しみにしてるわ」

 支払いを済ませ、本をしまって店を出る。
 今日は一度ギルドホームへ帰り、明日出発する予定だ。
 久しぶりにみんなと会うのが楽しみで、胸が高鳴る。
 お母さん2人に謝らないといけないのは、少し心が重いけれど。

「明日が楽しみだねー」

 自分用の絵本を大切そうに抱えながら、リリスが笑う。
 孤児院へ帰って、その後は天地竜会議バルカレイソス
 その後は……って、今はそんなこと考えなくていっか。
 何よりも今を楽しまなくっちゃ。

「ミリア、あれ食べようよ」

 リリスが指差したのは、七色に光る不思議なフルーツ。
 果物屋の店頭に並べられている。
 うーん、いかにも怪しそうなんだけど……

「おじさん、これ2つくーださい」

「はいよ!」

 リリスはさっさと2つ買って、私のところに戻ってきた。
 そしてためらいなくかじりつく。

「あ、あま~い!」

「そこまで言うなら……えっ!にがいっ!」

「いやいや、甘かっ……あれ!?酸っぱい!」

「何これ!かじる度に味が変わるんだけど!」

「こんなの初めて!」

 甘かったり、苦かったり、酸っぱかったり、辛かったり。
 ころころ味が変わる果物を大笑いして楽しみながら、私たちはギルドホームへと帰った。
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